あの国民的バラエティ番組のスピリットを引き継ぎ“友達の輪”を!とスタートした『語っていいとも!』。
前回、女優・歌手の木の実ナナさんからご紹介いただいた第26回のゲストは女優の中山忍さん。
実姉の中山美穂さんがアイドル・女優として人気絶頂時に自身も15歳でデビュー、アイドル誌の表紙を飾る活躍だったが、実は仕事での葛藤から引きこもりがちだったという。
そこで現在まで続くマネージャーとの出会いもあり女優の道にシフトし、数々の作品に出演。今が一番楽しいと語るがーー。(聞き手/週プレNEWS編集長・貝山弘一)
―ちなみに、そもそもお姉ちゃんが先にこういう世界に入って、ものすごく有名な人気女優、歌手として存在して。そういうプレッシャーとかは?
中山 それはやっぱりすごいありましたよね。10代の頃は何をするにも中山美穂の妹っていうのがついて。今ではもう全然なんとも思わないですけど、その当時は中山忍っていう個人の人間はどこへいってしまうんだろうっていうか。
妹っていわれるたびにどんどん喋らなくなっていくみたいな。悪循環にハマってましたよね。
―やっぱりそういうのがあったんですね。お姉ちゃんの存在が大きすぎて「自分のアイデンティティって?」というところで。
中山 で、やっぱりこういうインタビューを受けても、ライバルは誰ですか?とか。もう絶対、お姉さんって言わせたいんだなって思うと、頑(かたく)なに言わなかったんですよ。結構そのへんは頑固だったんで…ひねくれてた10代でしたよね。
―そういうのも無意識にストレスだったりしたんでしょうね。でもそれがマネージャーさんとの出会いもあり、ドラマとの巡り合わせもあって、20歳過ぎにちょうど転機が。
中山 すごい人生が変わったというか…初めて自分の意志でこういう風にいきたいみたいな感じで。
マネージャー それまでオーディションを受けて何かするってこともなかったですから。それが『ガメラ』(大怪獣空中決戦:95年)でも、それに受かったからヒロインになれたっていうことで…。
―なるほど。ガメラは久々に復活という30周年の大作で話題でしたし。そこで演技自体も評価されて、報われたというのも大きかった?
中山 ほんとそうですね、アイドルじゃなくて女優になりたいって決めたけれども、器用なほうではなかったし、やる気はあるけど上手くもない。そこで芸能界に入って、初めてガメラでの助演女優賞(ヨコハマ映画祭、ブルーリボン賞etc.)だったから。
もう女優としてやっていっていいんだなっていう、ひとつの許可を得たというか。あれは私の中でも本当に大きかった。20年経った今でも平成ガメラ三部作って、ファンの方もいてくださって、支持してくださることがすごいありがたいなって。
―女優としてやっていけるというお墨付きをもらったような。そこでまたひしひしと自覚というか、責任感も改めて目覚めたり?
中山 なんかでも無我夢中だったような気がしますよね。やりたいんだけどできるんだろうか?とか。でも選んだからにはやらなきゃって、すごいプレッシャーもあるし。向いてるのか向いてないのか、才能があるのかないのか。
で、ようやく30歳になった時に、15歳でデビューして人生の半分やってるんだから、もういいんじゃないかって。向いてようが向いていまいが、才能があろうがなかろうが、やらせてもらえてるんだったら、これでやろうと思って。気持ちが楽になりましたね。
姉のことでも、私のことを知らない人に対して「美穂ちゃんの妹さんだよ」って言って、やっぱり皆さん一番わかってくださるので。だったら、それでいいんじゃないかって。
「私はお姉ちゃんみたいになりたかったんだな」
―ようやく受け入れられたというか。自分を解放できたんですかね。そこから今に至るまで、いろんなドラマで役を重ねて出演数もスゴい数になってるわけで。振り返ると、いつの間にか走り続けてきた感じ?
中山 いやー、まぁいろいろあったような気がしますけど。もう無理だって思ったりとか、もうちょっと頑張ろうって思ったり。すごい周りと喧嘩したりもあったし。うーん…。
でも最近思うのは、やっと自分自身で折り合いがつくようになったというか。なりたい自分と実際の自分は違うんだっていう…。今、43歳ですけど、どこか自分で認めたくなかった気持ちとして、お姉ちゃんみたいになりたいっていうのが、たぶんずっとあったと思うんですよ。それが変なプライドとかにもなってて。
生まれ持った能力とか、やりたいこと好きなことも姉妹で違うのはもちろんわかってるんだけど、頑張ればお姉ちゃんみたいな、まぁ時代を代表するようなアイドルっていうか…妹が言うのもちょっと気持ち悪いですけど(笑)、そういう象徴する存在に自分もなれるもんだと思ってたんですよ、子供の頃は。
―お姉ちゃんを追いかけていた気持ちも多分に大きかったわけだ。
中山 でも頑張ったけど、元々持ってるものも環境も違うし。なれないのを認めたくない自分、言いたくない自分…ライバルが誰ですかって聞かれて、中山美穂だったのかもしれないけど、その時は素直に言えなかったのが、今ようやくこの年になって「ああ、私はお姉ちゃんみたいになりたかったんだな」って。
―それを言えるようになったのも、この歳になって受け入れられたからこそ?
