タイでのコミックコンでは『キン肉マン』はじめ、日本の漫画・アニメが大人気、3日間で9万7千人もの来場が!

去る4月21~23日の3日間、タイの首都バンコクで開催された一大イベント「タイランドコミックコン2017」に『キン肉マン』の作者・ゆでたまごの嶋田隆司先生が、同国の有名な玩具メーカー、KINGDOMCOME社の主賓として招待され、ステージ上での約30分のチャリティートークショー、及び先着100名を対象にしたサイン会に登場した。

「タイランドコミックコン2017」というイベントは、現地でも主に若年層を中心に盛り上がりを見せているマンガ、アニメ、ゲーム、ホビーの大型総合展示イベントで、タイ国内企業のみならず、現地に出資する日系などの海外企業も数多くブースを出展。

その観客側の熱量も常夏の国・タイの気候に負けないほどの高さで、トークショー開催当日も開場時間の午前10時半前にはすでに会場となるロイヤルパラゴンホールの入った大型ビル前には主に10代と見られる若者が長蛇の列をなして待機。

開場後のホール内外は早速、『NARUTO―ナルト―』や『東京喰種』など日本でもおなじみの作品のコスプレ姿に身を包むファンで溢(あふ)れかえった。

ゆでたまご・嶋田先生が登壇したのはその会場内に設置されたメインステージ。トークショー開始時間の12時半に、日本語も堪能なステージMCのモンさんのコールで壇上へ。集まった観客から盛大な拍手と歓声で迎えられると、まずタイへやってきた印象を問われて「ソムタム ペペ チャイマイ?(パパイヤのサラダを食べたんだけど結構辛いよね?)」と、この日のために準備してきたタイ語で答えるサプライズ。

握手会の様子。中には、ゆでたまご嶋田先生のタイ降臨を拝むファンもいた

その勢いのまま「27年ぶりに来たけど、当時よりも町が整備され見違えるほど綺麗になっていて驚きました。タイはとても大好きな国」と好印象を伝え、続けて「ここに来るまで『キン肉マン』がタイで人気と言われても半信半疑でしたが、こんなに大勢の人に温かく迎えられて不思議な気持ち。なぜこれほどタイで『キン肉マン』が人気なのかわからないし、逆に皆さんに教えてほしいくらいですけど、とにかく嬉しい!」と話すと、観客席からさらに大きな歓迎の拍手が巻き起こった。

その後は「『キン肉マン』という作品がどうやって生まれたか?」「ユニークな超人の発想はどういうところから思いつくのか?」など作品についての質問が続いた後、会場に詰めかけたファンから質問を受け付ける質疑応答タイムに。

まず、ひとり目のファンから飛び出した「新しい家庭用据え置き機のゲームを出してほしい」という要望には「日本でもファンからそういう声はたくさんいただく。今はまだ具体的な話はないが、僕も出してほしいとは思ってるので、ゲーム会社からそういう話がくるように頑張ります」と回答。

続いて「超人募集というのはタイから送っても採用されるのか?」との問いには「ゆでたまごというのは僕と中井君(ゆでたまご作画担当・中井義則先生)とのコンビだけど、超人のアイデアを送ってきてくれる読者は全員、3人目のゆでたまごだと思っています。タイからでもどんどん送ってきてほしい」と逆にファンに訴えかけた。

そして最後に、MCのモンさんから観客席へ「みんな『キン肉マン』は好きですかー!?」との問いかけに「好きーっ!」という答えが返ってきたところで、嶋田先生と観客による「チンマーイ?(本当ですか?)」「チーン!(本当!)」「チンマーイ?(本当に?)」「チーン!(本当!)」というタイ語での双方向のコール&レスポンスが成立したところでステージは終了。再び盛大な拍手が鳴り響く中、嶋田先生はステージを後にした。

サービス精神旺盛なゆで卵先生、現地語での掛け合いもあった

その後、そのまま当日、早朝の配布からすぐになくなったという整理券を入手した100名のファンに向けてのサイン会を実施。言葉の壁はあるものの先生を前にしたファンの人たちは皆、目の前で手を合わせて微笑みを見せるタイ特有の挨拶のポーズで親愛と尊敬の念を表現。嶋田先生も固い握手と記念写真撮影に応じることでファンの思いに応えるという、終始、和やかなムードでトータル約1時間半にわたる現地ファンとの交流は大盛況のまま無事終了した。

キン肉マンの面白さは万国共通!

