世界最大のアイドルフェス、東京アイドルフェスティバル2017(以下、TIF)が東京・お台場で8月4日~6日の3日間にわたって開催された。
第1日目をリポートした前編記事に続き、中編では8月5日(土)の様子をお届けする!
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【8/5】
●Task have Fun[SMILE GARDEN]
結成、ライブ開始からまだ1年3ヵ月ながら、話題性、注目度は抜群。「今年は“タスク”で間違いない」――そう言うアイドルファンやアイドルライターは少なくない。そんな注目の彼女たちは、まだ中学生の3人組だ。もちろん今年TIF初参戦ながら、2日目のSMILE GARDENにトップバッターとして登場。初日の佐々木彩夏にも劣らないほどの観客が「話題の“タスク”ってどうなの?」と集まっていた。
ステージに3人で登場すると、センターの熊澤風花が思い切り手を振る。その手に絡み付いたスカートがぶわりとゆらめく。それを合図に前方のファンたちが「うぉおおお!」と声を上げた。1曲目はデビューシングル『TASK』から。ポップ&ポジティブなノリノリ曲。ファンも一緒に「ハイ! ハイ! ハイ! ハイ!」とポップ&ポジティブなノリノリでコールする。続く『いつだって君のそばで』もビシッと決まる。
MCでは、緑の芝生広がるSMILE GARDENの客に「皆さん、盛り上がり過ぎて草を食べないようにしてくださいね」という、なんだかよくわからないけれど可愛らしい女子中学生ギャグも飛び出した。そして最後はお待ちかね、5月に発表されてから多くのファンが「ヤバすぎる!」と絶賛する『3WD』へ…。力強いビートに乗せて、両腕、両足をガッツンガッツンと振り回す。ファンが叫ぶ。スカートが揺れる。細い腕に小さな力こぶが宿る。
サビ部分。頭の上で両手を「パンッ!」と叩き、そこからアイスラッガー(ウルトラマンセブンの必殺技)を跳ばすかのような、剣道の素振りにも似た振りへ。サビがくるたびに会場に溢れるファンたちが皆、頭の上で「パァン!」と柏手を打つ。そして繰り返されるアイスラッガー! その嬉しそうな顔!
曲中の「タスク、行くぜ!」のセリフを里仲菜月が「TIF、行くぜ!」と野太く言い放つ。その声に「うおおおおお!!!」と叫ぶファン。「会場がひとつになる」――安易に使われる言葉だが、まさにそれ。TIFにタスクが“突き刺さった”瞬間だった。
●原宿物語[DREAM STAGE]
原宿物語、通称“モノガ”。「美少女×ダンスボーカル×演劇」というコンセプトの彼女たちが登場すると、そこはもう「原宿物語」という舞台の上だった。『心拍1メートル』から始まったステージで、ダンスの回転速度の早さ、そして目につくビジュアルの高さ…一瞬で引き込まれた。続く『#ノイジーガール』は前身のグループ、ミレニアムガールズからの楽曲。ポップでおしゃまな原宿少女たちの世界がパァッと広がる。
3曲目も懐かしの『KISS MY GIRLS』。そしてラストはこの夏の新曲『Red Rain~啞火イ雨~』で締め。絞り出す声――必死さを身にまとった少女たち。このパフォーマンスを手に入れるためにどれだけの練習量があったのか。ただのダンスだけではない、アクロバティックな動きも目を引く。
リーダーでイメージカラー濃灰色の福本カレンが会場をアオる。他のステージに比べてフジテレビ本社前にあるDREAM STAGEは一般客が多く歩いているため、声を出すファンの数が少ない。いささか不利な場所だ。しかし彼女たちの瞳は「そんなことは関係ない。私たちには夢があるから」と、もっと先を見ているように思えた。
●CY8ER[FESTIVAL STAGE]
今回のTIFが初出場となるCY8ER(サイバー)は前身ユニット、BPM15Q(ビーピーエムいちごキュー)」から苺りなはむ(元BiS、元アキシブproject)が中心となって集まった6人組ユニット。他のメンバーも、ましろ(元DEEP GIRL)、藤城アンナ(元BELLRING少女ハート、元ICE CREAM SUICIDE)といったグループ経験のある精鋭ぞろい。そのコンセプトは“世界を騒がすサイバーテロアイドル”。最近では防護服を着込んでハグをするイベント「100円ハグ会」も話題になった。