中山 うん。縁があって出会った人とか、本当にやりたいことを自分が進んできて現在に至ってることを考えると、その都度、決断してきた結果が今だから、なんの悔いもないし。もっとこうしなきゃいけない、より良い役をってのはありますけど、あの時、いつもこう焦ってたとか、もっとお姉ちゃんみたいになりたいとか、そういう気持ちは収まって。
逆に楽になって、じゃあ好きなことやろう、髪型とかもずっとロングのサラサラヘアーみたいなのがイメージみたいに思って、こだわってた時期もあるんですけど。役でちょっと前にボブにしたのを、誰にも頼まれてないけどショートにして、勝手にちょっと寄せちゃおうとか楽しめるようになって。
―髪型ひとつとっても、違う新鮮な自分の現れというか、囚(とら)われていたものから解放された象徴みたいな…。
中山 そうですね、自分が自由になる感じ…。そうやって、これまでバラエティとかも決して臨機応変に受け答えを面白くできるタイプでもなく、遠慮してた部分もあるんですけど、誘われたらやってみようかって気持ちにもなって。
―それも水ぶっかけられて泣いていたほどイヤな思い出を克服して、自分なりでいいんだみたいな。
中山 そうそうそう。女優としてやってきた部分があって、別にそんな面白くはないけど、それでいいって言ってくれるなら行ってみようかなみたいな。
だから女優っていう職業に就けて、自分の感情を出せて、人としてよかったなというか。お芝居をするとか表現する仕事に就いてなかったら、すごい行き詰まってたと思います。
「結婚したいなって思った時も…」
―なんか、こうやって話を伺ってると、実は頑固だったり、すごく生真面目で頑(かたく)な部分があって溜め込むタイプだったんだなと。それで若い頃に苦しんで。でもやっぱりお姉ちゃんのへの気持ちも強い憧れの裏返しだったんですかね…。
中山 憧れではありますけど、それもこうやって年齢が上がってくると若干、関係性も変わってくるというか。なんていうのかな…今、立場が逆転してきちゃって、ちょっとお母さんの気持ちに(笑)。なんか心配になって、ああしろこうしろとか猛烈に口出しちゃうんで、だからうるさいっていつも言われます。
―ははは、美穂さんが結構、天然だったり奔放だったり?
中山 自由なんですよね、基本的に。こんな自由に生きていいんだって思っちゃって。
―(笑)心配しつつ、自分にない部分でそれも羨ましくもあり?
中山 そうなんです。なんか、姉の用事を一生懸命やってて、自分のことが後回しになってたりすると、あれ?って。苦手なこととか、誰かにやってもらったほうが早いことは人に頼んでいいんだって。ちょっと見習おうと思って(笑)。
―普通は次女が奔放で、長女のほうが神経質で面倒見いいとか世話好きだったりしますが。それが逆転しちゃって。でも、こういう人生もありだったかなと自分に置き換えてみたりはしない?
中山 それはないですね。今、ほんと楽しいんで。
―そこでファンならずとも気になるのは、結婚についてですが。なんで独身なのかって…言われても困るでしょうけど(笑)。
中山 ああ、ねぇ(笑)。まぁ別に結婚しないって決めてるわけでもないですよ。普通に恋愛して、家庭を持って、子供を授かってって、意識しないでもできるものだと思ってたら、なんかうっかりしちゃって…現在に至るみたいな。うん。
―木の実さんなんかは、女優と両方はできないっていう選択で、やっぱり私はお仕事をやめられないわよってお話でしたが。
中山 それは若干…やっぱりわかりますよね。ナナさんが経験されてきたことには全然及ばないと思いますけど。
でも私はやっぱり望んで、結婚したいなって思った時ももちろんあるんですよ、別にお相手がどうとかじゃなくて。女の人のすごいそう思う時期があると思うんですけど。でも実らないし。じゃあもういっかっていうのがひと山越えて今、みたいな感じ。
番組なんかでも、結婚できないことを悩んでません?とか、相談しませんか?みたいなお話をよくもらうんですけど。私、悩んでないしな…あれ、悩まなきゃいけないのかな?っていうのが今の悩みですね。
―いかにもそういうことを求められて、もっと自然でいいじゃない、みたいな。
中山 うん。この間も名倉潤さんの番組に出させていただいて、世の中には忍ちゃんぐらいの年齢で結婚しないことですごい嫌な思いをしてる女性がいっぱいいるんだから、別に悩んでないなら、逆にそれをどんどんアピールして、ほっといてくれって言って歩けと。
―ははは、ほんと余計なお世話だし、周りから色眼鏡で見られて迷惑ですってね。
中山 「それは世間に言ったほうがいい!」 ってことで。じゃあそうしますって(笑)。
「ずっとひとりって決めてるわけではない」
―ちなみに、自分のその頑固な部分や頑な性格とかで、男性に対しても求めるハードルが高いみたいなのは…?
