『R‐1ぐらんぷり2016』を制した芸人・ハリウッドザコシショウ。R‐1では『誇張しすぎたモノマネ』シリーズが印象的だったが、彼のテッパンといえるのが『アシュラマン漫談』だ。
そこで今回、『キン肉マン』の大ファンというハリウッドザコシショウと、4日に単行本最新刊『キン肉マン』54巻が発売となったゆでたまご・嶋田隆司先生との初対談が実現!
早速ですが、嶋田先生、『アシュラマン漫談』を初めて観た時の感想は?
嶋田 初めて観たのは『あらびき団』ですよ。正直、びっくりした! その後、キン肉マンのイベントで直接お会いしたんですよね。
ザコシ あの時は、怒られるんじゃないかと思ってビクビクしてました。僕、初対面の時、失礼なことはありませんでしたか?
嶋田 食事中にテンガロンハットが肩に当たって邪魔だった(笑)。
ザコシ すんませんでした!!
嶋田 いえいえ(笑)。それに、これだけアシュラマンにスポット当ててくれたし、僕も楽しんで見てますから。キン肉マンはイジられてなんぼの作品なんで感謝しています。何より、ザコシさんのネタを見てキン肉マンの読者も喜んでいる、これが一番ですよ。ところで、いつからアシュラマンをやっているんですか?
ザコシ 8年ぐらい前からですね。ケンコバ(ケンドーコバヤシ)と“アシュラマンとサンシャインの漫談”もやってました。『はぐれ悪魔超人コンビ漫談』です。
嶋田 え! サンシャインも作ったの?
ザコシ ケンコバがダンボールで作ってました。僕はサンシャインの顔の部分に穴を開けて、顔が見えるようにしたほうがいいと思ったんですけど。ケンコバは「サンシャインは真四角やないとアカンやろ!」って、ダンボールかぶってましたね(笑)。
嶋田 それだと、声がこもって漫談できないでしょ。
ザコシ それよりも、ケンコバ的にはサンシャインの造型にこだわりたかったみたいです。
嶋田 すごいこだわりだなぁ(笑)。ザコシさんの一番好きな超人となると、やはり?
実はザコシが気になるのは、あの超人!
ザコシ カーカカー! もちろん、魔界のプリンス、アシュラマンだー! …でも、ここだけの話、ネプチューンマンも好きですね。あのマスクがカッコイイんですよ。あのアイデアはどう生まれるのですか?
嶋田 ロビンマスクやウォーズマンは顔全体がマスクですけど、ネプチューンマンは口の部分をオープンにすることで差別化しました。そして、オープンになった口の部分で感情の表現ができる。その辺りが、あのマスクを作ったきっかけですね。
ザコシ でも、ロビンは顔全体がマスクなのに“汗”かいてましたよね。
嶋田 あれは、あの方法でしか感情を表現できなかったんですよ(笑)。
ザコシ あと、我々キン肉マンファンにとって忘れられないのが、『7人の悪魔超人編』の初回に登場した、プリプリマン!
嶋田 なぜか、プリプリマンを勢いでど真ん中に描いちゃったんですよ(笑)。でも、「このお尻は悪魔やないやろ?」となって、急遽なかったことにしました。
ザコシ 熱いバトルもありつつも、ツッコミどころも楽しめる。これこそ“ゆでたまごらしさ”だと思います。だって、いまだに芸人仲間でキン肉マンネタで盛り上がれますから!
嶋田 芸人さんって、本当にキン肉マンファンが多いんですけど、あれなんでかな?
ザコシ やっぱり、ツッコミどころが多いことだと思います。芸人仲間で飲んでて「最強超人は誰か? ベストバウトは?」って話もしつつ、最終的には「プリプリマンどこいったの?」となるんですよ。僕ら、芸人がネタにできることが作品に詰まっているのも魅力なんですよね。これって意識してやっていることなんですか?
嶋田 大人が“酒のつまみ”として語れること。これは意識しています。整合性ガチガチじゃツッコミどころがないし、作品自体にノリや勢いが出ません。僕はお笑いのことはわからないけど、やっぱりマンガと一緒で“ノリと勢い”って重要なんですか?
