アニメ『心が叫びたがってるんだ。』や『Re:ゼロから始める異世界生活』で知られる声優の水瀬いのりさんが、8月9日に4thシングル『アイマイモコ』をリリース。今年4月に発表した1stアルバム『Innocent flower』はオリコンチャート3位を記録するなど、歌手としても成長を続ける人気声優の新曲に注目が集まっている。
『アイマイモコ』は自身がヒロイン・高野千鶴役で出演中のTVシリーズ『徒然チルドレン』のオープニングテーマ。青春の恋模様を描いた同作にふさわしく、恋する女のコの気持ちを歌い上げた甘酸っぱい楽曲に仕上がった。
今回は、そんな新曲のリリースを記念して、前後編で配信した『101年目への扉・水瀬いのりインタビュー』の特別編を公開。水瀬いのりさんの歌手としての一面にフォーカスした。“声優・水瀬いのり”はいかに歌手という仕事に向き合っているのか。キャラクターを演じる時と自身の曲を歌う時のスタンスはどう違うのか?などを本人に聞いた!
■キャラクターソングと自分の歌は違う?
―近年は声優さんが歌手としても活躍するケースが増えていますが、同じ声の仕事でも向き合い方は違いますか?
水瀬 私はしっかり線引きしています。歌い方でも、キャラクターソング(アニメのキャラとして歌う曲)と自分の曲は違いますし。キャラクターソングの収録の時は、譜面台に自分が演じたキャラクターの絵を置いたりとか、事前に自分がアフレコした台詞を聴き込んでキャラクターに近付けようとしたりとか、“演じながら歌う”ということをすごく意識しています。
―例えば、どういう工夫を?
水瀬 『ご注文はうさぎですか?』でチノという役を演じた時は、元々「~です!」とか「~しました」みたいに敬語が特徴的なキャラクターだったので、主題歌を歌わせてもらった時も語尾の言い回しは大切にしました。この「~です!」の部分で、「あ、チノだ!」とわかってもらおうって。
―同じ歌でもキャラクターソングは自分の存在感を消していく作業というか。
水瀬 声も自分の地の声と全然違いますからね。
―では、新曲の『アイマイモコ』はどちらの歌といえますか?
水瀬 『アイマイモコ』は自分として歌っています。もちろん、歌詞の内容はヒロインの高野千鶴ちゃんの気持ちを反映したもので自分のことではないですけど、表現やアプローチは自分なりのやり方で歌わせてもらいました。
目を閉じたら目の前にいるように…
―新曲を決めるに当たって、選曲の段階から関わったそうですね。
水瀬 それ、「珍しいですね」ってすごく言われるんですけど、自分としては普通だと思っていたんです。デビュー曲の時からスタッフみんなで候補の曲を聴いて、意見を言い合って決めていくというのを当たり前のようにやっていたので、珍しいことという意識はありませんでした!
―特に新人だと、「次の曲はこれです」と与えられて歌う人は多いかもしれません。
水瀬 でも、勝手に決まったら寂しいって思ってしまいます。自分の歌を聴いてもらうので、曲のコンセプトを決めるところから関わって、納得したものを届けたいなって。そういう意見の言い合いを大切にしてくれるスタッフさんと、意見を交換しあえる環境にとても心地よさを感じています。
―そんな水瀬さんが考える“歌手・水瀬いのり“のコンセプトは?
水瀬 表情や目に見える歌をすごく意識しています。音楽は耳で聴くものですけど、ライブやイベント会場で歌う時は、私の表情や動きも含めて聴いてもらっているので、それをCDでも感じてもらいたいです。
―感情を込めて歌うとか?
水瀬 言葉をしっかり伝えたいと思っています。リズムや音程を正確にとるだけじゃなく、歌詞の言い回しのニュアンスなどに気をつけて歌うようにしています。そうすることで、皆さんが目を閉じた時に、歌っている私の表情まで目の前にいるように想像してもらえるかなって。
―実際、『アイマイモコ』の反響はいかがですか?
水瀬 発売前にラジオ(「水瀬いのりMELODY FLAG」)で先行オンエアしたのですが、歌詞を抜粋しながら、「ここの歌い方が好き」や「ここがいのりちゃんらしい」などたくさん感想をいただきました。
―ちゃんとファンの方に意図が伝わったわけですね。
水瀬 はい、本当に嬉しいです。「しっかり届いているんだな」って、すごく幸せな気持ちになれました。
(取材・文/小山田裕哉 撮影/井上太郎)
■水瀬いのり(みなせ・いのり) 1995年生まれ、東京都出身。2010年にソニー・ミュージックアーティスツの「第1回アニストテレス」でグランプリを受賞後、同年にTVアニメ『世紀末オカルト学院』で声優デビュー。以降、『ご注文はうさぎですか?』のチノ役、『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のヘスティア役、『がっこうぐらし!』丈槍由紀役や劇場アニメ『心が叫びたがってるんだ。』成瀬順役などヒット作に出演。2016年には第十回声優アワード 主演女優賞を受賞。8月9日に4thシングル「アイマイモコ」をリリース。