『週刊プレイボーイ』本誌で連載中の「ライクの森」――。
報道情報番組『ユアタイム』(フジテレビ系)ではメインMCを務める人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。
今回はアニメ大好きな彼女が、注目する制作会社の作品について思い入れを語ってくれた。
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今回は、私の大好きなアニメをたくさん作っている制作会社「P.A.WORKS(以下、P.A.)」について語らせていただきます!
P.A.は、2000年代に設立された比較的新しい企業で、アニメ業界では珍しく、地方の富山県に本社を置いています。最近では、年に数本のテレビシリーズを送り出している人気制作会社です。
『Angel Beats!』や『花咲くいろは』『CANAAN』を作った会社といえば、アニメ好きの方はピンとくるんじゃないでしょうか。多くのアニメはマンガやライトノベルを原作としていますが、P.A.はオリジナル作品が多いんです。さらに、地方に実在する街を舞台にした“ご当地ものアニメ”のスペシャリスト集団でもあります。
私が大好きな作品『true tears』も、ご当地アニメのひとつで、富山県の城端(じょうはな)という田舎街を舞台にしています。私は行ったことがない街だったので、このアニメを見るまではなんの思い入れもなかったんですが…。
アニメーションで描かれるキラキラした風景や、そこで生きるキャラクターたちと同じ時間を過ごすうちに「ここに私の親友たちが住んでいるんだ」と思うくらいどっぷりハマってしまいました(笑)。
ストーリーは、地元の学校に通う高校生たちを軸にした青春もの。ひとりの男のコと複数のヒロインの恋愛関係を描いた、ドロドロの昼ドラっぽい話です。
本来、私が苦手とするジャンルなので、後から誰かに薦められていたら見ていなかったと思いますが、リアルタイムで見ているうちに主人公たちの瑞々(みずみず)しい恋愛にどんどん気持ちを持っていかれ、放送が終わったときには心が空っぽになっていました(笑)。ちなみに、私は「石動乃絵(いするぎ・のえ)」派です。
“ベタな自分”がくすぐられる
城端にも一度だけ行きましたが、ほかのP.A.の作品で何度も聖地巡礼しているアニメがあります。それが『TARI TARI』。この作品は神奈川県の江の島を舞台にしたご当地アニメで、高校生たちの青春を描いています。
ただし、テーマは恋愛ではなく「合唱」。私は、ロボットもファンタジーも出てこないリアル路線のアニメってあんまり好きではないんですが、第1話で『true tears』の主題歌を合唱された瞬間、「こ、この曲は!」と見事に釣られてしまいました(笑)。
そして、過去の記憶や友人との軋轢(あつれき)を乗り越えて、思いっきり合唱に取り組む主人公たちに、またしても持っていかれてしまいました。私の青春は、すべてこのアニメにあると言っても過言ではありません。『true tears』もそうなんですが、P.A.の作品って、それまで自分の中にはないと思っていた“ベタな自分”がくすぐられるんですよね(笑)。
このアニメを見て以来、毎年夏になると江の島を訪れるのが恒例になりました。ちゃんと自転車を借りてチェーンを直すふりをしたり、岩場から意味ありげに海を眺めたり…。って、作品を見ていない方には何を言ってるのかさっぱりだと思いますが(笑)。
とにかく、定期的に作品の舞台を訪れ、キャラクターたちと顔を合わせる(ような気になる)。これが、本当の「聖地巡礼」じゃないかな、と思っています。
●市川紗椰(いちかわ・さや) 1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、報道情報番組『ユアタイム』(フジテレビ)でメインMCを務める。なぜか、声優の花澤香菜さんと持っている服がよくかぶる