「マキバオー」シリーズが完結を迎えた漫画家・つの丸氏 「マキバオー」シリーズが完結を迎えた漫画家・つの丸氏

約10年間にわたって、週プレ本誌とWebの週プレNEWSで連載された『たいようのマキバオー』&『たいようのマキバオーW』がついに最終回を迎えた。これをもって『マキバオー』シリーズが完結となる!? その真相は...。

■最も波紋を呼んだあの場面の真意は?

―連載お疲れさまでした!

つの丸 いや~、ホント疲れたよ。連載しているときは、体のいろんなところに不調が出ていたからね。肩は痛いし腱鞘炎(けんしょうえん)だし不眠症だし常に腹痛だし...。毎週の締め切りがなくなって、やっと体調が元に戻ってきました。

―週刊連載はそれだけ過酷ということですね。

つの丸 マンガの作業がしんどすぎるんだよ! だから連載が終わった後、すぐに次の連載を始める人の意味がわからない(笑)。

―もうマキバオーは描かないそうですが...!?

つの丸 描きたいものはすべて描き切ったっていう思いがあるからね。少年誌掲載だった『みどりのマキバオー』では描けなかった部分も、いろいろ描くことができました。

―特に印象に残っているシーンを教えてください。

つの丸 まずは連載初期に、文太(ぶんた・ヒノデマキバオー)が馬房で号泣してるシーン。そもそも『たいよう...』を描き始めたきっかけが、ディープインパクトとハルウララの存在で...。勝ち続ける馬と負け続ける馬が、どちらもヒーローとして扱われる。同じ競走馬なのに「こんなにも住む世界が違うんだ!」という格差を描きたかったんです。

 『たいようのマキバオー』3巻27ページより。馬房でひとり号泣する文太。ここから勝利に向けて本当の戦いが始まった。(C)つの丸・スタジオ将軍/集英社・ぴえろ 『たいようのマキバオー』3巻27ページより。馬房でひとり号泣する文太。ここから勝利に向けて本当の戦いが始まった。(C)つの丸・スタジオ将軍/集英社・ぴえろ

―なるほど。

つの丸 負け続ける文太も人気者として扱われるけど、本当はどんな気持ちなのか。負けっぱなしでいいのか...。「負け続ける主人公」というのも、『みどり...』では描けなかったテーマのひとつです。

「泣いてスッキリしてんじゃねえよ!」

―そんな文太も、最後は凱旋門賞へ出走するまでに成長しました。

つの丸 連載開始から約10年たって、世の中の状況もだいぶ変わったよね。物語の舞台となった高知競馬は、連載開始時は赤字続きで廃止寸前の状況でした。取材に行ったときは経費削減で事務所の電気も消えてたし、レースの賞金を募金で集めていたことも。そんな苦境を乗り越えて、最近は黒字に転換。感慨深いものがありますね。

―リアリティがあるストーリーも『たいよう...』の大きな魅力です。

つの丸 リアルさといえば、ドバイで騎手が(福留)隼人から(山本)菅助(かんすけ)に乗り替わったシーンも印象深いです。

―実際の競馬でも、海外挑戦時は外国人騎手に乗り替わることが多いですからね。

つの丸 ずっと乗ってきた馬なのに、一番大事なレースで自分ではなく別の人が乗る。降ろされた側も、乗り替わった側も、それぞれ思うところはあるはず。そんな思いを抱きながらも勝利に向かって進んでいく姿を描きたかった。

 『たいようのマキバオーW』8巻128ページより。文太に菅助が乗った唯一のレース、ドバイ・ゴドルフィンマイル。見事、海外初勝利を挙げる。(C)つの丸・スタジオ将軍/集英社・ぴえろ 『たいようのマキバオーW』8巻128ページより。文太に菅助が乗った唯一のレース、ドバイ・ゴドルフィンマイル。見事、海外初勝利を挙げる。(C)つの丸・スタジオ将軍/集英社・ぴえろ

―そして、最も波紋を呼んだのがフィールオーライの死です。前作ではチュウ兵衛親分がレース中の事故の影響で亡くなっていますが...。

つの丸 チュウ兵衛のときは、ある程度狙ってた部分もありました。読者にショックを与えるという...。でも、フィールオーライの場合はもっと別の意味があるんだよね。

―と、言いますと?

つの丸 フィールの死によって、みんなが号泣するようなシーンは描いてないんです。みんなで泣いて、ひと区切りつけて次に進む...みたいな流れがどうしても受け入れられなくて。「泣いてスッキリしてんじゃねえよ!」って思っちゃう。

"死"って、そんな軽いものじゃないでしょ? 受け入れてすぐに前なんか向けない。心にあいた穴は埋めようがないけど、それでも生きていかなきゃいけない。そこに強さを感じるんです。「自分に都合よく解釈しない死」というのをここで描きたかった。

―読者にとっては、つらいエピソードです...。

つの丸 フィールの死は作品としても痛手だし、そこで離れた読者もいると思う。でも、死というものを真正面からとらえることは、この作品で一番描きたかった部分だから。そして、フィールの死を経験した文太が、そこからどう生きていくのか。それは自分が描かなきゃいけない、という思いが強くありました。

次回作の構想は!?

 『たいようのマキバオーW』3巻191ページより。凱旋門賞の前哨戦、フォワ賞での悲劇。歓声は悲鳴に変わった。(C)つの丸・スタジオ将軍/集英社・ぴえろ 『たいようのマキバオーW』3巻191ページより。凱旋門賞の前哨戦、フォワ賞での悲劇。歓声は悲鳴に変わった。(C)つの丸・スタジオ将軍/集英社・ぴえろ

―ところで、次回作の構想はあるんでしょうか。

つの丸 今はまだ考えてないけど、毎日の予定がないのは不安になるね。明日は昼にドンちゃん(愛犬)の散歩に行くだけだし(笑)。

―ハハハハ。

つの丸 ただ、映画を見ているといろいろ浮かんでくる。俺ならこうするのになあとか考えていると、マンガを描きたくなってきます。でも、あのつらい作業が待っていると思うとね...。まだ描いちゃダメだって体が拒絶反応を起こしている感じ(笑)。

でも、それだけ苦労して描くんだから、やはり自分にしか描けないものじゃないと意味がない。それが見つかったときは、自然と描かずにはいられなくなりますよ。

(取材・文/押野典史 撮影/武田敏将(C)つの丸・スタジオ将軍/集英社・ぴえろ)

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●つの丸 1970年5月27日生まれ。『モンモンモン』で連載デビュー。『みどりのマキバオー』で小学館漫画賞児童部門を受賞。2007年に『たいようのマキバオー』の連載をスタート。17年、『たいようのマキバオーW』最終回をもって『マキバオー』シリーズが完結