有村架純が主演を務めるNHK連続テレビ小説『ひよっこ』に出演し、注目を集めているのが松本穂香(ほのか)だ。
現在20歳の彼女は2015年に短編映画『LOTTE SWEET FILMS』の「MY NAME」でデビュー、ドラマ、映画で活躍する新進女優だ。『ひよっこ』では、全国から集団就職で上京しトランジスタラジオ工場に勤める女性たちが集まる乙女寮において、15歳・福島出身のメガネっ娘、青天目澄子(なばためすみこ)を熱演した。
その彼女が発売中の『週刊プレイボーイ』33号でグラビアに登場。朝ドラでのイメージとはかけ離れた姿を見せ、早くも話題を呼んでいる。そこで、今回の撮影の裏話から「ひよっこ」のエピソードなどを直撃インタビュー!
―今回の週プレ、なんとも可憐なグラビアですね。思わず見入ってしまいました。
松本 ありがとうございます。カメラマンの丸谷嘉長さんとは普段「ネガティブポップ」という写真連載を一緒にやっているんです。だからリラックスして撮影に臨めました。
―何かテーマのようなものはあったんですか?
松本 特にはなくて、「乙女」という言葉だけいただきました。それを頭のどこかに置きつつも、その場、その場で感じたままを表現したという感じです。
―あらかじめ「こう見せよう」みたいなことを考えずに?
松本 そうですね。作ったりはしないですね。その瞬間の気持ちが大切というか。あと、お芝居もそうですけど、本番って何が起こるかわからない、それが楽しいなと思います。
―特に気に入ってるカットはあります?
松本 最後のページですね。赤いリップを引いてるんですよ。普段しないので、なんだか自分が大人っぽく思えて。いつもと違う気持ちでした(笑)。
―それにしても『ひよっこ』の澄子役からは想像がつかない姿ですよね。役では食べるか、寝てるか、あとはずっとボーッとしてますからね(笑)。
松本 澄子と印象が違うっていうのはよく言われます。道端で「澄子だ!」みたく声をかけられることもないですし(笑)。
―今回の朝ドラはオーディションを受けて出演が決まったと聞きました。元々、彼女の役でという話だったんですか?
松本 いえ。有村(架純)さん演じるみね子と仲のいい同僚ということ以外は何も聞いてなくて。澄子はあて書き(俳優に合わせて役を書くこと)していただいたんですけど、マイペースなところは自分と似てるんで、みんなから似てるって言われました。
―福島弁丸出しなのが可愛いですけど、結構、苦労したのでは?
松本 方言は先生に細かくチェックしてもらいました。特に自分を「俺」って呼ぶのは新鮮でした(笑)。あとはいつものんびりしてるってことで、声を低くしてゆっくり喋るのも意識しました。
―すごくボーッとしてるように見えて、実は澄子って家庭が複雑なんですよね。
松本 お母さんが亡くなり、新しいお母さんが家にやってきて、兄弟は全員連れ子。そんな中で追い出されるように、東京にやって来たんですよね。
―乙女寮の同室の仲間の中でも、ひとりだけハガキ1枚もらえなくて。
松本 そう。そんなコですから、東京に来て、やっと自分の居場所ができたんですよね。だからすごく生き生きとしてるんです。普段は彼女の背景を回が進むごとにコツコツとノートに書き込み、他に友達がいたのかとか物語にない部分も考えながら人物像を作っていきました。
工場が閉鎖するシーンではみんなボロボロ泣いて…
―有村さん、佐久間由衣さん、小島藤子さんなど同世代の女優さんたちが集う乙女寮での撮影現場はどんな感じだったんですか?
松本 楽しい雰囲気でした。みんなとは相性もすごく良くて、一緒にいて心地いいんですよ。布団で寝るシーンなんて、スタンバイの時から布団に入っちゃって。ワイワイやったなんてこともあります(笑)。
―布団といえば、夜、みんながケンカする中で、澄子ひとりだけ寝てるシーンがありましたね。あれは特に印象に残りました。
松本 あの時はただ寝てるだけじゃつまらないないんで、少しだけ口を開けてたんですけど、だんだん本当に眠くなっちゃって(笑)。実は閉じたり開けたりしてるんです。
―本当に眠るとはまさにリアル澄子!(笑) 特に興味深かったのが海水浴に行くため、買ってきた水着をみんなで見せ合うシーン。みんなワンピースなのに澄子だけセパレーツの水着で、しかも紫色。「実は大胆なんだな~!」って。
松本 あのシーンでどんな水着なのか、私だけ台本に何も書いてなかったんです。リハーサルで見て、笑っちゃって。だけど「そういうコだよね」って納得しましたね。きっと澄子はみんなを楽しませる役割だって、自分でもわかってたと思うんです。オチというか…。だから自分もわざと大げさな表情をしたり、楽しみながら演じました。
あと、脚本の岡田(恵和)さんが澄子を面白がって書いてくれてることも伝わってきて。それも演じながら嬉しかったです。
―そんな風に思い入れたっぷりに演じると、役と自分が段々一体化してきたりも?