太陽照りつけるFESTIVAL STAGEに着物をモチーフにした新衣装で登場すると、観客から「おぉ~!」と歓声が上がる。1曲目は『恋夏』からスタート。EDMに和風テイストを盛り込んだ小気味良いサウンドが会場のテンションを盛り上げる。続いて『はくちゅーむ』、『ごーしゅー』とBPM15Qから引き継いだアゲ曲で盛り上がりは最高潮に。一見、奇抜な曲ばかりだが、実はとてもノリやすく初めての人でもすぐに楽しめる魅力がある。15分という短い時間にCY8ERらしさを詰め込んだ濃密な時間だった。
●吉川友[HEAT GARAGE]
満員のHEAT GARAGEに登場した“きっか”こと吉川友(きっかわゆう)。まずは5月に発売された作詞作曲・大森靖子、アレンジ・サクライケンタの『さよなら、スタンダード』から。ふたりのこだわりと個性が混ざり合った難しい曲だが、それをたっぷり“きっか節”の自由形で歌うのが楽しい。サビの超高音を美しく歌い上げる。上手い! そう、彼女は本当に一歩一歩、時には十歩くらい成長していく。
「ソロで歌っております、吉川友、25歳でございます! 毎年出させていただいているんですけども年々、出るアイドルさんたちが増えて、フレッシュなアイドルさんがたくさんいるんですけども、その中でも皆さんの心に傷跡を残せるそんなライブをやりたいと思いますので、よろしくお願い致します!」――それにしても、吉川友はなぜ「爪痕」ではなく「傷跡」と言うのだろう。
続いて『恋愛遠慕』『アカネディスコ』で会場をかきまぜるようにアオる。最後は昔からお馴染みのナンバー『水色』で縦横無尽にタオルを振り回し、本当に会場をかきまぜまくる。曲中に「吉川友、ありとあらゆるSNSをやっておりますので、是非よろしくお願い致します!」と笑いを誘うシーンも…。
歌い切ると「若いコを応援するのもいいですが、25歳の吉川友も応援よろしくお願いします!」という言葉を残してステージを後にした。その歌唱力と、ちょいちょい笑ってしまう言動。さらにオトナの女性としての魅力も兼ね揃えた彼女からますます目が離せない!
●寺嶋由芙[FESTIVAL STAGE]
さわやかな水色のワンピースでFESTIVAL STAGEに登場した“ゆっふぃー”こと寺島由芙(ゆふ)。1曲目は往年のアイドル・早見優のリミックスカバーで『夏色のナンシー』。水色のスカートの裾と彼女のストレートヘアが曲に合わせてゆらゆらと揺れる。そこで麦わら帽を押さえる姿はまさに正統派アイドルだ。「夏が始まりました! TIF2日目、私にとっては初日ですけど、皆さん楽しんでますかー?」と問いかけると「イエーイ!」と大きな声でファンが応える。
続いて披露する新曲『私を旅行に連れてって』の紹介では「なんと、清純派ゆっふぃーにしては珍しく、水着を着たりとか」「エーッ!」「あとなんか水かかって透けてたりとか」「フゥ~!」とファンと対話するような小気味良いやりとりが続く。曲紹介の合間にも「アイス食べてるの? いいねえ」とイジれば、ゆっふぃーの水を飲む姿にファンが「かわいいよ!」と声をかける。それにまた「オタクのみんなもかわいいかはわかんないけど水飲んだほうがいいよ(笑)!」と返すなど、まるで近所のお姉さんと会話してるかのようコミュニケーション…これは推したくなる!
『私を旅行に連れてって』はどこか懐かしげなメロディ。バレエのような振り付けも印象的だった。そしてラストの1曲は『ぜんぜん』! ファンは彼女が歌う“好きなんです”という歌詞に合わせて「オレモー!」と応える。至るところで「ゆっふぃー! ゆっふぃー!」と全力で愛を叫び、熱気に包まれたままステージは幕を下ろした。アイドルファンにとって、間違いなく「幸せな空間」だったことだろう。…ちなみに翌日のSKY STAGEでは白のTシャツにインナーは白の水着という“透け”ゆっふぃーだったとか。見たかった…!
新メンバーを迎えて過去最多の6人体制で登場!
