川村プロデューサー(左)と顔出しNGの新房監督(右)

少年少女の淡い恋愛模様を描き、岩井俊二監督の出世作となった名作『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』が、20年余の時を経てアニメ映画化!

絶賛公開中の本作は、広瀬すずら豪華声優陣が話題を集めるが、『君の名は。』を250億円超のメガヒットへ導いた川村元気のプロデュース作品であり、総監督にテレビアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』で社会現象を巻き起こした新房(しんぼう)昭之ら、そうそうたるスタッフを起用している点も注目だ。

アニメ映画のヒット作が相次ぐ今、『打ち上げ花火…』は第二の『君の名は。』となれるのか…!? 今回は、メディアが苦手な新房監督が顔出しなしの条件で登場! 川村氏との対談が実現した!!

■なずなのエロさは制作陣の努力の結晶

―なぜこのタイミングで『打ち上げ花火…』をアニメ化しようと?

川村 僕は『打ち上げ花火…』の大ファンで、いつか原作の短編作品を長編映画にしたいと思ってたんです。でもあの作品は完璧すぎて、再現するのは不可能だと勝手に諦めてました。そんなときに新房さんの『魔法少女まどか☆マギカ』などを見てそのビジュアル感覚に驚き、新房監督とならできるんじゃないかと、『打ち上げ花火…』のアニメ化の企画を(新房監督が拠点とするアニメ制作会社の)シャフトに持っていったんです。

新房 ありがたいですけど、ビックリしました。原作は実写ですから。アニメを実写化するのはよくありますが、その逆は珍しい。話をもらって改めて原作を見ながら、どういう形のものを望んでるのかと悩みました。僕としては、こういうヒロイン映画は実写で生身の人間がやったほうがいいんじゃないの?って思いましたけど(笑)。一般の人に、深夜アニメ的な美少女のイラストが受け入れられるかもわからなかったですし。

川村 いえいえ、実写でリメイクしろと言われたら僕はやらなかった。原作に対抗するには、アニメならではの演出がたくさん入った“キャラと美術の映画”にしないとダメで、それを新房さんとなら作れるのではと。それに、やっぱり奥菜恵(おきな・めぐみ)の演じたなずなを実写で再現するのは絶対無理だっていうのもありましたし。

―確かに、アニメのなずなは、原作同様、エロくてミステリアスな少女でしたね!

川村 なずなの魅力をなんとかアニメで表現しようという悪戦苦闘や愛情がアニメ制作陣からもすごく出ていて、それがあそこまでエロティックなヒロインを誕生させたんだと思います。スタッフ間で、なずなに色気を表現させることの議論はあったんですか?

新房 いや、特にはないです。僕はなずなに対してエロさは求めてなかったから(笑)。彼女に神秘性というか、“壁”は一枚欲しかったんだけど、それがエロになるとは思わなかった(笑)。

川村 (キャラクターデザインの)渡辺明夫さんはもともとすごく色気のある女のコの絵を描く方ですが、それ以上に、アニメーターとかスタッフがどんどん盛って描いて、それが結果的にエロくなりましたね(笑)。

新房 今回は、アフレコを先にするって進行で、芝居を聞きながらスタッフは絵を描いてたんです。だから、もしかしたらみんな広瀬さんの芝居に引っ張られたのかも。

川村 (脚本の) 大根仁(おおね・ひとし)さんもエロさで物語を引っ張っていくタイプですよね。やっぱり作る人が作るとこういう映画になるんですね(笑)。

◆「君の名は。」が大ヒットして焦りビビったという新房監督…。この続きは、『週刊プレイボーイ』36号(8月21日発売)にてお読みいただけます!

新房昭之(しんぼう・あきゆき)1961年生まれ。アニメ監督、演出家。2004年以降は主にシャフト作品で監督を務め、『魔法少女まどか☆マギカ』では劇場版を含め、数々の賞を獲得。そのほかの監督作品に『〈物語〉シリーズ』など

●川村元気(かわむら・げんき)1979年生まれ。映画プロデューサー、小説家。『告白』『モテキ』『バケモノの子』『君の名は。』などの映画を製作したほか、『世界から猫が消えたなら』『億男』『四月になれば彼女は』など小説も発表

(取材・文/武松佑季[A4studio] 撮影/髙橋定敬)