松本 そうですね。でもそれはみんなもそうで。乙女寮のコたちが働く工場が閉鎖するシーンとか、リハーサルからみんなボロボロ泣いてるんですよ。その撮影の時は、これが終わるとお別れなのがわかってましたから。ずっと一緒に頑張ってきましたし、役としての気持ちと個人としての気持ちがごっちゃになって、すごく不思議な気持ちでした。
―職を失った後、みね子から新しい仕事を譲られ、澄子が涙するところも感動的でした。
松本 あのシーンでは、みね子さんが「お姉ちゃんだからさ」って言うんです。有村さんは事務所の先輩でもあるんですけど、現場で支えてくれた優しさがその瞬間重なって。本当にみね子さんの愛が伝わってきて大泣きしましたね。あそこは特に自分と澄子の気持ちが混ざりました。
―松本さんにとって、有村さんはどんな方なんですか?
松本 偉大な先輩です。歳は4つしか違わないんですけど、実際はもっと大きく見えるというか。頼もしくて憧れます。有村さんからは「みんな澄子のことが大好きだから。自信を持っていいよ」って言ってもらえたんですけど、その言葉には励まされました。
―有村さんの言葉通り、今も澄子が好きな人は多いですよね。
松本 本当にありがたいです。ネットとか見てると、もう出ていないのに話題にしてもらっちゃって。すごく誇らしいし、嬉しいですよね。
無理していないタイプが好きです
―ちなみに、女優を本格的に目指したのは同じ朝ドラの『あまちゃん』を観たのが大きかったとか。
松本 そうです。たった15分のドラマなのに笑いあり、涙あり、感動ありと素晴らしくて。毎日、夢中になってみてました。当時、高校2年でちょうどそろそろ進路を決めなきゃいけないって時期だったんですよ。ずっと学校の演劇部に入っていたんですけど、背中を押されました。
―学校でも演劇部だったんですね! それで今の事務所に応募を?
松本 そうです。そうしたら電話がきて、東京に面接に出かけて。
―その面接では、制服で現れたとか。
松本 何を着ていいかわからなくて。それに頑張ってオシャレして、こういうコなんだって思われるより、制服のほうが興味を持ってもらえるかなって。実際、突っ込まれましたね。「なんで制服なの?」って(笑)。
―思い通りだったと。でもかなり思い切りがいいんですね。昔から目立つタイプだったんじゃないですか。
松本 いや全くです。学校にいる頃はすごく地味でした。
―内気な性格?
松本 陰か陽かでいえば、完全に陰ですね。友達はいたけど誰とでも仲良く喋れるようなタイプじゃなかったし。合うなと思えば心を開くけど、そうじゃないと閉じてしまう。周りの人によれば、話しかけないで!ってオーラが出ていたみたいです。身構えちゃうんですよね。
―自分の世界にこもっちゃうと。でもそれって言い換えれば、いるべき自分の居場所を探してたみたいなことですかね。
松本 そうかもしれませんね。大人ばかりの仕事場にいることで変わっていって。今は少しだけ自分自身のことも考えられるようになったという感じです。
―ちなみに週プレとしては、好きな男性のタイプも聞いておければと…。
松本 無理していないタイプが好きです。カッコいいかどうかはそんなに気にしていないです(笑)、地に足がついている人がいいです。あとはやっぱり尊敬できる人。
―最後に今後のことですが、朝ドラ以降、多数ドラマに出演。一気に注目が集まっていますよね…。
松本 すごく嬉しいです。毎回、役によってアプローチの仕方も変わってくるし、新しい刺激をもらっています。こないだ「ブランケットキャット」って23歳の役をやったんですけど、経験したことがない年齢だったので少し難しかったです。
―これからやってみたい役はあります?
松本 みね子さんのような等身大の女性の役をやってみたいですけど、自分では別世界の存在だと思ってたギャルみたいな役も面白そうだなと思ったりもします。バサバサのまつげつけたりとか。あと時代劇も経験してみたいです。
―枠にとらわれず、いろんな役を演じたいと。
松本 そうですね。今はとにかく一歩前に進まないといけない時期なのかなって。ちょっとずつ自分が変わっていっているのを実感しています。それがすごく楽しいです。
(取材・文/大野智己、撮影/丸谷嘉長)
■松本穂香(MATSUMOTO HONOKA) 1997年2月5日生まれ 大阪府出身 身長162㎝ 趣味・特技=演劇 ○現在、写真家・丸谷嘉長氏とのコラボワーク『Negative Pop』を継続してウェブで発表。丸谷嘉長写真事務所、彼女の最新情報を所属事務所公式サイトにてチェック。