●エレクトリックリボン[FESTIVAL STAGE]
今年のエレクトリックリボン(通称エリボン)はフレッシュな新メンバーを迎えて過去最多の6人体制で登場。1曲目『アイライン』からスタート、軽快なリズムとメインボーカルerikaのしなやかな歌声が真夏のFESTIVAL STAGEに涼やかな風を吹かせる。続いてこの日、TIF会場限定で発売されたニューシングル『Fun! Fun! Fun!』。これまでのエリボンらしからぬ(?)ミディアムテンポの夏らしいアイドルソングで会場を楽しませた。この曲のMVはメンバー全員水着ということで、そちらも一見の価値あり。
最後は定番中の定番、名曲『波音チューニング』。メンバーの振りに合わせファンも大きく手を振って声援を送り、最高の盛り上がりで幕を閉じる。MCではerikaが「私、今年30になるので、たぶんTIFで最年長になると思います!」と明るく告白、会場に苦笑いが起こる。ちなみにTIFでは毎回恒例の寿司桶も持参(※erikaが自腹で買った2万円の寿司桶を持込み、納豆巻きを作るパフォーマンスなどをしている)、もしかすると寿司桶はTIFに限り、エリボン7人目のメンバーなのかも(笑)。
●欅坂46[HOT STAGE]
先日の富士急ハイランドでのワンマンライブで2万5千人を動員するなど注目度No.1の欅坂46が今年は妹分のけやき坂46(ひらがなけやき)を引き連れて登場。オープニングは欅坂メンバーによる『危なっかしい計画』から。志田愛佳(まなか)のアオりにファンがタオルをぶん回して応え、会場は一気にヒートアップ。続いて初参戦のけやき坂は1stアルバム収録曲『永遠の白線』と『誰よりも高く飛べ』を熱唱。ファンと一緒に大ジャンプ。先輩に負けないパフォーマンスでファンを沸かせた。
再び欅坂が登場すると、歌うは名曲『二人セゾン』。普段は物静かな小林由依が「お台場盛り上がれるかー!」と大きなコールで盛り上げる。そして最後はデビュー曲『サイレントマジョリティー』でビシっと締め。暑さで体調不良で万全ではないメンバーもいたが、それをカバーする各々の頑張り。やっぱり平手友梨奈だけのグループじゃない。32人全員で大きな意味を持つ夏を乗り越えてほしい!
●=LOVE[HOT STAGE]
“現役最強アイドル・指原莉乃”がプロデュースするアイドルヲタ大注目のグループがついにステージデビュー。気になる1曲目はAKB48の『言い訳Maybe』。さらに指原が所属するHKT48の『メロンジュース』、乃木坂46の『ガールズルール』と先輩たちの人気ナンバーをフレッシュにカバー。まだ4月末に誕生したばかりだが、かなりの完成度でプロデューサーの期待に応えた。
ラストは指原が作詞した初のオリジナルソング『=LOVE』を初披露。コールやMIXが入れやすく、フリコピもしやすいアイドルファン満足の1曲に仕上がっていた。初めて生で見た=LOVEだが、48グループと坂道シリーズを足して2で割ったような感じだろうか。とにかく可愛いコが多く、センター候補もゴロゴロ。9月6日にメジャーデビューということでこれから目が離せない!
