週プレでの初撮り下ろし。このときから、カメラの前でもまったく物おじしなかった(2013年No.51より)

2013年、「千年にひとりの逸材」と呼ばれる少女が現れた。

週プレは、彼女の住む地に急行し、グラビア撮影を敢行。想像以上の可能性を感じさせてくれたその少女は、やがて日本中をとりこにし、スターへの道を駆け上がった。

橋本環奈(かんな)本人のコメントとともにふり返る、“あの日”からの物語。

【2013】たった一枚の写真が起こした“奇跡”

2013年11月上旬、突如として「千年にひとりの逸材」という言葉がインターネットを駆け巡った。とあるアイドルファンが撮った写真に、ずば抜けた美少女が写っていたことから、このキャッチコピーとともにその写真が拡散されたのだ。

そこに写っていたのが、橋本環奈だった。実は話題になる半年前からアップされていた写真だったが、「千年に…」という言葉によって、ネットの大海からすくい上げられたのだ。以後、世間でも「◯年にひとり」というキャッチコピーが常套句(じょうとうく)になるほど、彼女の登場にはインパクトがあった。

「『千年に…』と話題にしていただいたときは、すごく驚きました。そもそも“千年”っていう数字が想像もできないくらい大きいものだったし、『まさか私がこんなに注目されるなんて』っていう恐れ多い気持ちもあったんです。でも、それがきっかけでテレビや雑誌に取り上げていただき、今までにない経験をたくさんさせていただきました。この頃は、新しいことに挑戦する期待と不安、どちらも感じていましたね」

福岡在住のファン「博多のタケ」氏が撮影した一枚。この写真が拡散され、全国的に注目された

【2014】写真集発売、そして怒濤の“7冠受賞”へ

翌年に入ってすぐ、雑誌『an・an』の表紙を単独で飾り、ソフトバンクのCMにも出演。秋には、著名写真家、レスリー・キー氏の撮影による1st写真集を出版する。

「出来上がった写真集を見て、“自分じゃない不思議な感じ”がしました。アイドルのグラビアとは違うアートな写真だったし、衣装も大人っぽかったので。今でも、本屋さんに並んでるのを見ると、自分であって自分じゃないような面白い気持ちになっちゃうんですよね(笑)。でも、今はデジカメやスマホで簡単に写真を撮れるからこそ、こうやって一冊の本として出してもらえたことがうれしいです。私がおばあちゃんになっても、この“15歳の橋本環奈”は本の中に残ってるから」

そして、11月に雑誌『日経トレンディ』が認定する「2014年のヒット人」に選ばれたことを皮切りに、第21回「ベストスマイル・オブ・ザ・イヤー」など、注目を集めてから約1年で“7冠受賞”という快挙を成し遂げる。こうした賞に選ばれることは、彼女の持つ清潔なイメージや、芸能活動に対する真摯(しんし)な姿勢が評価された証(あかし)だろう。

「ドラマや映画でお芝居をするのも楽しいんですけど、賞に選んでいただけることは、また違ううれしさがあります。『私自身を選んでもらった』って感じるし、何より、授賞式で自分の言葉を話せることがありがたいなって思うんです。

特に思い出に残ってるのは、『日本ジュエリーベストドレッサー賞』(第26回)。私は歴代最年少で10代部門を受賞させていただいたんですが、宮沢りえさんや深田恭子さんなど各世代の受賞者が並ぶなか、トップバッターでスピーチをさせていただいたんです。あんなに大勢の方の前で話すのは初めてだったから、めちゃくちゃ緊張したんですけど…ちゃんと事前に考えた言葉を話せたので、『自分を褒めてあげたいな』って思いました(笑)」

45号のグラビアも撮影した細居幸次郎氏と、ここで初タッグ(2014年No.34-35より)

立ち止まることを自分が許してくれないんです

【2015】セーラー服と機関銃』会見の“決意の瞬間”

雑誌やCMで存在感を増す一方、ドラマ『水球ヤンキース』(2014年)や映画『暗殺教室』(2015年)などに出演し、女優活動を本格化。ついに、誰もが知るビッグタイトルに挑戦することになる。

2016年に設立40周年を迎える角川映画が、その記念作品として『セーラー服と機関銃』の続編製作を発表したのだ。過去に、薬師丸ひろ子、原田知世、長澤まさみといったそうそうたる女優が主演を務めたアイドル映画の金字塔。しかも、その続編小説『セーラー服と機関銃-卒業-』の映像化は、これが初めてとなる。当然、世間の注目度は高く、記者会見当日は約300人のマスコミが集まった。

そこで主演として紹介されたのが、橋本環奈だった。実は、本作の製作総指揮を務める角川書店の代表・井上伸一郎氏は、あの「千年にひとりの逸材」の写真を見てすぐに福岡に飛び、彼女のステージを観覧した上で、角川映画への出演をオファーしたという。だが、そんな秘話も語られた華々しい会見の裏には、橋本本人の覚悟が問われるような瞬間があった。

「これだけ大きいタイトルで、かつ、初めて“座長”として臨む作品になるので、会見のプレッシャーはすごかったです。当日は、ドレスが2着用意されていました。1着は保守的なドレス。もう1着は、肩が全部見える、チューブトップの大人っぽいドレス。どちらで出るのかは決まってなかったんですけど、私は試着した瞬間、『大人っぽいほうがいい』って感じたんです。16歳の私があれを着るのは覚悟が必要なことではあったんですけど、潔く見せたほうが、役への“決意”を示せると思ったんです」

橋本環奈との「生活」をイメージしたグラビアとともに、ほぼ実物大の巨大ポスターが封入された(2015年No.14 より)

【2016】女優として開花。想像できない未来へ

『セーラー服と…』の主人公・星泉(ほし・いずみ)を演じるにあたって、彼女は自慢のロングヘアを肩口まで切った。2ヵ月近くに及ぶ“合宿”状態での撮影を経て、映画は2016年春に全国公開。スクリーンの中の彼女は、アクションシーンからコメディ、ほのかな恋心まで、星泉としてあらゆる面で表現し、堂々たる主演ぶりを見せた。

さらに、話題作への出演は続く。2017年公開の映画『ハルチカ』(主演・穗村千夏役)と、『銀魂』(神楽役)はすでにクランクアップ済み。加えて、現在のCM出演本数は10社以上。レギュラー番組も複数抱えている。“あの日”から3年、急な上り坂を駆け上がる橋本環奈。立ち止まったり、思い悩んで動けなくなることはないのだろうか?

「時には、『もういっそ倒れたい』って思うときもあるんです。でも、自分で思ってるより私は強いみたいで、何日も寝なくても平気なんですよ(笑)。立ち止まることを自分が許してくれないんです。今は走って走って、誰もが驚くような、自分自身も想像できなかったような未来を手に入れたいです」

2016年No.45グラビアは、『かんな(おくさま)は17歳』。“奥様”になった環奈ちゃんとの“甘い生活”を想像してみる――。

★“奥様”に扮した環奈ちゃんの最新グラビアは『週刊プレイボーイ』45号に掲載!

(取材・文/西中賢治  写真提供/博多のタケ)