事務所が倒産して土下座――昨年10月1日、そんな会見を行なって一躍、話題になったアイドルがいる。それが「黄金時代」だ。
海賊をコンセプトに結成され、6月26日のデビューライブでは1千人もの観客を集めた。アイドルが乱立する今、新人としては異例の集客として注目され、航海を始めたのだったが――。
そのわずか3ヵ月後に所属事務所「株式会社ジョリー・ロジャー」がまさかの倒産という事態に。暗礁に乗り上げた彼女らは、新たな所属事務所を探すため、緊急会見を行ない、そこで土下座。それが大きな反響を呼んだ。
“土下座”パフォーマンスが功を奏したのか、難破しかけた黄金時代は早くも1ヵ月後の11月には新所属事務所が決定。さらに2月1日にはミニアルバム『海賊盤』がリリース予定で、新たな船出となった!
そこで、デビューから半年足らずで波乱万丈の航路を進むことになった彼女らを直撃。無所属となった間、彼女らは何を考えていたのか――。
―はじめまして。まずは自己紹介とメンバーになったきっかけをお願いします。
安田帆花(ほのか) リーダーの帆花です。元々「ステーション」という鉄道アイドルだったんですけど、私以外のメンバーが卒業してしまって解散したので、黄金時代に入りました。
―いきなり切ない話ですね。リーダーということは帆花さんが立ち上げたんですか?
帆花 いえ、黄金時代を作ることは前の事務所(※倒産したジョリー・ロジャー)が決めていて、報道された時に勝手にリーダーになってたので、そのまま…という感じです。
―あー。なるほど、間違いだったんですね(苦笑)。
日向いちか メンバーで一番背の高い、いちかです。私は前の事務所時代からあった「ゲームメイトβ」というアイドルもやってます。ちなみに黄金時代はジョリー・ロジャーの名前が「海賊旗」を意味するので、“社運をかけたアイドル”ということで結成されたんです。
―それがあんなことに…(苦笑)。
葵あおい あおいです。苗字も葵ですけど…。私は元々「FairyFloss.」というアイドルをプロデュースしていたんですけど、デビュー直前にふたりも飛んでしまって、ステージに立たなくちゃならなくなったんですよ。そのあと、黄金時代に誘われたので入りました。
―また悲しい理由で(笑)。
あおい みんなに何やってるの?とツッコまれます(笑)。でもステージも楽しいですよ。
―それならよかったです(笑)。
柚木れも れもです。私は純粋にオーディションからです。昔からアイドルをやってみたい気持ちもあって、海賊は興味ないけどHPが熱かったので志望しました。
出会った当初は会話ゼロ!?
―唯一、まっとうな加入の仕方ですね(笑)。メンバーが決まったのはいつだったんですか?
いちか デビューの1ヵ月前くらいですね。今日からレッスンやるから来てって言われて、行ってみたら他のメンバーがいた、という感じですね。
れも レッスンに行ったら帆花がいて、休憩中に「もしかして海賊ですか?」っていうのが初対面でしたね。まだグループ名も決まってなかったんですよ、1ヵ月前に(笑)。
―ホントにバタバタだったんですね。
帆花 ですね。皆、歌とかダンスとか時間がない中、覚えなきゃいけなくて必死で全員無言でしたもん。ほとんど会話した記憶ないです。ダンスの先生に「もうちょっと仲良くしようよ」って言われました(笑)。
―まぁともかく6月末にデビューライブをしたわけですけど、それで1千人も集めたってすごいですよね。
いちか そんなに集まると思ってなかったので驚きました。でも、デビューイベントをSNSで拡散すると総額50万円相当の金貨が当たるっていうプロモーションをやってたから、そのおかげもあると思います。ただ、その50万円はどこから…って今になって思いますけどね(笑)。
―確かに(笑)。デビューライブで印象に残ってることってありますか?
れも 私、ズッコケたんですよ。しかもマイクが音まで拾っちゃって…それもYoutubeに上がってるので、ずっと残っちゃってるんですよね(笑)。
帆花 あれはビックリした。いきなり消えたと思ったら、ドン!って音がして…なんか爆発した!って思ったもん。そこからへっぽこキャラになったよね(笑)。あと、あおちゃんは高いところとか船のイベントはダメなんですよ。
―ん? どういうことですか?