●There There Theres[DOLL FACTORY]
過去のTIFで最もBONDS(警備)から警戒されたグループのひとつ、BELLRING少女ハートは今年から新体制となり改名。通称“ゼアゼア”はベルハーからの既存メンバーであるカイと有坂玲菜に新メンバーの平澤芽衣と緒倉かりんを加えた4名で現在活動中だ。
1曲目は『タナトスとマスカレード』。叙情的な雰囲気からドラマチックなメロディー、真っ赤な照明に黒い衣装のメンバーが舞う姿は幻想的ですらある。続く『low tide』も始まりは静かだが、後半になるにつれ燃え上がるような熱気に変わり、会場はヒートアップしていく。ラストはスピード感とエネルギーに満ちた名曲『rainy dance』に会場の中心部でファン同士が激しく体をぶつけ合う姿も見られた。ベルハー時代の主要メンバーが抜けた状態からのスタートだが、そのパワーは健在だった。
●この指と~まれ! TIF歌謡祭2017[HOT STAGE]
今年のTIFの見どころでもあるステージがこれだ。チェアマン・指原莉乃の冠番組『この指と~まれ!』の公開収録&歌謡祭に注目のアイドルグループが何組も登場、面白トークを繰り広げる。いつもはトークだけのこの番組だが、なんと出演グループが1曲ずつ歌うというファンにとってはたまらないステージに。
登場したのは、HKT48、大阪☆春夏秋冬、STU48、PASSPO☆、BiSH、まねきケチャ、=LOVE――人気アイドルが勢揃いし、HOT STAGEには多くのファンが集結。MCの指原莉乃、土田晃之、矢吹奈子とともに1組ずつトークを繰り広げ、「この指、東京“バッキャロー!”フェスティバル」と題したトークコーナーでは、日頃「バッキャロー!」と思っていることを叫んでいく。
その内容は「可愛いくせに自分のことブスって言うな!」「面と向かって『太った?』とか言うな!」「他のアイドルさんたちが可愛すぎるんだよ!」など、乙女心が窺い知れる“バッキャロー”もあれば、「TIFにビールサーバーが欲しい!」といった、バッキャローなのか、ただの要求かわからないものまで。会場を大いに笑わせていた。
さらに、それぞれのグループの1曲披露も素晴らしいのひと言。HKT48は『メロンジュース』、大阪☆春夏秋冬は『New Me』、STU48は『瀬戸内の声』、PASSPO☆は『少女飛行』、BiSHは『BiSH-星が瞬く夜に-』、まねきケチャは『きみわずらい』、=LOVEは『=LOVE』。まさに自分たちの持つ、一番強い曲を歌ってくれた。
素晴らしく楽しいステージだったが、ひとつ気になることも。BiSHが『BiSH-星が瞬く夜に-』を歌い終えた後、アイナ・ジ・エンドが「私たち、今日の夜、HOT STAGEでHKTさんの前なんで、会場を温めておきます」と約束していたこと。彼女たち流の温め方とは一体…。
新メンバーが加わり、新体制を組んだアイドル!
●転校少女歌劇団[DREAM STAGE]
今年1月にオーディション枠からの「新入生」として渚まお、経験者枠の「転校生」として古森結衣という新メンバー2名が加わり、新体制を組んだ転校少女歌劇団。夕方の日差しが眩しいながらも爽やかな風が吹き抜ける心地よい気候の中、まずは『恋はカムフラージュ』からスタート。曲の合間に自己紹介を挟み、初めてステージを見るお客さんへの配慮も。
続く『ときめけ☆アフタースクール!』はグループ初のラップを取り入れた楽曲。グループ名にピッタリの「学校で片思いをする女のコ」の気持ちを歌っている。ポエトリーリーディングなどを取り入れ、特徴的ながらもアイドルらしい曲調で会場を盛り上げた。特に、岡田夢以(めい)のセリフ回しには切ない気持ちがぎゅっとつまっているように感じた。
最後は、古森が在籍していたGALETTeの『じゃじゃ馬と呼ばないで』でステージを締めくくった。塩川莉世(りせ)のロングトーンが晴天のDREAM STAGEに響き渡り、メンバーの名前を呼ぶコールに応えるように松本香穂は愛嬌たっぷりの笑顔をふりまく。まだ完全体とは言い難いものの、だからこそ「今」に注目したくなるパフォーマンス。全編を通してファンの熱量がすごい。この先さらに人気を獲得していくグループになる予感がした。
●KAMOがネギをしょってくるッ!!![DREAM STAGE]
昨年のTIFには出場できず、会場でビラ配りをしていた“カモネギ”ことKAMOがネギをしょってくるッ!!!。念願の出場を果たし、まず披露したのは和風ロックテイストの『偶像リアリティー』。メンバー全員で「なっちゃうのです。」と歌い始め、イントロのアタック音が流れた瞬間、観客のテンションは一気に最高潮に。「オイッ! オイッ!!」というコールがフルボリュームで響き渡る。
