大阪のUSJでは昨年も入場者数の記録を順調に更新したが…

「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)からは継続検討中との話が内閣府に来ている。政府として、できる限り支援する考えに変わりはない」

衆院予算委で、USJの運営会社が沖縄進出計画の撤回を検討していることについて、菅義偉(すが・よしひで)官房長官がこう答弁したのは3月1日のこと。

安倍自民にとって、テーマパーク誘致は実質、基地問題とワンセット。沖縄県民が辺野古に基地を受け入れる見返りに、巨額の経済効果が見込める巨大テーマパークを誘致してやろうというのだ。

だが、いくら菅官房長官が政府支援をちらつかせて慰留しても、USJが沖縄に来ることはなさそうだ。経済誌記者がささやく。

「昨年秋、USJの運営会社が米メディア大手の『コムキャスト』に買収され、経営陣が代わったんです。その新しい経営陣が“採算が取れない”と、沖縄進出に難色を示しているんです」

やっぱり、USJ沖縄は夢物語に終わりそう。官邸はさぞかし悔しがっているに違いない。USJ沖縄は頓挫(とんざ)すると昨年夏から指摘していた沖縄国際大学大学院の前泊博盛(まえどまり・ひろもり)教授が言う。

「そもそも最初から経営合理性の裏づけが全くない構想でした。USJのような巨大テーマパークは、沖縄を訪れる観光客が年間1千万から2千万人いないと経営的に成り立たない。ところが現在の年間観光客は700万人に過ぎない。どう考えても計算が合いません。観光客を増やすには1本しかない那覇空港の滑走路を2本に増やすしかないが、それでも年間1300万人が限界とされています」

また、前泊教授は県民の強い反発も指摘する。

『ユニバーサル・スタジオ・オキナワ』の頭文字を略すとUSO[ウソ]

「菅官房長官は、今年1月の宜野湾(ぎのわん)市長選の直前、ディズニーリゾートの誘致についても『全力で取り組みたい』などと言っていましたが、県民は基地問題のバーターでくるようなテーマパークはいらないんです。

しかも許せないことに、官邸はUSJ沖縄を本島北部、本部町(もとぶちょう)の海洋博公園に誘致するつもりでした。同公園は県と国でつくった沖縄美(ちゅ)ら島財団が管理運営。人気の『美ら海水族館』開設などの努力が実り、年間400万人もが訪れる観光名所になっています。

ところが誘致計画は運営にUSJが入る代わりに沖縄美ら島財団が外される内容。せっかく観光名所になった所を、国の独断でアメリカ企業に無料で明け渡すなんて露骨な沖縄外し、いじめです。地元の反発は必至でした。『ユニバーサル・スタジオ・オキナワ』の頭文字をとって略すと、『USO[ウソ]』となる。USJ沖縄構想は最初から嘘物語になる運命だったんです」

では一体、どんなテーマパークだったら沖縄県民は受け入れるのだろうか。

「地元の人からすれば『アメリカの基地で困っているのに、なんでまたアメリカのテーマパークなんだ』という話です。

もし本気でテーマパークを造りたいなら、外国のコンテンツではなく、例えばジブリアニメのような日本のコンテンツを楽しめる場所にすればいいと思います。県内各地の基地をなくせば、50haを超える基地跡地がいくつも生まれます。海に近い場所があったり、山の自然に囲まれた場所もある。

そこにトトロやナウシカなどをテーマにした施設を造れば、沖縄本島全体をテーマパークにだってできる。新基地建設のバーターでもなく、アメリカのコンテンツでもない。これなら沖縄県民も歓迎できますよ」(前泊教授)

確かにジブリパークは見てみたい。官邸の皆さん、実現できたら支持率うなぎ上り間違いなしですよ!

(取材/ボールルーム)