プロレスラー飯伏幸太(右)が巨大化して怪獣と戦う、前代未聞のバカ映画『大怪獣モノ』について映画監督・河崎実(左)と語ってもらった! プロレスラー飯伏幸太(右)が巨大化して怪獣と戦う、前代未聞のバカ映画『大怪獣モノ』について映画監督・河崎実(左)と語ってもらった!

巨大化した飯伏幸太が、高層ビルの屋上から怪獣にフェニックス・スプラッシュ(前方450度回転ボディプレス)! 前代未聞のバカ映画の公開を記念して、プロレスラー・飯伏幸太と映画監督・河崎実が大マジメな対談を実施!

■巨大怪獣にまともに蹴りを入れた初の映画!

河崎 今回の作品は画期的な作品なんです。『ウルトラマン』前後に『フランケンシュタイン対地底怪獣』(1965年)『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(66年)って映画があったんですが、この2本だけは人間が巨大化して戦ってるわけ。仮面とかもつけないで。

飯伏 なるほど。

河崎 でもフランケンシュタインの(役の)人は、(格闘技は)素人で。今まで、巨大怪獣にまともに蹴り入れるといった映像は見たことなくて、それを今回やりたかったんだよね(笑)。

飯伏 なるほど(笑)。

―リアルに強い人が巨大化して戦ったことはなかったと。

河崎 力道山も映画には出ているけど、巨大化はしてないからね。かつて大山倍達(ますたつ)は牛と戦って、ウィリー・ウィリアムスは熊と戦ったでしょ。そして飯伏幸太は怪獣と戦う。

―飯伏選手はプロレスの世界では、路上プロレスや本屋プロレス、マンションプロレスなど(*)、いろいろと常識を壊してきましたが。

飯伏 僕は結構、普通にやってたつもりなんですが、後で「あ、おかしかったんだな」って(笑)。

河崎 今回、フェニックス・スプラッシュを高層ビルの上からやったじゃないですか、あれはよかったねえ。あと、(セットの)ビルをぶっ壊すシーンも面白かったでしょ?

飯伏 ものすごいリアルでよかったですね。ホントに自分が大きくなってるような錯覚に陥りました。

河崎 身長40mで戦ってるわけだから。やっぱり誰もがデカくなりたいんですよ、男はバカで小2病だから。あと、敵の怪獣役の彼が大変だったよね。キックがホントに入ってたから。

飯伏 結構、途中きつそうでしたね。ハイキックや膝(ひざ)蹴りがヒットした感覚は忘れられないです。

河崎 ヤツもプロレスファンなんで、飯伏選手の技を受けて喜んでましたよ。

(*)「路上プロレスや本屋プロレス、マンションプロレス」 DDT時代の飯伏は路上や書店、工場などでも試合を展開。特にマンションプロレスは、建て壊しが決まったマンションに籠城する住人たちを立ち退かせるために次々と住人を倒していくステージクリア型プロレス

かめはめ波は「出ないんだな」って気づきました

 

―4月には、以前から出場を熱望していたアメリカのプロレス団体「KAIJU BIG BATTLE」に出場しましたが、その前にこの映画の収録もあり、悲願だった怪獣との戦いが続きましたね。

飯伏 あくまでも戦いの一環として怪獣と戦いたかったんです。

―これまでいろいろな相手と戦ってきた飯伏選手が、戦ったことがない相手のひとつとして怪獣と戦ってみたかったと。

飯伏 そうです、そうです!

―飯伏選手は子供の頃、『ウルトラマン』とかにはハマってたんですか?

飯伏 やってたら見るみたいな感じで、自分から見たりはしなかったです。

河崎 アニメとか特撮は何を?

飯伏 『ドラゴンボール』とかですね。

河崎 かめはめ波とかか。

飯伏 あれ、出せると思って、授業中ずっと鉄の棒を曲げてました、曲がらないんですけどね。なんでしたっけ、習字のヤツ?

―文鎮です。

飯伏 文鎮を曲げられたらかめはめ波が出るだろうと。「出ないんだな」って、小4ぐらいで気づきましたね。

河崎 気づくの遅い(笑)。

―飯伏選手は子供の頃からいろいろやってますよね。

飯伏 特訓系は小中くらいが一番やってましたね。もう何回も死にかけましたし。

河崎 特訓?