最高のテンションのまま、片思いの女のコの気持ちを歌う『ダーリン♪ダーリン♪』へ。基本的には高速テンポでキュートな歌詞を歌いつつ、重いバスドラムに合わせてラップをキメるシーンも。バリエーション豊かなパフォーマンスを魅せる。ラストの『チョモチョモランマ』では、メンバーそれぞれが観客を指差し笑顔を送るが、中でもひときわ輝く表情を見せていたのが黄色い髪飾りをつけた夏目ゆりかだ。目がなくなるくらいに“くしゃっ”とした笑顔。このステージを本当に楽しんでいることが伝わってくる。
そして、一番の盛り上がりを見せたのはメンバーや観客が両手を上げて三角形を作る“チョモランマポーズ”! お台場に“山脈”と“最高の一体感”を生んだ初ステージは終始、ハイテンションのまま幕を閉じた。
●SUPER☆GiRLS[HEAT GARAGE]
TIF初年度である2010年から出場しているSUPER☆GiRLS。宮崎理奈が「ぎっしり入ってくださってありがとうございます!」と喜んだ満員のHEAT GARAGEで、まず披露したのは『赤い情熱』。曲中でセンターが阿部夢梨(ゆめり)、渡邉幸愛(こうめ)…と次々に入れ替わり、13人で行なう迫力あるフォーメーションダンスを見せる。
その後は『ごめんね。のとなりで』を力強く歌い上げ、『Rave Together!!!』『女子力←パラダイス』というスパガファン以外も盛り上がりやすい勝負曲たちを投入。数々のコールの応酬とメンバーのキラキラ輝く汗に観客は魅了され、会場は文字通り熱気を増していく。ラストの『JOY!&JOY!!』では、観客と一緒にタオルを振り回して盛り上がる。メンバー全員が下手上手と動き回り、しゃがんでステージ下の観客に近づく、ファンには嬉しいシーンも。結成7周年を迎えた貫禄あるステージングが印象的だった。
●AKB48 16期生[SMILE GARDEN]
AKB48の新世代として周囲からの期待も大きい16期生がTIFで初の本格的な野外ライブに挑戦。昼にZeppで行なわれた1回目のライブでは、AKB48のカッコイイ曲の代名詞でもある『RIVER』から始まり、その気合いを見せつけたが、このSMILE GARDENでは『フライングゲット』から『Baby!Baby!Baby!』という“夏感”の強いヒットシングルで会場を盛り上げる。
公演曲である『ずっとずっと』では、劇場ではできないタオルを使ったパフォーマンスでファンをひとつに。そして最後は大ヒットナンバー『ヘビーローテション』でステージを締め。曲によってセンターを変更し、庄司なぎさ、稲垣香織といった普段あまりセンターに立たないメンバーも起用。いろいろなメンバーにチャンスを与えるということなのだろうが、中でも目立っていたのは鈴木くるみ。小柄だが動きが大きく、かつて「手足が取れそうなほどすごすぎるダンス」で一世を風靡した西野未姫(卒業生)のようなパフォーマンス。まだ最年少の13才ということで、さらなる成長が期待できそうだ。
●アームレスリング大会Powered by TOWER RECORDS ザ・感謝祭[DOLL FACTORY]
タワーレコードが行なっているライブイベントの名物企画「アイドル腕相撲大会」がTIFにやってきた。2014年から行なわれ、チャンピオンの座には長きに渡りアップアップガールズ(仮)の森咲樹(さき)が君臨。しかし、今年の1月の大会でその絶対王者を元アイドリングで現・メンテナンスの酒井瞳が破り、現チャンピオンとなっていた。
今回、「酒井の連覇か? 森のリベンジか?」と注目されたが、予選会を勝ち上がったメンバーは9人。石田千紘(ちひろ、絶対直球女子!プレイボールズ)、榎本あやせ(Q-pitch)、齋藤里佳子(DEAR KISS)、篠原みなみ(虹色幻想曲~プリズム・ファンタジア~)、高萩千夏(アップアップガールズ(2))の5名に加え、シード枠として森咲樹、我妻(わがつま)桃実(ハコイリ♥ムスメ)、佐保明梨(アップアップガールズ(仮))、そして王者の酒井瞳。
アプガ・佐保は初戦でプレイボールズ・石田に敗退。続いてベスト4による準決勝では予選から上がってきた新鋭、アプガ2・高萩に酒井が圧勝。高萩は「ダイエットしてたのに(試合のために)体重増やしてきたのに~」と悔し涙を流した。そして初代王者のアプガ・森とハコムス・我妻の対決。前の大会で勝利している経緯もあり、森の目的はすでに打倒酒井だったのだが…まさかの我妻勝利! 本人も勝った瞬間、驚きの表情で固まり、森は「私、負けた?」と放心状態。戦いをステージ裏で応援していたハコムスメンバーが飛び出し我妻と抱き合い、勝利を祝う横で森が棒立ちで号泣! その様子を笑う酒井のヒールっぷりが憎たらしくも面白い。
決勝は会場のほぼ全ての観客が我妻に期待したものの、酒井が余裕の表情で勝利。強さの次元の違いを見せつけた。「アイドリング!!!さんのファンだったので酒井さんと濃厚接触ができたので嬉しかったです!」と我妻は笑顔だったが、酒井は「私は負けない限り鍛えることはない」と新・絶対王者をアピール。チャンピオンベルトにはあまり興味がない様子だったが賞金3万円は嬉しそうに受け取っていた。
たったふたりのオーケストラ!?