あおい 私、高所恐怖症と船恐怖症なんですよ。だからそういう場所でのライブは“公休”取ってるんです。というか海賊だけど、海がダメで怖いんです。
給料をもらったことがなかったメンバーも!!
―それでいいんだ(笑)。デビュー以降の活動は順調だったんですか?
いちか ラジオとかにも出たし、メディアの取材とかも入ってきて、順調でしたね。
れも 1年以内にシアターGロッソ(※東京ドームシティ内にある約800人規模のイベント会場)で単独ライブしようという目標を掲げて、頑張ろうって話してましたからね。
―それが3ヵ月後には…。
帆花 そうなんですよ。最初、SNSでファンの方から私に「大丈夫?」ってきて、なんだろうと思って会社名を検索してたら倒産って。それで初めて知ったんです。
―本人たちには知らされてなかったんですか?
あおい 全然。ほののんが連絡くれて他のメンバーは知りました。
いちか 私は、お給料ももらったことなかったので危ないのかなとは思ってました。でも潰れるとは思ってなくてビックリしました。
―零細企業にありがちな話ではありますが…。それで会見しようってことになったわけ? 解散という話は出なかったんですか?
れも その時はなかったです。だったらネタにしちゃおうってスタッフの方が決めて、会見になりました。
いちか 勢いで土下座したんですけど、それでメディアに取り上げられてSNSのフォロワーが増えたんですよ。だからこのままフリーになっても普通にやっていけると思ってました。
あおい ファンの方や知り合いのアイドルからは心配されましたけど、そんなに危機感はなかったですね。でも、倒産して3回目くらいのライブからお客さんが減って半分くらいになっちゃったんですよ。
帆花 前は物販や握手会でも長い列ができてたのに、それもなくなって。正直、そのあたりから私は「皆、また卒業しちゃうのかな」ってぐらい考えてました。
いちか 私は解散するのかなって気持ちもあって、でも今のプロデューサーがどうにかするのかな?って揺れてましたね。
あおい 私、そんな変わらないだろうって思ってました。倒産して、来てくれる人は減ったけど、上べだけのファンだったんだと割り切って、付いてきてくれる人を信じるしかないって。
卒業はしたいけど…やっぱり土下座!?
―倒産したことよりも、ファンが減ったことで皆、不安になってたわけだ。でも実際、事務所も決まって、しかも40社から話があったそうですね。
いちか そうなんですよ。事務所決定の会見もしたんですけど、その1週間前くらいに「決まった」ってだけ知らされてました。
れも そんなに話がきてたって知ったのは会見の時ですね。その時、土下座の影響もあったんだなって実感しました。
帆花 決まった時は、やっとファンの方を安心させてあげられるなと思って。でも、その会見でも土下座するつもりだったんですよ。というか、台本に書いてあったんです(笑)。
あおい そうそう。嫌だったから、そのまましなかったけど(笑)。
れも えっ、そうだったの!! 皆しないから、いいのかな~と思ってた。
―そんな裏事情まで(笑)。でも、もう新作のミニアルバム『海賊盤』も出るんですよね。
いちか そうなんです! だから一度でいいので手にとってみてください!(土下座) ―いやいや、今しなくていいですから!(土下座) それよりどんな曲なのか、教えてください。
あおい 『ROAD OF PIRATE』って曲は低音が響いてる感じなんですけど、歌詞やテンポが一番、海賊っぽいです。初めて黄金時代を知っても海賊アイドルなんだってわかると思います。
れも あと、『おたからげっとっと!』という曲はポップで、ライブの時にタオルを回すような乗りやすい曲です。だから、これは聞くだけじゃなくてライブでも楽しんでほしいです!
いちか 他にもお客さんと一緒に歌う『未来航海』は振り付けも簡単なので、歌詞も踊りもアルバムで覚えてライブで一緒に盛り上がってほしいですね。
―では最後に一応(笑)リーダーの帆花さん、これからの意気込みをお願いします。
帆花 いきなり荒波が来て大変でしたけど、そんなことで横転していられないので、これからも頑張って行きます! 土下座アイドルから海賊アイドルになりたいです!(笑)
―今日はありがとうございました!
(取材・文/鯨井隆正 撮影/五十嵐和博)
■黄金時代 アイドル界に“海賊ブーム”を引き起こすべく昨年6月デビュー。デビューライブでは1千人を集め話題に。2月1日(水)には1stミニアルバム『海賊盤』リリース。詳細は公式HPにて http://www.golden-age.top/