ザコシ とても重要だと思います。“ノリと勢い”の部分だと僕もライブで何回かやってますけど、レオパルドンはウケますよね。【レオパルドン行きます!!】→【ギャア――ッ!】って展開は、ライブでもてっぱんなんですよ。あれ、なんで噛ませ犬になったんですか?
嶋田 初めから噛ませ犬って設定ではありませんでした。ただ、王位争奪編は団体戦でしょ。丹念に描いたら10年はかかってしまう。だから、早めにやられてもらいました(笑)。でも、スピンオフでビッグボディチームの結成秘話を描き直したいって思いはありますね。
ゆでたまご両先生の打合わせは秘密!?
ザコシ それ、読みたいなぁ~。レオパルドンが加入した理由を知りたいですもん。その他にも描き直したいエピソードはあるんですか?
嶋田 相棒(漫画担当・中井義則先生)とずっと温めてるのが、『超人オリンピック ザ・ビッグファイト』の決勝、ウォーズマン×キン肉マン戦ですね。これはウォーズマンの目線での試合を描きたいけど、読み切り1回じゃ終わらないんじゃないかな。
ザコシ 熱いバトルも期待してますが、実は芸人仲間にはコミックス初期のギャグ要素が強めなのが好きな連中も多いんですよ。僕が好きだったのは『牛丼愛好会』ですね。
嶋田 キン肉マンたちが牛丼を一気食いして、なぜかタッグマッチが始まるやつでしょ?
ザコシ それです。牛丼屋のカウンターで戦いが始まって、店員さんが困惑してるんですよ。“なんだこれ?”って吹きましたよ。
嶋田 でも最近はシリアスな展開が続いて、なかなかギャグを入れる隙間がなくなってるんですよ。僕も相棒も「ギャグマンガ家やぞ!」って意識はいまだに強いんですけどね(笑)。
ザコシ これはいちファンとしてお聞きしたいのですが、中井先生とはどんな打ち合わせをしているのですか?
嶋田 僕が原作を仕上げて、編集さんのチェックが終わった後に相棒と打ち合わせをします。ここでは僕と相棒のふたりっきりです。ただ、作品の打ち合わせは10分から15分で終了しますね。後は「あの全日の試合、覚えとる?」とか「あいつがさー」って昔話で盛り上がってます。
ザコシ 作品に登場する新技もそこで開発するんですか?
嶋田 しますね。いまだに、おっさんふたりが技をかけあってます(笑)。
ザコシ もう、芸人のネタ合わせみたいになってますね。
嶋田 おっさんふたりが金曜の深夜に「痛ーッ! アホ、本気でやるな!!」って、技をかけあってますからね。55歳にもなって「何やってんだ」と思いますよ(笑)。だから、ふたりっきりで打ち合わせするんです。人には見せられません。
この芸風でいってもいいんですか?
ザコシ その打ち合わせのスタイルって、僕ら芸人がネタを作っていくのと同じですよ。ネタを書いて演じていく部分とか。どのようにして今のような関係を築いたのですか?
嶋田 長年やってきて自然にできたスタイルですから、どう築いたとかありませんよ。ただ、ふたりが出会った小学生の時から、ノリは変わってません。誰だって友達と昔話で盛り上がるでしょ。
ザコシ 確かに、僕ら芸人も同期で集まったら昔話で盛り上がりつつ、仕事の相談とかもしますね。
嶋田 そんな関係を毎週やってる感じですよ。そして、ゆでたまごが作った作品を“酒のつまみ”として、読者やザコシさんが盛り上がる。これ、原作者冥利(みょうり)に尽きますよね。
ザコシ ゆでたまごのおふたりはコンビ結成当時からノリが変わってないとおっしゃってましたが、僕もこのノリの芸風でいってもいいんですかね?
嶋田 僕らと一緒でね、こだわりは貫き通すこと! そこを突き抜けてほしいですね。あと、今度はベンキマンをイジってほしいな、アシュラマンみたいに衣装作ってくださいよ。ギャグ要素がたっぷり詰まった超人ですから。
ザコシ ベンキマンですか! あの水を流すギミック、そして頭部のうんこ…。大体、イメージできました!!
嶋田 おおーッ! 楽しみにしてますよ。
(取材・文/直井裕太 撮影/関純一)