●amiinA[SMILE GARDEN]
17時。陽が傾き始めたSMILE GARDENにふたりの少女が現れた。amiinA(あみいな)はami(16歳)、miyu(15歳)のふたりからなるアイドルデュオ。そのマテリアルな透明感とBPM高めで真っ直ぐな楽曲に多くの“楽曲派”と呼ばれるアイドルファンたちが注目している。
まず1曲目は『lilla』。声が強い。一瞬で彼女たちが心に持っているものの強さと重さを感じる。跳ぶ、跳ねる、楽しそうに歌う。SMILE GARDENという広がった空間に少女たちのエネルギーがブワっと広がっていく。続く『Callin‘』はウェスタン風味にハマる綺麗なハモりと軽やかなリズム。楽しそうに跳ね回る間奏から歌い上げるふたりの笑顔にどんどん引き込まれていく。
3曲目の『signal』を歌い終わった後のMCで「今日はこの歌を歌うためにここにきました」という言葉。そこから流れる彼女たちの大事な歌『Canvas』。アコースティックギターの旋律から始まるこの曲に真夏のSMILE GARDENが震え上がる。孤高で、真っ直ぐで、偉大で…なぜか泣きそうになる。サビで「ア~アア~ア~!」と歌う彼女たちの声が風に乗った。その合唱は会場を巻き込み、まるで未来を呼んでいるようだ。
例えるなら、それは「世界少女オーケストラ」――たったふたりのオーケストラだ。…なんなんだ、この空間は!? 時間としてはたったの15分。しかし、世界に届くには充分すぎる時間だった。そう感じた。
●ヤなことそっとミュート[SMILE GARDEN]
amiinAの興奮醒めやらぬ中、登場した“ヤナミュー”こと、ヤなことそっとミュート。いつものふんわり夢の中のようなovertureが流れ、ファンは優しい手拍子でメンバーの4人を迎え入れる。しかし次の瞬間、響きわたる『morning』。低音のロック音が一瞬で空気を変えた。そこからはもう“怒涛”のひと言。『ツキノメ』『Any』とキラーな曲を暴れながら歌う、歌う、歌う! そんな彼女たちに応え、重く強いこぶしを振り上げ続けるファン。
ヤナミューにとってTIF2017最後のステージ、最後の曲の時間…「ありがとうございました! こんなに多くの方に観てもらえて嬉しかったです!」そう叫びながら始まったのは彼女たちの一番強いこぶし、『Done』。「きたー!」と叫ぶファン。再びSMILE GARDENがこぶしで埋まる。歌詞に散りばめられた夏のキーワード「金魚模様の赤い浴衣」「夏の夜」「花火」。そんな言葉と、だんだんと暮れていく夏の空に思わず胸が締め付けられる。
会場を見ると、汗なのか涙なのかわからないが目からビショビショの液体を出しているひとりのファンがいた。喜びのような、悲しみのような、よくわからない表情で顔を歪(ゆが)めていた。でも、それが幸せの表情なのだと、すぐにわかった。4人の剥き身の生き様をこんな最高のステージで観れた。そこにいた誰もがそのファンと同じ気持ちだったはずだ。
●夢みるアドレセンス[SMILE GARDEN]
赤、青、黄色、オレンジ。大人っぽいドレスに身を包んだ4人の美女が満員のSMILE GARDENに登場。全員カワイイアイドル“全カワアイドル”の先駆け、“夢アド”がまずは『アイドルレース』からスタート。リーダーの荻野可鈴(かりん)が「SMILE GARDEN、かっとばして行くぞ~!」と叫ぶ! 同時に大声でMIXを打ちまくるファンたち。
「TIF~! こんなもんじゃないだろ~!」というアオりに応え、さらにヒートアップ。「可愛いだけじゃダメですか?」とワンピースドレスで殴る彼女たちに応え、さらに燃え上がるオーディエンス。自己紹介MCでは、次に歌う『舞いジェネ!』の振り説明で「この曲はサビの振りがすごい簡単でして、みんなピースをしてその指を閉じる! そして、その手を頭の上でグルグル回して下さい!」「このみんなの姿を見ていると、大量のイワシの群れに見えるんだよね。だから今日、みんな最高のイワシになってほしい! みんな~イワシになれますか~?」
