脚本を担当した鬼ヶ島・おおかわら(左)と特殊すぎる役どころで出演した今野浩喜(右)

1990年から93年に『週刊少年ジャンプ』に連載された伝説のギャグ漫画『珍遊記』がまさかの実写映画化!

日本映画界の常識を覆(くつがえ)す、この“超問題作”の脚本を担当した、お笑いトリオ・鬼ヶ島おおかわらとトンデモな経緯で出演することになった役者・今野浩喜がその裏側を語り尽くした!

―予告動画が公開されるやいなや、「倉科カナが『ち○こ』と連呼してるゾ!」と、早くもSNS回りがざわついたほどですが、一体、どんな脚本なんですか(笑)。

おおかわら(以下、お) やっぱり『珍遊記』なんで、ひと言めは絶対「ち○こ」じゃなきゃダメだろうと思って。実は脚本の段階ではもっと回数が多くて、さらにより卑猥(ひわい)なセリフもあったんですけど、どんどん削られましたね(笑)。

今野(以下、今) 卑猥なセリフって?

お 「西洋人のようなち○こ」とか(笑)。あと、“勃起を連想させる”という理由でボツになった表現もあったり。

今 そこは難しいところだよね。『珍遊記』って、そことのせめぎ合いだったりもするから(笑)。「ち○こ」がなかったら、「じゃあ西遊記でいいじゃん」ってなっちゃうし。

―おふたりは、原作はリアルタイムで読まれてましたか?

お はい。当時は中学生ぐらいで、スゴい漫画だなぁと思ってたんですけど、あらためて大人になってから読んだほうが常軌を逸した作品だということがよくわかりますよね(笑)。

今 当時は確か『モンモンモン』も連載されてて、ジャンプは猿がチ○チン出してる漫画が多いなぁって(笑)。

お 途中から話が全然進まなくて。酒場のシーンで数年止まってましたから(笑)。

今 最後のほうは、同じコマの連発で“写真でひと言”みたいになってて。漫画家の先生が描くの面倒くさくなっちゃったのかなってハラハラする感じもあった(笑)。

―そんな原作だけに一体、どんな映画になるのかと気になったファンも多いと思います。

お 原作の雰囲気を大事にしつつも、あれを忠実に再現したら映画にならないんで(笑)、そこは新たなエピソードやキャラクターも入れて、ある意味、開き直って脚本を書かせていただきました。

「千原せいじさんってどんな人なんですか?」

―出演者も倉科カナさん、溝端淳平さんをはじめ超豪華ですが、なんといっても主人公・山田太郎を演じるのは松山ケンイチさん!

お ツルっぱげ頭にパンツ一丁ですからね。実は構想段階ではうち(鬼ヶ島)のアイアム野田って話もあったんですが、松山さんに決まって一気に映画のグレードが上がってしまいました(笑)。

今 本当に松山さん…なんで出たんだろう(笑)。でも、松山さんが真剣に『珍遊記』の脚本を読んでるのを想像するだけで面白いよね。

お でも現場での松山さんのパワー、存在感は本当にスゴかった。そのカブキっぷりというか、通行人に「オイッ!」とかって悪態つくシーンなんて完全に山田太郎なんですよ。

今 誰かが「山田太郎は千原せいじさんみたいな感じ」って言ったみたいで、松山さんが僕に「千原せいじさんってどんな人なんですか?」って聞いてきましたからね(笑)。

お だったら千原さんでよかったんじゃないかって気がしなくもないですね(笑)。

―ところで、おふたりはどんな経緯でこの映画に参加を?

お 鬼ヶ島のライブを山口雄大(ゆうだい)監督が見にきてくれて「このコント書いてるの誰?」ってなったんです。それで、山口監督ともつ焼き屋に行って「脚本やる?」って。

―そんな雑な感じですか(笑)。今野さんは?

今 僕はゆうばり映画祭の時に泊まった宿のお風呂で山口監督と一緒になって。その時に“今野ってすごい胸毛だな!”と印象に残ってオファーいただいたみたいで(笑)。

―映画のキャストってそういう感じで決まるんですか(笑)。でも今野さんは作中、ずっと上半身ハダカでしたね。

今 衣装合わせとかあったんですけど、僕はただ脱いでるだけなんですよ。衣装というか体毛合わせ(笑)。お むしろ体毛確認ですよね(笑)。

じじい、ばばあ役の再現度が高すぎる!

―監督から脚本について指示はあったんですか?

お 「山田太郎は黒澤明監督の『七人の侍』の三船敏郎さんのイメージだから」って言われて、エーッと思いながら『七人の侍』を研究したんですが…全然参考になりませんでした(笑)。

今 現場でも監督には最後まで何も言われなかったから、いいのか悪いのかわからないままやってました(笑)。僕、撮影の日に面白いからいいやと思って鼻の下のヒゲ、残していったんですよ。さすがに何か言われるかなと思ったんだけど、まったく何も言われなかった(笑)。

お あれって監督の指示じゃなかったんですか?(笑)

今 いや全然。あれは西武ライオンズの浅村をイメージしたやつだから(笑)。

お 初めて知った。本当にテキトーな映画だなぁ(笑)。

―予告動画を見たファンの間では松山さんのキレッキレの山田太郎だけでなく、漫☆画太郎作品に欠かせないじじいとばばあも「かなりハマってる!」と評判のようです。

お 実は、ばばあ役の笹野高史さんには最初じじい役でオファーしたんです。そしたら「ばばあ役なら出演したい」って言われて(笑)。

今 あのじじい、ばばあ役は本当に再現度高いよね。

お 田山涼成(りょうせい)さんと笹野高史さん、言ったらじじい同士なんですが(笑)、あのおふたりのかけ合いも見どころのひとつだと思います。

今 笹野さん、「ち○こ」っていう時、ねっとり言うんだよね(笑)。倉科さんが堂々と言う「ち○こ」もいいんだけど、男の笹野さんが恥じらいを持って言う「ち○こ」も、また違ったよさがあるよね。

お ということで、最後は「ち○こ」ばっかになってしまいましたけど、映画『珍遊記』、ぜひ見てください!https://youtu.be/zJUwYL0Ygeo

脚本・おおかわら(鬼ヶ島)1977年生まれ。お笑いトリオ・鬼ヶ島のリーダー。本作では脚本を手がける一方、出演もしている。同トリオのアイアム野田も、たけし役で出演

出演・今野浩喜1978年生まれ。2009年から俳優として活動を始め、『下町ロケット』など20本超の作品に出演。現在はNHK大河ドラマ『真田丸』にも出演中

(取材・文/直井裕太 撮影/下城英悟)