イイネ! イイネ! イイ~~ネッ!―。
「東洋一のサウンドマシーン」ことクレイジーケンバンド(以下、CKB)が今年で結成20周年を迎えた。6月には主演映画『イイネ!イイネ!イイネ!』が公開され、話題に。今月には豪華なベスト盤を発売し、9月からは横浜を皮切りに全国ツアーを開始するという暴れっぷり!
そんなますます勢いに乗るCKBの魅力に迫るべく、リーダー・横山剣にインタビュー! アルバムやライブについてはもちろん、バンド内のコミュニケーションや、これからの展望について前編記事に続き、語ってくれた!
■楽曲は、作曲した俺よりもエラい
―今回のアルバムの衣装はテーラードスーツから一変、オリエンタル色の強いものになりましたが、これには何か新しいコンセプトが?
横山 CKBは初夏のツアーでライブハウスを回ることが多いんですが、そのときに熱中症にならないようにということで考案した、CKBなりの〝クールビズ〟ですね(笑)。で、クールビズでありながらも独自のオリエンタリズムを表現したいなということで、「それはカンフーシャツだっ!」ってなりまして(笑)。メンバーも気に入ったので全員分そろえました。
―なるほど(笑)。ライブではキマった衣装だけでなく、メンバーがコミカルな振り付けをするなどにぎやかですよね。
横山 あれはですねぇ……(笑)、ライブでたまたまやったことが恒例化したものが多いですね。僕が歌ってる後ろでメンバーが勝手に動きだしたりして。
ノリが数を増してできた例だと、テレビ台を回すやつとかね(笑)。僕はよく「イイ~ネ!」のポーズのまま新宿にあったコマ劇場の舞台のように自分でゆっくり回っていたんですが、それをドラムの廣石(ひろいし)恵一さんが不憫(ふびん)に思ったのか、突然テレビ台を買ってきて「これの上に乗ってください!」って(笑)。
で、メンバーの誰かがそれを手で回すみたいなことが恒例化して、20年間ずっとそれをやっていますね。それでもいまだに電動にならないっていう……ね(笑)。こんなトンチンカンなところも多々あるんですが、そこはひとつ魅力と感じていただければうれしいなと。
―ノリがピッタリと合った、まるで家族のような一体感が伝わってきます。同じメンバーで長続きさせる秘訣はなんでしょうか?
横山 まず、かつての横浜出身のバンドは、ライブ前に決まって殺気のようなものが漂っていました。キャロルやゴールデン・カップスのようなグループには、各々が孤独と向き合うようなストイックさがあったんですね。でも、今の時代に音楽をクリエイティブにやっていくためには、メンバー間でエゴのぶつかり合いがあってはダメ! なのでCKBは楽曲をあがめて、そこに向かって集中するというスタイルでやっています。
一番華を持たせてあげたいのは楽曲さまなので(笑)、そこに最もいい形でアウトプットすることを第一にしているんです。いわゆる“楽曲至上主義”ってやつですネ。楽曲はそれを作ったバンドリーダーよりもエラい(笑)。こうして覚悟を決めてやるというところに、音楽のダイナミズムは生まれると思うんです。
「進化はするけど、何か大切な部分は変わっていない」
―9月2日には横浜赤レンガパーク野外特設ステージで記念ライブがありますが、出演に向けて何か特別な思いはありますか?
横山 ありますねぇ。これまでも「横浜レゲエ祭」や「GREENROOM FESTIVAL」などに出演させてもらって、「最高に気分もアガるし、ここでワンマンライブをやれたらイイなぁ」という思いが強くありました。そもそも赤レンガには16歳の頃にこっそり侵入したりしてましてね……(笑)。バイクをズラーっと並べてクールスのファーストアルバムのジャケットをマネしてみたり……(笑)。えぇ~、まぁいろいろと思い出深い場所です(苦笑)。
横浜マリンタワーや古いクルマもそうですが、現役稼働してナンボという気がしますね。僕らも長年レコーディングやライブを続けてナンボと思っていますからね。赤レンガは稼働し続けることの大切さを教えてくれる場所でもあるんです。
―今からライブが楽しみです! 今回はどのようなことを意識してセットリストを組まれましたか?
横山 そうですね。今回は僕らがピザの生地みたいになって、その上にレゲエやヒップホップ界のゲストたちがトッピングのように乗っかっていくという感じです。なので、アタマからケツまでずっとCKBというなかに、いろんなワールドが展開されます。楽曲は新旧ゴチャ混ぜなんですけども、ミックステープのようにちゃんと曲と曲がなんらかのリンクをしながら進んでいって、気がついたら「全然違うところに行っちゃった!」みたいな感じでやれたらイイなと思っています。相変わらずの長丁場になると思いますネ!
―今回のライブゲストはもちろん、これまで多くのアーティストと共演されてきましたが、「新たに共演してみたい」と思う人は?
横山 ん~~とね……ハハハ。みんな死んじゃいましたね(笑)。そうですねぇ……どちらかというと新しい人たちはかなり年下ですが、勝手にライバルとして見ることでこっちは燃え上がりますんで、違ったジャンルでいたらイイな~とは思いますけどね。
―昨年は横山剣デビュー35周年、そして来年はCKBデビュー20周年と、3年連続のアニバーサリーイヤーですが、さらにCKBとして挑戦していきたいことはありますか?
横山 もちろん音楽的にはより精度が高いものを考えています。ドイツのメルセデスやポルシェみたいに「進化はするけど、何か大切な部分は変わっていない」という感じですね。それで今度はダンサーも入れて、動きでもグルーブ感を出せるようなこともやりたいなと。それが来年になるか再来年になるかはまだわからないですが、踊りのエキスパートを交えてやりたいですねぇ。
―いいですね! これからも30、40年ととどまることなく挑戦は続きますか?
横山 僕も今年で57歳になりますけどね、「エッ!? まだ20年?」みたいな感じなんですよ(笑)。なので、CKBはこれからもくたばるまで、息の続く限りやっていきますよ!!
●横山剣(よこやま・けん) 1960年生まれ、神奈川県出身。クールスRCなどのグループを経て、97年にクレイジーケンバンドを結成。リーダーとして数々の楽曲を生み出すほか、多くのアーティストにも楽曲を提供。9月2日(土)、横浜・赤レンガにて結成20周年アニバーサリーライブの後、全国ツアーが開催される。
(撮影/五十嵐和博)