そんなよくわからないアオりにも会場は「ウォ~!」と叫ぶ。「よ~し、それじゃあイワシたち! 盛り上がって行こう!」と、その瞬間、トラブルで別の曲『ファンタスティックパレード』のイントロが流れてしまう。さらに曲中のセリフを間違えてしまうハプニングも…。
しかし、「それこそがライブ!」と、めちゃくちゃに楽しむ彼女たち。「みんなイワシになるぞ~!」と叫ぶ荻野の声に扇動されて会場でうねるイワシの大群。最後は仕切り直しの『ファンタスティックパレード』をブチ上げハイテンションで踊りまくり、3つの超盛り上げ曲を持ってきた彼女たちのお祭り騒ぎなパーティーは幕を降ろした。
●STU48[HOT STAGE]
瀬戸内を拠点に活動するSTU48の東京での初パフォーマンス。さらに兼任の指原莉乃が初めてSTU48メンバーとして出演する注目のステージ。まずは48グループのキラーチューン『会いたかった』で元気よく登場! メンバーと一緒にパフォーマンスをする指原がフレッシュに見える。だがファンへのレス、煽りなど、その実力はずば抜けている。
キャプテンの岡田奈々も若いメンバーたちを全力で鼓舞するが、存在感を見せたのは瀧野由美子。48グループには少ない長身センターで舞台映えする。まだ専用劇場もなく、パフォーマンスとしては経験不足な部分もあるSTU48だが、デビューして5ヵ月。顔つきはすっかりアイドルらしくなってきた。9月29日から瀬戸内7県を周るツアーがスタート。48グループに新たな風を吹かせてほしい。
●東京女子流[HOT STAGE]
あの東京女子流が3年ぶりにTIFに帰ってくる! 3年前に「アーティスト宣言」を行ない、「握手会などの特典会の終了」「アイドルっぽい曲の封印」「アイドルイベントへの不参加」を掲げた女子流。それ以降、特別な場合を除いてアイドルの畑に現れることはなかった。月日が流れ、様々な環境が変わり、そんな彼女たちが戻ってくる。TIFが始まる前から「東京女子流、TIF出場」のニュースを多くのアイドルファンたちが注目していた。
そして、HOT STAGE――真っ赤なワンピースに身を包んだ彼女たち。3年前からメンバーはひとり減って、4人ともオトナの女性になっていた。その注目の1曲目は『頑張って いつだって 信じてる』。まさかのアーティスト宣言時に発表された2曲のうちの1曲だった(もう1曲は『おんなじキモチ』)。アイドルの象徴のようにポンポンを振り回すこの曲を金のポンポンを振り回しながら歌った!
「本当の意味で、戻って来た!」そう思ったファンも多かったことだろう。そこからはもう夢のような時間。『Rock you!』『Limited addiction』『鼓動の秘密』『ヒマワリと星屑』と“あの頃”の女子流のフルコース! イントロが流れるたびに「うわぁ~!!」「きたーーー!!!」「ヒューー!!」と反応するファン。合間のMCを全く入れず、アーティスト宣言のことも、これまで経験した困難についてもひと言も語らない。ただ、「私たちの歌っている曲がすべて」と言っているよう、そしてファンもそれを全身で受け止めていた。
オトナになったはずの彼女たちのメイクが汗で落ち、あの頃のあどけなさが少し顔を出す。それにまたグッとくる。そしてラストは『おんなじキモチ』。爆発するような歓声と頭上に両手を広げ、右へ左へと振る懐かしいムーブ。会場全体が笑顔と涙で手を振った、女子流の帰還。これからの未来を見守りたい――そう思った。心配ない、大丈夫。彼女たちはどんな夢も叶えられるはずだから。
“アイドル好きアイドル”にもファンが多いアイドル!
