TBSのドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』がヒットし、「恋ダンス」の動画がネットで話題となり、爆発的に広がった。
『週刊プレイボーイ』の対談コラム「帰ってきた! なんかヘンだよね」で、“ホリエモン”こと堀江貴文氏と元「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏が、『逃げ恥』のヒットからネットとテレビの未来について語る。
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ホリ TBSのドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』は、すごい人気だったね。この間も、「バンカラ」(生バンド演奏でカラオケができる飲食店)で星野源さんの『恋』が流れたら、みんなが「恋ダンス」を踊ってたよ。
ひろ 僕、基本海外にいるんでドラマ自体は見てないんですけど、ネットを見ていると話題だったことがわかります。総合視聴率(リアルタイム視聴率とタイムシフト視聴率を足したもの)が、30%を突破したってニュースになってましたよね。
ホリ あ、俺もドラマはあんまり見てなかったんだけどね(笑)。でも、原作のマンガ(海野つなみ作)はおもしろかったよ。IT企業に勤める草食系男子と大学院卒の就活失敗女子の恋愛下手なストーリー。出演者もいい感じで、星野源さんも役によくハマってたし、ガッキー(新垣結衣)はめちゃめちゃかわいかった。それに脇役の石田ゆり子さんも「奇跡のアラフィフ」として注目を浴びた。石田さんは、本当にアラフィフには見えないレベルだったよ。
ひろ 堀江さん、なんか『逃げ恥』に関して、めちゃめちゃ詳しいじゃないですか!(笑) 意外としっかり見てたんじゃないっすか?
ホリ いやいや、ドラマそのものは見る時間はなかった。でも、話題になった、恋ダンスの動画は見たよ。
ひろ 恋ダンスは忘年会や新年会の余興として、ピコ太郎の『PPAP』といい勝負みたいですね。
ホリ でも、みんなで盛り上がることを考えると圧倒的に恋ダンスの勝ちでしょう。だって、『PPAP』って一瞬で歌い終わるし、ぶっちゃけ大しておもしろくないじゃん(笑)。
ひろ やっぱり、AKB48の『恋するフォーチュンクッキー』や恋ダンスみたいに集団で踊るものは、カラオケや忘年会、新年会でやりやすいですよね。ちなみに、TBSは、ネットで爆発的に広がることを想定して恋ダンスを作ったんですかね?
ホリ んー、そこまでは考えてなかったと思うんだけどな。
あのダンスをサイバーエージェントのキラキラ女子たちが踊ってたら…
ひろ エンディングに使われて流行ったといえば、過去に『涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)』があるんですよね。『ハレ晴レユカイ』って曲とそれに合わせたダンスがはやりましたけど、それを見ていた世代がテレビ局側にも増えてきたとか? または、なんとなくエンディングでダンスをやってみたらけっこうウケて、ネットに動画をアップしてみたって感じなんですかね?
ホリ たぶん、『恋するフォーチュンクッキー』の成功モデルをコピーしたんだと思うよ。てか、恋ダンスはもっと『恋するフォーチュンクッキー』みたいな展開をすべきだったよね。例えば、あのダンスをサイバーエージェントのキラキラ女子たちが踊ってたら、再生数ももっと稼げたでしょ。本当にもったいないと思う。
ひろ 確かに、『恋するフォーチュンクッキー』のときには、サイバーエージェントのほかにもいろんな会社が動画をアップしていましたよね。でも、今回はそういう話を聞かない。基本的にはドラマの共演者やTBS関係の人が踊ってましたから。
ホリ それは、単純にTBSの頭が固かったからだと思う。
ひろ 一応、TBS側は期間限定で音源を使って動画をアップすることはOKとしていたみたいですけど。著作権の問題とかがあったんですかね。これは推測ですけど。
ホリ 『恋するフォーチュンクッキー』のときは、AKB48のプロデューサーの秋元康さんが、サイバーエージェント社長の藤田晋(すすむ)さんとかに働きかけて、積極的にネットにダンス動画を投稿してもらったりしてたよね。
ひろ そうですね。ネットで話題になると視聴率にもけっこうリンクすると思うので、なおさらやればいいのにって思いますけどね。
ホリ 「テレビ離れ」とか言われてるけど、いいコンテンツを作れば、ネットも含めて爆発的にヒットするわけだからね。
ひろ ええ。
ホリ SNS時代はメガヒットが生まれやすいんだから、テレビ局はもっとネットを活用すべきだよ。
『逃げ恥』はSNS時代の典型的なヒットコンテンツ
ひろ 若い世代はSNSに忙しいので、テレビ局は自社の番組を見てほしいのなら話題づくりの工夫をもっと考えたほうがいいですよね。話題になってもない番組をいちいち見る時間はないと思っている人が多いでしょうし。
ホリ ちなみに、俺は今、大塚製薬の「カロリーメイト」のCMに出てるんだけど、いい感じに再生数が伸びてるみたいなんだよね。
ひろ 動画を見ましたけど、バズりそうなこと言ってますね(笑)。
ホリ SNSの登場で今はバズりやすくなってるから、TBSは恋ダンスを社外に対して広めようとしていなかったのが残念だったな。『恋するフォーチュンクッキー』のような展開をしていれば、カラオケの楽曲も売れるだろうし、ドラマの視聴率や配信セールスはもっとあったでしょう。
ひろ ですね。
ホリ まあね。だから、『逃げ恥』はSNS時代の典型的なヒットコンテンツだともいえるよね。
ひろ さっきの『涼宮ハルヒ』の例じゃないですけど、ネットを使ってきた若手層がテレビ局の中で出世し始めるといいですよね。そんで、頭の固い年配のスタッフではなく、ネットを取り込むことが自然にできる世代が責任者になってくると、視聴率とか番組への支持なんかももっと上がっていく気はしますけどね。
ホリ そうだね。今後に期待だね。
●堀江貴文(ほりえ・たかふみ) 1972年10月29日生まれ、福岡県出身。旧ライブドア社長。SNS株式会社オーナー兼従業員。『やっぱりヘンだよね』(集英社)が好評発売中
●西村博之(にしむら・ひろゆき) 1976年11月16日生まれ、神奈川県出身。元『2ちゃんねる』管理人。近著は『ソーシャルメディア絶対安全マニュアル』(インプレスジャパン)
(構成/杉原光徳 加藤純平 イラスト/西アズナブル)