笑いは暴力を正当化する理由にはならない

先日、6年半にわたって担当してきた『ヒルナンデス!』の卒業を発表し、10月から『スッキリ!!』を担当する水卜麻美アナ。

バラエティ番組やイベントでは彼女の体形をいじるのが定番化していたが、最近では制作サイドからNGが出されるとも報じられている。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に独自の視点で斬り込む!

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日本テレビの水ト(みうら)麻美アナウンサーが、秋から朝の顔になると話題です。親しみやすい人柄で大人気の水トさん。番組では出演者から体形をからかわれるのが定番化しており、セクハラだと問題視する意見も。

いわゆる「イジり」ですね。愛情表現だよ、信頼関係があるんだから、と言い訳しながら相手の容姿や年齢などをけなす。失敗をしつこくからかう。「みんなが笑えればいい」と言うけど、不快に感じる人はたくさんいます。

いやがらせを正当化した上に「怒るなんて頭が固い」と断じるのは、パワハラ的発想。笑いは暴力を正当化する理由にはならないし、そもそも死ぬほどつまらなくても、上司や人気者のギャグにはみんな追従で笑ってくれるものです。気づいてよ!

なかには「自分はイジられても全然いやじゃない、むしろオイシイ!」という人もいるでしょう。でも、テレビでそれをやれば、視聴者に「どんなにひどいことをされても怒っちゃいけないんだな」というメッセージを与えてしまいます。テレビに出るってそういうこと。イジりと称したいじめは、職場にも学校にもあふれています。そのひな型は、テレビの中にあるのです。

小島慶子(こじま・けいこ)タレント、エッセイスト。薄毛や独身の男性が「いじられる」のもお約束だが、いいかげんやめたらどうですかね。まず第一に、おもしろくないし、古くさくて幼稚で、工夫がない。だからこそ、まねしやすいんでしょうね