飯伏 一番死んだなと思ったのは、中2ぐらいのときにロープで足と岩をつないで、川に落としてくれって頼んで落としてもらったんですけど、まったく上がれなくて。

河崎 当たり前じゃない!(笑)

飯伏 死んだと思いました、はい。意識がなくなって、友達がロープを切ってくれて。

技一発600円でプロレス技をかけさせてもらった

―友達にお金を払ってプロレス技をかけさせてもらっていたそうですが、その、助けてくれた友達もそういう相手ですか?

飯伏 はい、技一発600円ぐらいでした。

―(笑)。今回、飯伏選手の映画初主演となりましたが、力道山も現役のレスラーやりながら、たくさん映画やドラマに出られていたんですよね。

河崎 『チャンピオン太(ふとし)』(62年)ってドラマがあって。梶原一騎原作で。

飯伏 それはどういう?

河崎 ある少年が当時、スーパースターだった力道山の道場に入って戦っていくプロレスマンガが原作なんだけど、第1話に猪木さんが出てるんですよ。死神酋長っていうレスラーで。メイクさせられて「ウワー!」とか言って(笑)。伝説ですけどね。飯伏選手はまたいろいろ考えてるんでしょ?

飯伏 何をですか?

河崎 恐ろしいことを。

飯伏 いろいろやっていきたいなとは思ってます。

河崎 アメリカ行ったじゃない? どうなんですか。

飯伏 どうなんですかねえ。

河崎 アメリカのメシは?

飯伏 メシは合ってますね。ジャンク系で最高でした。

河崎 食とか全然気を使ってないよね。

飯伏 使ってないです。

―今年2月にDDTと新日本プロレスを退団して「飯伏プロレス研究所」を設立し、最初の大きな動きのひとつが今回の映画です。DDTとIGFへの参戦、6月からスタートしたWWE「クルーザー級クラシック・トーナメント」や8月のWRESTLE-1出場と、動きも活発になってきましたね。

飯伏 これからも怪しい動きをして、プロレスを研究していこうと思ってます、はい。

河崎 とりあえず、次もやりたいんですけどね。次もお願いしますよ。

飯伏 次? いつですか?

ライバルは『シン・ゴジラ』

―ノリ気だ(笑)。

河崎 実は今回も、いろんな人にオファーしてたんですよ。長州さんとか。

飯伏 あ、長州さん(笑)。

河崎 長州小力が注射打ったら長州力になるとかいろいろ考えてたんだけど(笑)。

飯伏 ちょっといいですねえ(笑)。

河崎 この映画はさ、『シン・ゴジラ』の直前に公開だから。向こうは予算10億円で、こちらは何十分の1なんだけどね。

―『大怪獣モノ』のライバルは『シン・ゴジラ』だったのか。

河崎 ライバル…便乗ですよ!(笑)。まあ、次に誰を巨大化させたいかって話ですね。

飯伏 なるほど。

河崎 舛添(要一)とか巨大化させたいなあ。

(取材・文/モリタタダシ[Homesize] 撮影/本田雄士)

●映画『大怪獣モノ』

 映画『大怪獣モノ』(C)2016『大怪獣モノ』製作委員 映画『大怪獣モノ』(C)2016『大怪獣モノ』製作委員

飯伏幸太が巨大化し、怪獣とバトルを繰り広げる怪獣特撮映画。首都を蹂躙する「大怪獣モノ」に手をこまねいていた防衛省は、バイオ研究の第一人者である西郷博士に助けを求める。博士に万能細胞「セタップX」を投与された助手の新田は、身長40mの超人に変身し、大怪獣モノに立ち向かう! あの鈴木みのるも巨大化して登場。赤井沙希らのほか、西郷博士役の『ウルトラマンレオ』の真夏竜ら特撮界のレジェンドも多数出演。7月16日以降、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国で公開 (C)2016『大怪獣モノ』製作委員

●飯伏幸太(IBUSHI KOTA) 1982年生まれ。2004年にDDTでデビュー。09年に新日本プロレスにも参戦し、13年には業界初となるDDTと新日本プロレスの2団体所属レスラーとなる。16年2月に両団体を退団し、「飯伏プロレス研究所」を設立

●河崎実(KAWASAKI MINORU) 1958年生まれ。大学在学中に映画製作を開始し、卒業後、『地球防衛少女イコちゃん』『電エース』などを手がける。自他共に認める「バカ映画の巨匠」。主な作品に『いかレスラー』『日本以外全部沈没』『地球防衛未亡人』など