45年間戦い続けた男・本郷猛役を再び超熱演した藤岡弘、さん

45年ぶりでも違和感ゼロ! 公開中の映画『仮面ライダー1号』で、初代ライダーとして再び変身、悪の組織に戦いを挑んだ名優を直撃した!

―45年という長い年月を経て、再び仮面ライダー1号こと本郷猛(ほんごう たけし)を演じた藤岡弘、さん。さらに今回は主演も務められましたが、ご感想は?

藤岡 さすがに45年前と同じ人物を演じるのはスゴいプレッシャーでした。特に今回は本郷猛が過ごしてきた45年という歴史を背負って演じるわけですから、当時見ていた方が今の自分の演じている姿を見てどう感じるのかということを考えると…もう不安でしたね。

―藤岡さんでも不安に思うことがあるなんて!

藤岡 半年ほど前、最初に私に話が来た時、「単独主演でお願いしたい」と言われて驚きました。実際、このオファーは私の俳優人生にとって大きな出来事で、本当は3年くらいは製作時間が欲しかったですね。失敗したら、45年間も積み重ねてきた仮面ライダーの歴史をブチ壊してしまうわけですから。責任重大ですよ。

原作者の石ノ森章太郎先生をはじめ、仮面ライダーをこよなく愛してきた恩師の方々の顔が浮かんできました。だからこそ、今回の映画では「本郷猛=藤岡弘、」として、演じるだけでは難しいなと。

―ど、どういうことですか!?

藤岡 ここまで役が歴史を持ってしまうと、俳優としては演じるということではなく自分と重ね合わせるしかないんですよ。それには自分が俳優以外で45年の間に培ってきた経験や実体験を生かすしかない。

これまで私は世界中で難民支援のボランティアを行なう中で修羅場をくぐってきた。国家や企業、そして個人のエゴイズムによって、か弱き婦女子たちが犠牲になるのを目の当たりにしてきました。その時に慟哭(どうこく)した、どうしようもない悔しさや悲しさ、命の尊さをメッセージにして『仮面ライダー1号』を通じて伝える。これが私の想いであり、願いでした。

だからこそ、今回は主演する他に企画段階から参加させていただいて、自分の思いを込めるため脚本家やプロデューサーとシナリオを練りながらディスカッションを重ねました。

【上】45年前よりもボリューム感のあるシルエットになった仮面ライダー1号【左】ショッカーとの激しい戦闘シーンも見どころだ

本郷猛が戦う理由とは?

サイクロン号もネオサイクロン号として復活!!

スゴい思い入れですね! では今回、映画に登場する仮面ライダー1号やネオサイクロン号の印象はいかがでしたか?

藤岡 正直、(仮面ライダー1号の)スーツを初めて見た時は、体形的にも「これは私じゃないか!」と驚愕(きょうがく)しましたよ。さらにネオサイクロン号も新しい1号にピッタリの迫力でね。

ただ、現場に行って、すぐにネオサイクロン号に乗ってくれと言われた時には、5分ほど練習させてもらいました。それこそ45年前(の撮影中)に、事故を起こして生死の境をさまよった恐怖があるので、今でも二輪に対しては慎重なんです(笑)。

でも、こういったデザインなどに携わっているスタッフたちの思いがそれぞれ積み重なりながら膨らんで、今回の映画につながったと感じています。製作に携わった関係者の皆さまには本当に感謝しかありません。

―藤岡さんやスタッフの作品に対する思いが本当にアツすぎます!

藤岡 スタッフたちも昔は仮面ライダーを見ていた子供だった方も多く、みんな仮面ライダーが好きだからこそいい映画ができたと思っています。子供の頃に得た感動や影響を、再び子供たちに与えたいという心ある大人が集まっているわけですから。

ネオサイクロン号に乗るシーンを撮っていたキャメラマンは、撮影にカットがかかったら立ち上がって、「感動した」って涙ぐんじゃってね(笑)。「ああ、仮面ライダーで育ったんだな」って感じて嬉しかったですね。

―あらためてお聞きしますが、藤岡さんにとって仮面ライダーとはどんな存在ですか?

藤岡 武士道には「義を見てせざるは勇なきなり」という言葉がありますよね。この「道から外れたものを、勇気を振り絞って諫(いさ)める」という武士道の精神、正義を全うしようとする自己犠牲の精神こそ仮面ライダーのヒーローとしての神髄なのではと思っています。

ヒーローというものは世界中にいて、子供の憧れであり、夢なんです。どの子供もヒーロー、つまり正義を求めているんです。だから、仮面ライダーも日本の正義として子供たちの心をつかんできたんでしょう。

【左】原点、そして最新ライダーの最強チームが爆誕!!【右】シリーズのうりであるバイクアクションも大充実!

―当時も今も子供たちが仮面ライダーに夢中なのは、その神髄があるからなんですね!

藤岡 はい。私は仮面ライダーには今後もずっと続いてもらいたいですし、受け継いでいく価値のある子供たちへの最高の贈り物だと考えています。

子供たちも時に人生の矛盾や非情さに出会い、死にたいと考えてしまうこともあるでしょう。そんな時に仮面ライダーというヒーローが心の中にいて、「僕には正義の仮面ライダーがついている」と考え、何事にも諦めることなく生きて、生きて生き抜いてくれたらと願っているんです。

今後、日本だけでなく、世界中の子供たちが仮面ライダーを見て感動し、命の尊さというメッセージを受け取ってくれればと思っています。

―激アツのメッセージ、ありがとうございました!

仮面ライダー45周年記念超大作『仮面ライダー1号』https://youtu.be/lMHglTz9dpg

(C)2016「仮面ライダー1号」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

(取材・文/牛嶋 健【A4studio】 撮影/下城英悟 ヘア&メイク/杉本妙子 スタイリング/伊藤まな美【CODE】)