「週プレNEWS」連載中(毎週月曜更新)の漫画『キン肉マン』(ゆでたまご作)のジャンプコミックス(以下、JC)最新巻の中から、ゆでたまご先生ご自身にお気に入りの原画を選んでご紹介いただくシリーズ企画“ゆで原画”第7回。
6月2日(金)発売の『キン肉マン』JC59巻を読む前に、ここまでのおさらいを兼ねて作者・ゆでたまごの両先生に、まずはJC58巻から思い入れの深い1枚をそれぞれ選定してもらい、理由を語ってもらった。今回は両先生による対談形式でお送りする!
―今回はお二方ご一緒にということで、ジャンケンのように「いっせーのせ!」で同時にそのページを開いていただくというのはいかがでしょうか?
嶋田隆司先生(以下、嶋田) わかりました、いいですよ。
中井義則先生(以下、中井) あ~、それはちょっと緊張しますね~。もしかしたらかぶったりしてね(笑)。
嶋田 結構、かぶることあるからなぁ~。はい、僕は選びました!
中井 ちょっと待ってくださいね。うーん、やっぱりここかなぁ…。はい、僕も選びました。
―じゃあ、開いてください。いっせーのせ!
嶋田 ハイ!…うわ、やっぱり!
中井 ほ~ら、かぶったやん!(笑)
―えー…仕込みもやらせも一切ナシなんですが、見事に同じ(笑)。両先生が開かれたページは共にラスト手前の185ページ。キン肉マンの最後のマッスル・スパークがネメシスに炸裂する直前、徐々に落下してくるシーンでした。
嶋田 いや、でもやっぱりこの巻はこうなるよ。
中井 もう、この巻はここに尽きますね。
―では、まず嶋田先生からその選定理由をお伺いできればと。
嶋田 マッスル・スパークって技は、ジャンプで描いてた頃から、それこそ『Ⅱ世』に至るまで出てきてましたけど、僕はずっと描き方、見せ方の形は決まってるモンだと思いこんでいて。それでこのシーンも、最後の技として使うというのは僕自身が原作で書いたことですけど、それはいつもの角度での見せ方を当然のように想定してたんです。
でも中井君から上がってきたネームを見ると、今まで見たことのない形だったのでビックリしました。下から見上げるというのは僕も思いついたことさえありませんでしたから。でも、それがネームの下絵の段階からしてものすごくカッコよかったんです。ああ、まだこういう描き方があったんやなぁ~って…もう何十年も描いてて今さらですけど、ちょっと感動したんですよね。
―原作では落ちてくる形までは指示されていなかった?
嶋田 はい、僕はマッスル・スパークという技を指定しただけで、そもそもいつも通りの形で描かれてくるのが当然だと思ってましたから、どういう見せ方をするかというところまでは全く考えてもいませんでした。これを見て、改めてマッスル・スパークってカッコいい技だったんだなって(笑)。
―技の流れも美しいですよね。
嶋田 そう。複合技なんですけど、この前半の“天”の形を決めたところからすでにもうカッコいいんですよ。今回は1ページを選ぶということなんで、この後半の“地”の形で降ってくるシーンを選びましたけど、もうこの“天”を決めたところから5ページほど全部、僕は好きですね。ホントに改めてキン肉マンの最強必殺技と呼ぶにふさわしい、イイ技だと思いました。
読者にも気付いてほしい!中井先生のこだわりとは…
―ではその構図を実際に考えて描かれた中井先生に理由を伺えればと。
中井 これは僕も描く前にすごく長い時間をかけて、どういう構図が一番いいか考えたんですよ。というのも、この試合が始まった頃から最後の決め技はマッスル・スパークになりそうだというのは相棒からなんとなく聞いていたので、そう考えると期間的には2ヵ月くらい、このシーンをどうしようかと考えていたことになりますね。
―そんなに前から!? では、いつもの形ではないものを…というのはずっと課題として考えられていたんですね。
中井 そうですね。それこそ休みの日もそんなこと考えて過ごしてました(笑)。
―1ページを3コマに割って徐々に大きくという、この演出も迫力があります。
中井 自然に読者の目を引きこむような見せ方をしたいとは思ってたんです。それで、じゃあアニメーションのように絵が動いている風に感じてもらいたい。漫画でそういう見せ方をするにはどうすればいいのかなぁと。
―そう言われると、この3コマはアニメの絵コンテのようにも感じられますね。
中井 そうですね。少しずつ形が変わっていく…3コマそれぞれで拡大されていくだけじゃなく、少し縦に回転もかかってて、キン肉マンの額の“肉”の字や目線、胸のあたりが徐々に見えてくるようになってるんですよ。
―わかります! 実際にこの原稿が仕上がった日の受け渡しの際に、中井先生が冗談めかして言われた言葉を覚えてますが、「この3コマ、拡大コピーじゃないですからね!」って(笑)。
中井 いやいや、僕も頑張って考えて描いたのに、もしそう思われたらイヤだなぁと思ったので(笑)。
―でも技の仕組みがこの回転でますますよくわかりました。激突の衝撃がここにくるのか、という想像が働きます。
嶋田 もうひとつ挙げると、キン肉マンの描写だけじゃなくて、ネメシス側の表情もいいですよね。彼が全てを納得して受け入れた感がここでは大事だと思ってたんですけど、その印象もバッチリ出てたのが非常によかった。
―嶋田先生的には、そこもポイントだったんですね。
嶋田 はい。格闘マンガってそこが大事で、ここまできて「ここからまだ耐えきって反撃するぞ!」っていう印象になっちゃうと台無しなんですよ。そういう風に作る場面ももちろんありますけど、もう最後感を出さないといけない場面でしたからね。特に単行本で読んだ際にはここが巻のラストになるのもわかってましたし。
中井 アロガント・スパークという大技を出した後で、その対比としてこのマッスル・スパークがそれ以上の技だというのを読者に納得してもらわないといけない場面だったというのも大事な要素でしたよね。そういう役割もあったので、この技の一連の流れだけで9ページとかなり余裕をもって描かせてもらえたのも大きかったです。助かりましたね。
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キン肉マンとネメシスの闘いの最中、次々と明かされていったキン肉王家の秘密、そしてネメシスの兄にしてキン肉マンの祖父でもある伝説の王・キン肉タツノリの偉業! 肉体同士のぶつかり合いだけでなく、両者の譲れぬ思想面での闘いとなったこの名勝負の果てに、かつて袂(たもと)を分かったキン肉族同士は「わかりあう」ことができたのか!? そしていよいよ完璧(パーフェクト)超人軍の真の指導者である超人閻魔(えんま)ことザ・マン、さらには悪魔超人軍の総帥・悪魔将軍の両巨頭も動き出す!
今回ゆでたまご先生におさらいしてもらった発売中の58巻に続く、最新『キン肉マン』59巻は6月2日(金)発売。詳細はこちらまで!→http://www.s-manga.net/book/978-4-08-881119-2.html(一部試し読みあり)
●「キン肉マン超人総選挙2017」開催中!
★次回“ゆで原画”第8回はJC『キン肉マン』60巻(2017年9月4日発売予定)の発売直前、8月末頃にお届けいたします。お楽しみに!
(取材・文/山下貴弘)