今月2日、アクションスターのジャッキー・チェンについて、米メディアが「オーストラリアのクイーンズランドで自動車事故に遭い、残念ながら死亡した」と報じ、世界中で大きな騒ぎになった。
ジャッキーにはほぼ毎年、この手の「死亡報道」が流れるが、いずれの情報も全くのガセネタ。もちろん今回もジャッキーはピンピンしており、関係者がその火消しに追われている。
それにしても、彼の死亡報道はなぜ流れ続けるのか?
私生活においても、劇中においても、数多くの死線をくぐり抜けてきた「世界一死にかけている男」の強烈な瀕死エピソードを振り返りつつ、相次ぐ死亡報道の謎に迫っていこう!
1:誕生前から瀕死 ジャッキー・チェンは1954年4月7日に生まれた。下世話な話だが、両親がヤッて、着床したのは53年の4月頃だったという。つまり、10ヵ月たっても11ヵ月経っても胎内から出てこなかったわけ。妊娠丸1年が過ぎる頃、ついにおふくろさんが激しい腹痛を訴え、このままでは母子共に危険。帝王切開の手術を経てこの世に生まれ出たのだ。体重は5.5kgあった。
2:香港マフィアに拉致される ブルース・リーの死後、『レッドドラゴン 新・怒りの鉄拳』(ロー・ウェイ監督)の主演に大抜擢されたジャッキー。しかしシリアス路線を狙った結果、同作は大コケ。そんな折、他会社へ出向契約して78年に公開されたユエン・ウーピン監督の『スネーキーモンキー 蛇拳』と『ドランクモンキー 酔拳』が大ヒット。これでジャッキーの持ち味はコミカルなアクションだという印象が決定づけられる。
ジャッキーはローのプロダクションを抜けて、かの有名なゴールデン・ハーベスト(以下、GH社)へと移った。しかし収まらないのはローだ。法外な解約金をふっかけ翻意を迫るが、ジャッキーは戻らない。ついに香港マフィアに頼んでジャッキーを拉致した。最終的にはGH社にお金を出してもらったり、元祖・香港映画スターのジミー・ウォングが出てきたりして無事に収束。
3:時計台から落下して頚椎損傷 83年の『プロダクションA』で、高さ25m以上の時計台の針にぶら下がり、耐え切れなくなって下に落ちるという、危険すぎるスタントに挑戦。途中、落下速度を抑えるものは布地の日よけが2枚あるだけ!
「1回目のテイクで、首から着地してしまってがくんときたが、死にはしなかった。しばらく氷で冷やしてから、みんなに、もう1度だ、と言った。(中略)2回目、同じように落ちてきて、地面にぶつかった瞬間、眼の前が真っ白になった」という壮絶シーンはあまりにも有名だ。
ジャッキーこそ生け贄にふさわしい?
4:電飾ポールから滑落し半身不随寸前 『ポリス・ストーリー 香港国際警察』でも命知らずのスタントがある。ショッピングモール内での格闘シーンで、1階に逃げた相手に追いつくために、階上からジャンプして、ホールの真ん中にあるクリスマスの電飾がいっぱい絡みついたポールにつかまり、そのまま滑り降りて、ガラスでできた障害物を壊してから大理石の床に落下する。
要は、電飾をちぎりながら高さ30mの滑り棒をやってガラスを突き破ったのだ。「両足でポールを挟み、滑り落ちていった。電球が光っては破裂し、ガラスが火花といっしょに飛び散った。まず手が熱いと感じ、つづいて痛みがやってきたが、すぐに麻痺した」と後に振り返っている。
5:頭蓋骨を骨折し、耳から血しぶきが! 『サンダーアーム 龍兄虎弟』を旧ユーゴで撮影中、なんてことのないスタントに失敗したジャッキーは、木から落ちて頭を石に強打。「そのあと、周りの連中が大声をあげた。僕の耳から噴水のように血が吹き出ているのに気付いたからだ。だが、頭には外傷が見当たらない。連中は肝を潰した。これで死ぬんじゃないかと誰もが思ったらしい」。
嘘のようなホントの話で、たまたま脳外科の世界的権威であるスイス人医師が、講演でユーゴを訪れていたので急遽執刀を依頼し、九死に一生を得た。が、「今でも、僕の頭には、穴がある。柔らかくて、骨がない。耳にも、後遺症が残っている」そうだ。
…このように簡単には死にそうにないジャッキーだが、それに対し、なぜ死亡報道が多いのだろうか? 取材の結果、とんでもない仮説が浮かび上がってきた。以下の日付を見てほしい。これらは2010年代に、ジャッキー死亡説が世界中に流れた日付だ。
(1)2011・3・29(心臓発作で死亡) (2)2013・6・21(高層ビルから転落死) (3)2015・5・15(心臓病で急逝) (4)2016・3・2(自動車事故死)
何かに気づかないだろうか? そう、ジャッキー死亡説が流布される前には、必ずといっていいほど、大きな地震が起きているのだ!
(1)はもちろん東日本大震災。(2)はおそらく、この年の4月にイランで2度発生した地震災害と中国四川省の地震に対するレスポンスだろう。(3)は同年4月下旬に発生し、9千人近い死者を出したネパール大地震。そして、(4)の直前にはインドネシアでM7.8の地震が起きている。
ではなぜ、地震災害が起きるとジャッキーが死なねばならないのか…。
16世紀にスペインの宣教師が記録したアステカ族の習慣を思い出してみよう。そこでは、太陽が沈んだ後、再び地上に現れるためには若い戦士の血が必要とされていた。生け贄(にえ)というやつだ。
前述の「瀕死伝説」を踏まえれば、ジャッキーこそ現代の地球最後の戦士であり、生け贄なのだ。神の怒りに対する生け贄の必要を痛感する人類の無意識が、災害に対するレスポンスとしての「ジャッキー死亡説」を生むのではないだろうか?
●週刊プレイボーイ13号(3月14発売号)「ジャッキー・チェンの瀕死伝説ベスト7」より(本誌では、ここで挙げたもの以外にも伝説を紹介!)