中山 たぶんないと思うんですよね。…でも、今となってはナナさんじゃないですけど、この人生の半分以上を女優としてやってきてる人に、じゃあ家庭に入ってくださいって言う人もなかなか難しいですよね。全くもう人生を否定しちゃうような感じじゃないですか。
―以前、ゲストで出ていただいた高橋ひとみさんも誰しも認める魅力的な女性なのにずっと御縁がなくて。「なんでこんな男ばっかり?」って相手がきちゃうと(笑)。
中山 ひとみさん、面白いですよね(笑)。
―それが50代になって、たまたま巡り合わせで気がおけない男性と出会って結婚して。気楽な感じで暮らされているそうですが。
中山 だから私もずっとひとりって決めてるわけではないですし。でも楽しいと思える仕事もあるし、信頼できるスタッフや親兄弟、友達もいるし…別に無理して、我慢して結婚しなくてもいっかみたいな。
―それこそ周りを見て、お姉ちゃんの恋愛や結婚も参考になってるのかどうなのか(笑)。
中山 ああ、私には無理ですね。あんなというか…まぁ真っ直ぐでバカ正直なのがいいところだと思うんですけど。もういいんです、あの人はあれで。それがお姉ちゃんだから、はいはいって(笑)。
―それも自分にはないものだったり、自分にはできないことだし?
中山 できないけど…同じように、たぶん変なところでね、頑固だから。そこは似てるんだと思うんですよ。自分がこうだって思わないと動けないところは…もう変えようにも変えられないっていうか、我が強い。それは私の欠点だと思ってるんですけど。
―よくも悪くも、こうだって決めたら一本気な性格ということで。
中山 気質ですよね。だから結婚できないとかは、その我の強さもあるでしょうし。あとはもう…おこがましいですけど、女優って職業にものすごいプライドとやりがいを感じているんだろうなって。
―でもそこで今後、ひとみさんみたいにいろんなものがフラットになったタイミングで気楽な出会いもあるかもしれないですしね。
中山 ご夫婦仲が良いというのはとてもステキですよね。
次回ゲストは「まるで海の宝石箱や~」…
―そもそも少女漫画チックといわないまでも恋愛に対して昔から憧れや乙女なものもなかったんですかね。
中山 ああ…でも若い頃は人並みにあったと思うんですけどね。まぁ人並みにあったんです。あったあった、確かに(笑)。あったよね?
マネージャー ありましたね(笑)。
中山 結婚しちゃおうかなみたいな、そういうのもありましたけど…まぁ至らなかったっていうのは、やっぱり私に問題があったんだと思いますよ。
それもいいかどうかはよくわかんないですけど…今楽しいので、よしとしようみたいな。でも昔のほうがひねくれてたよね、私(笑)。
―ブログにも誕生日で「歳を重ねるのが楽しい」って書かれてましたけど。頑固でひねくれてたのが、いろいろ受け入れられる柔らかさも身について。新たな出会いも…。
中山 ほんと理想とか何もないんで。なんでもいいって言ったら変ですけど…もう年上でも年下でも普通にお友達のように付き合える普通の人がいいです(笑)。ただ普通でいてほしい。
―なんかスゴく伝わりました(笑)。では、そろそろお友達を紹介していただければと。
中山 さっきお話しした『刑事貴族3』というドラマで、その時、もうでき上がっているチームに新人でふたり、ぽんっと入れられたのが彦摩呂さんで…。それで初めて出会って以来のおつきあいなんですけど。
―すっかり食リポーターで人気になる前ですかね。元々は俳優をやられていて。
中山 なかなかうまくできなくて、ふたりでよく怒られましたけど。でもチームワークのいい現場だったので、すごく皆と仲良くなれて。お互い変わらず、芸能界で一緒にやっててよかったねっていつも話すんですよ。
その縁で『旅ぷら』って関西の番組でも半年に1回はふたりで旅に行かせてもらって。そこでよく言うのは「難しいことは彦ちゃんにお任せ。おいしいものを食べたり、簡単なことは私が担当」って。
―素敵ですね、そういう縁が続いてるのは。では彦摩呂さんに繋がせていただきますね。何かメッセージはありますか。
中山 また旅に行きましょう。でも太ってるから体調にだけは気を遣ってね。タバコはやめなさい!
―了解しました(笑)。
●第26回は7月24日(日)配信予定! ゲストはタレント・俳優の彦摩呂さんです。
(撮影/塔下智士)
●中山忍 1973年1月18日、東京都生まれ。1988年、ドラマ『オトコだろッ!』で女優デビュー。93年に『ゴジラvsメガゴジラ』、95年に『ガメラ~大怪獣空中決戦~』(ヨコハマ映画祭助演女優賞、ブルーリボン賞最優秀助演女優賞、日本アカデミー賞優秀助演女優賞)に出演。ゴジラ映画とガメラ映画の双方に出演した初の女優となる。現在、舞台『梅と桜と木瓜の花』(7月11日~30日)に出演。武田鉄矢、中村玉緒、柴田理恵と共演、3人が扮する個性豊かなお婆さんトリオが繰り出す笑いと涙の珍道中は必見!