●ゆるめるモ![HEAT GARAGE]
活動5年目に突入し、“アイドル好きアイドル”たちにもファンが多いゆるめるモ! 初っぱなから『逃げろ!』『うんめー』と攻めた歌詞の曲が続く。『逃げろ!』はポップで明るく、アガるメロディーでありながらも、サビでは“地獄みたい”というダークな表現があり、生きづらい思いをしている人間にグッと入り込んでくる名曲だ。曲調と歌詞のアンバランスさ、そしてメンバー4人の可愛らしいハーモニーが絶妙にマッチする。
『うんめー』もまた抗えない運命や、それに流されたくない葛藤がテーマ。ゆるめるモ!独特の一体感で会場を包み込んでいくと、MCでは「今日はゆるめるモ!の夏の曲を用意してきました。みんな飛びまくって大丈夫なんで、安心して(笑)!」と“ようなぴ”が予告し、ファンの期待をアオる。
そんな前振りで始まったのは『サマーボカン』『ミュージック3、4分で終わっちまうよね』。そして最後はサビで手を大きく左右に伸ばす振り付けでファンをアオり、屋内ながらも夏フェスらしさを存分に感じさせてくれた。この秋には5周年記念ツアーや3枚目のアルバムのリリースも決定している彼女たち。まだまだ進化を続け、さらなる飛躍を見せてくれそうだ。
●BiSH[HOT STAGE]
7月に幕張メッセでのワンマン公演を成功させたBiSHが今年もメインステージに登場。セントチヒロ・チッチの「BiSHの時間がきたぞー!」というシャウトとともに代表曲『BiSH-星が瞬く夜に-』でスタート。入場規制がかかったメインステージを一気に盛り上げていく。昨年はこの曲を2ステージ合わせて9連発(6連発+3連発)した彼女たち。今年はどうなるか…と思っていたが、やはり2曲目、3曲目と続けていく。
もはや“お家芸”ともいえるこのセットリストを突きつけられ、清掃員(BiSHファンの意)はもちろん、他のアイドルファンも一緒に踊り出した。その後も“星が瞬く夜に”ラッシュは続く。5回目にはそれまでステージを左右に駆け回っていたアイナ・ジ・エンドが足を吊らせて横たわる。普段はアイナが歌うサビをリンリンがカバーしたり、無口なアユニ・Dが会場をアオったり。いつものライブでは見られない光景がこの狂乱をさらに加速させていく。
メンバーも観客も汗にまみれ、ドロドロになりながら迎えたラスト。6回目の『BiSH-星が瞬く夜に-』――30分間暴れ続けたこの曲の大サビをメンバー全員のユニゾンで締めくくる。ムチャクチャだが、ここにいた全員に衝撃的な記憶を残させるステージだった。そう、これがBiSH流の挑戦的な「あたため方」なのだ。
●HKT48[HOT STAGE]
TIF2017のチェアマン・指原莉乃率いるHKT48が2日目のトリで登場。直前のBiSHが同じ曲を6回連続でやり続け会場を騒然とさせる中で、ステージに上ったのは1期生の宮脇咲良、兒玉遥を中心とした超選抜メンバーだ。「HKT48行くぞー!」と指原が気合いを入れ、『12秒』『初恋バタフライ』『桜、みんなで食べた』と人気曲の3連チャンで一気に畳み掛ける。
だが3曲を終えてMCを始めた指原に異変。なんと目に涙が…。最近、メンバー間でゴタゴタがあり、HKTと距離を置くようなことを匂わせていた彼女だが一緒にパフォーマンスをしたことでわかり合えたものがあったのだろうか? 後半戦は『ポニ―テールとシュシュ』(AKB48)、『ナギイチ』(NMB48)、『Everyday、カチューシャ』(AKB48)と姉妹グループのサマーソングで猛ラッシュ。
そしてラストは最強の盛り上がりソング『メロンジュース』で締め。HKT48以外のファンも一緒になり、様々な色のタオルを振り回すという光景に感動を覚え、余韻に浸っていると、指原が会場から帰ろうとしているファンに「本当に帰っていいのか?」とアンコール予告。ファンもそれに応え、大アンコール! それを受け、ファンの声出しで盛り上がる『最高かよ』をフルバージョンで披露。30分で9曲を突っ込んでくる怒涛のステージ。そして盛り上げるために、このライブとマッチしなさそうな「最新シングルをやらない」という判断。あらためて指原莉乃のプロデュース能力には恐れ入った。
◆世界最大のアイドルフェス「東京アイドルフェスティバル2017」レポ! アイドルってのは、ゴールのないマラソンなんだよ!【後編】
(取材・文/TIF大好き取材班 撮影/武田敏将・関根弘康・アオキユウ)