高座も観客も老人ばかり――そんなイメージもあった落語で、噺家(はなしか)もファンにも“若返り”が起きているという。
■観客席に増える若者&女性
「最近、意外と若いお客さんも多いですよ。平日に行っても混んでますし、ひとりの女性やカップルで来てる方とかいます。昔よりはだいぶ、TVとかにも落語家さん出てきたりとかニュースで取り上げられたりしているので興味のある人が増えたんじゃないですかね」
というのは、グラビアアイドルの川奈ゆうだ。5年前にファンにもらった落語CDを聞いて以来、落語にハマり、時間があれば寄席(よせ)に通っているという落語好きだ。
確かに近年、“落語ブーム”と言われて久しい。2005年に宮藤官九郎脚本・長瀬智也主演でドラマ化された『タイガー&ドラゴン』や2007年の国分太一主演映画『しゃべれどもしゃべれども』あたりから火が付き、大泉洋が売れない落語家役を務めた『トワイライト ささらさや』(2014年)、松山ケンイチが主演を務めた『の・ようなもの のようなもの』(2016年)と最近も落語を題材にした映画がヒット。漫画『昭和元禄落語心中』も今年、アニメ化され、話題となった。
「『行ってみたいんだけど、ひとりで行けない、行きづらい』という友達も少なくないですね。『行きたいから連れてって』といわれて一緒に行ったりしますよ。知り合いのアイドルのコでも好きなコがいて、今度行こうという話をしたりしています」(川奈)
映画やアニメなど普段、落語を観ない層からファンが増える一方、落語界もブームに乗って変わってきている。特に注目を集めているのが、若手の台頭だ。
2014年にスタートした、落語に造詣(ぞうけい)の深いお笑い芸人・サンキュータツオが主催する、若手落語家が中心となった「渋谷らくご」(通称:シブラク)は連日満員。
さらに『平成27年度 NHK新人落語大賞』を獲った柳亭小痴楽(りゅうていこちらく)と瀧川鯉八(こいはち)などが結成した若手落語家ユニット『成金』の公演も満員御礼が続いている。
「今はSNSもありますし、若手落語家自ら発信する機会も増えました。そうしたところから各々アピールして認知され始めていると思います。特に昔と違って、今は元お笑い芸人出身だったり前職のある若手も多く、キャラクターに富んでいるので面白いんですよ」
そう話すのは、演芸情報誌『東京かわら版』の佐藤友美編集長。「落語」という芸だけでなく、その魅力的な人間性でファンを増やしているとのことだ。
元暴走族総長も!グラドルの心を掴むイケメン落語家
また、若手落語家の人気に拍車をかけているのが、“イケメン”の存在。先月発売された雑誌『AERA STYLE MAGAZINE Vol.31』では、あまりの人気にチケットの入手も困難な春風亭一之輔など、イケメン落語家にフォーカスした特集を組んだことで反響を呼んだ。
また、2月に放送されたNHKの『あさイチ』でも柳亭市弥(りゅうていいちや)らがイケメン落語家として紹介されるなど、落語界にもイケメンブームが起きているのだ。
もちろん、彼らも顔だけではない。落語協会理事である柳家喬太郎(きょうたろう)など渋めの落語家が好きだという川奈もイケメン落語家のひとり、瀧川鯉斗(こいと)が気になるという。
「寄席に行くと、若い女性が出待ち、入り待ちなども普通にしてますね。私も鯉斗さんには興味あるんですよ。お顔も整っているんですけど、暴走族の元総長なのに『お話はすごく端正』だって友達に聞いて、そのギャップがたまらないらしいんです。まだ聴いたことないので聴いてみたいなって」
とはいえ、触れたことのない人にはハードルの高い落語。ここまで若い人々も魅了する理由はなんなのか。
「何も考えないで笑いたいとか、楽しい気分になりたいとかいう時に行くと、笑わせてもらえるので。何も考えず、とりあえず自分が行けば座ってて笑って楽しいみたいな。上手な方だと本当に女性に見えたりとか、子供みたいな仕草とか身振り手振りがリアルですごいので、そういうのを観ているだけでも面白いと思います」(川奈)
■川奈ゆう(KAWANA YU) 1984年7月3日生まれ 東京都出身 B94 W59 H86 グラビア歴12年、ミス東スポ2015特別賞に輝いたグラビアアイドル。その豊満なバストは最近、GカップからHカップに成長! 自らネタ帳に小噺を書き溜め、舞台の幕間に披露するなど、落語にハマった“落語女子”。近況はTwitterにて @kawanayu198473 ■東京かわら版 創刊40年を越える老舗であり、日本で唯一の演芸専門誌。都内を中心に毎月1千件を超える落語・講談・浪曲など寄席演芸情報を掲載。落語好きにとってのバイブル。演芸界史上初、東西の落語家・講談師など1100名近くが掲載された『東西寄席演芸家名鑑』も発売中 http://www.tokyo-kawaraban.net/
(取材/文 鯨井隆正 撮影/五十嵐和博)