サイン会終了後の控室にて、まだ興奮冷めやらぬ様子の嶋田先生に、今回のタイでのイベントについて印象を伺ってみると…。

「今だに信じられないんですよね。なんでみんなあんなに『キン肉マン』のことを知ってて、トークショーにもあれだけの人がわざわざ集まってくれたのか。情報として聞いてはいたんです。昨年、ユニクロとのコラボTシャツを販売したんですけど、実は世界で日本の次に売れた国はタイだったんですよ。その頃にタイでめちゃくちゃ『キン肉マン』が好きな人がいると聞いて日本で紹介されたのが、今回、僕をこのイベントに呼んでくれたKINGDOMCOME社のテイ社長だったんです。

その時に「是非、今度タイに来てほしい」と誘われて。それで「是非」とは答えたんですけど、そういう挨拶って社交辞令みたいなところもあるじゃないですか。でもテイ社長は本気だったみたいで、その後もどんどん話が進んで、今回こうしてご招待いただいたんですよね。実際に来てみて、そこまで熱心に誘っていただいた理由が初めて実感できました。

サイン会のノリも日本と変わらなくて。タイの人は礼儀正しくてシャイなんだけど、本当に好きで来てくれているというのが言葉はわからなくてもひしひしと伝わってきました。その人たちに『キン肉マン』のどういうところが好きなのか、通訳の人を介して少し聞いてみたら『バッファローマンが改心した場面がよかった』とか『アシュラマンが涙を流したシーンで一緒に泣いた』とか、日本の人と全く同じところでちゃんと感動してくれているんですよ。それがわかっただけで何か自信になりました。

面白いと思ってくれるところは、万国共通なんだなって。ひいては漫画の力を感じましたね。漫画は世界の共通言語ってよく言われますけど、それを肌で感じることのできた本当に楽しい機会でした。もっと自分の漫画を盛り上げて、また是非呼んでもらえるように頑張りたいですね!」

キン肉マンフィギュアの販売も行なわれた。クオリティーの高さにタイの人もびっくり!

もっと今以上に人気が出るはず!

今回、嶋田先生を主賓として招いたKINGDOMCOME社のテイ社長にもイベント同日に話を伺うことができた。なぜ今『キン肉マン』というコンテンツに注目し、ステージイベントとサイン会を企画したのか?

「私も実は子供の頃から『キン肉マン』が大好きで、それがいかに面白い作品であるかというのは人から聞いたとかではなく自分が一番よくわかっているつもりです。超人のキャラクターも想像できないほどユニークで、例えばベンキマンという超人がいますけど、これがただのギャグとして描かれているのではなく、ちゃんとキャラクターとしてカッコいいところで成立している。こんな作品はなかなかありません。

ストーリーも衝撃的で、12歳くらいの頃に見たラーメンマン対ウォーズマンの試合の衝撃は今なお鮮烈に記憶に残っています。それで間もなく40周年を迎える準備に入っているという話を聞きまして、是非これはタイでも盛り上げたいという思いが募り、その一環として今回、ゆでたまご先生を直接お誘いする機会に恵まれました。

しかしただ単に盛り上げるということではなく、残念ながら今のタイは漫画の海賊版が横行していてなかなか取り締まりが難しい状況です。だからまずはしっかりタイでも『キン肉マン』をさらに盛り上げる方法を考えていきたいのと同時に、売上げが確実にゆでたまご先生の利益になるような方法も整備されていくべきだと。

しかも、単に昔の漫画ということではなく、今もどんどん新作が作られていますから、そこも大きな強みだと思います。今回だけに限らず『キン肉マン』のイベントは今後こちらでどんどん企画していくつもりです。しっかり広めていけば、タイでも絶対にもっと今以上に人気が出るはずなので。そうなるようにますます頑張っていきたいと思ってます!」

現地の人々からこれだけの熱い視線と言葉を送られる『キン肉マン』。日本の“MANGA”コンテンツを代表する作品のひとつとして、その偉大さと潜在的なパワーを、異国でのリアルな反応だからこそ、改めて感じられるものが多かった今回のイベント。

来たる2019年『キン肉マン』はいよいよ連載開始から40周年を迎えるわけだが、その頃には本当にタイで日本以上の盛り上がりを見せている可能性は大だぞ!

(取材・文/山下貴弘 写真提供/KINGDOMCOME社)

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