クイズ番組で数々のタイトルをモノにし“京大芸人”としてお茶の間にその名を知られた、お笑いコンビ「ロザン」の宇治原史規(うじはら・ひろふみ)と、その相方として宇治原を高校時代から観察し続けてきた男・菅広文(すが・ひろふみ)。
そんな菅が、宇治原に聞いた“京大式勉強法”の中から優秀な人でなくともすぐに理解&実践できる「やさしい勉強法」を独自の目線で抜粋した、学生はもちろん、社会人にも役立つ発想法とは!?
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京大出身芸人としてクイズ番組などで活躍するお笑いコンビ「ロザン」の宇治原史規。その宇治原がバラエティで難問に見事、解答すると、すぐさま隣からドヤ顔で横に並び「どうも、ロザンです」とコメントし、他のタレントから「おまえの手柄じゃないぞ!」とツッコまれる――相方、菅広文のテッパンの自虐ボケであり、ロザンの伝統芸でもある。
“高学歴勉強ロボ”宇治原を身近で観察し続けてきた“中”学歴の菅だからこそ発見できた勉強法、そして彼が積極的に“背伸びをしない生き方”を選ぶ理由とは? そして宇治原は、菅のそうした考え方をどう思っているのか?
まずは今作『身の丈にあった勉強法』出版の経緯から菅に聞くと、宇治原からもリアクションが…。
―そもそも、なぜ「身の丈にあった」というテーマを選ばれたのですか?
菅 普段、自己啓発本とか学習ノウハウ本を読むんですけど、「これ自分にはあてはまらんしな」って思うことが多くて。「東大合格体験記」みたいな本がそうですけど、めちゃくちゃ頭のいい宇治原さんとは違う、僕らみたいな人からしたら車の免許を持っていない人に運転の仕方を教えてるみたいな、もはや憧れに近いような内容の本ばっかりに感じてしまうんです。それで、もっとその人にあう長所の伸ばし方を紹介する本を書きたいなと。
あと僕、炎上するのがイヤなんであまり言いたくないんですけど、そもそも自分の立ち位置を客観的に見れていない人って結構いると思うんです。例えば、吉本の若手芸人ばっかりが出るような『baseプレステージ』っていうライブがあったんですけど、その時、後輩に「メシ食わへん?」って誘ったら、「この後、プレステージなんすよ」って断られて。
「いやいや、俺、申し訳ないけどプレステージって知らんし。そこはシンプルに『仕事です』でええやん」と思ったんです。まぁこれ全部、宇治原さんが言ってたことなんですけどね(笑)。
宇治原 いやいや! 僕は本当に何も言っていないです。でも、僕がやってた勉強法を誰かに教えても伸びない人がいるのも事実で。「人はそれぞれ違うっていうことをもっと理解したほうがいいよ」って教えてくれるんです、この本は。
―ただ、自分がどれくらいのレベルにいるかを客観視することってなかなか難しいですよね。自分を「身の丈にあった生き方をすべき人間」と認めたくない人もいると思います。
菅 たぶんそれって、身長でいったら「まだ伸びる」って思っている人じゃないかと。でも僕は学力も身長もある程度、生まれつきで決まっているものだと思ってるんで。だから、あとは決められた条件の中でどういうふうに自分がやっていくかを考えるしかない。身長が伸びないんだったら、どういう髪型でやっていくか、どんな服を着るか、どうやって人と接していくか、みたいな、今からでも変えられることを頑張っていけばいいと思うんですよね。
―身の丈を考えて、やれることだけやったらいいと。
菅 ただ、学力の高い人たちがなんでもできるというわけでもないですよね。相方の宇治原さんみたいに京都大学を出ている人とか、東京大学を卒業している人たちって、単純に僕よりも学校の勉強ができるというだけで、言ってしまえば身長が高いくらいの違いだと思うんです。そういう人が相手だったら、別にそこで勝負しなくてもいい…だって、価値判断の基準ってそれだけじゃないですもん。
僕たちがプロ野球選手だったら話は別ですよ。今やっているポジションにすごい優秀なライバルが入るってなったら当然、意識すると思います。けど、僕ら芸人の仕事も一般的な仕事もそうじゃない。サードとショートの間のポジションを作ってしまえばそれで済むだけのことなので。後輩の芸人からも「同期が売れていてツラい」とかって相談されることがありますけど、そのたびに「同じ仕事しているだけで関係ないやん」って答えてます。
「宇治原さんと勝負する」って思わなくてよかった
―バッサリですね。そういう考え方ができるのは、菅さんの育ちも関係しているんでしょうか? 本の中にも書かれていましたが、小さい頃から誰かと自分を比べたことがなかったとか。
菅 言われてみれば、そうかもしれないです。それは親のおかげですね。姉が何をやらせてもすんなりこなす優秀な人だったんですけど、不器用な僕を姉と比べたり、僕の不出来を怒ったりしなかったんです。だから僕も素直に姉のことを応援できた。劣等感とかもなかったですし。だから、クイズ番組に出ている宇治原さんのことも素直に応援できるんです。
―なるほど。でも人と自分を比べないって、なかなか実行するのが難しいような…。
宇治原 そうですね。僕は菅さんとは正反対で、元々、人と自分を人一倍比べるタイプなんです。誰かに勝ちたいとかって気持ちを糧(かて)にして、比べることで頑張ってきました。でも仕事を始めてから、菅の考え方には何度も助けられましたし、なるほどと思わされることも多くて。
人と比べることって、自分が誰かに勝てている時はいいんですけど、負けた時のダメージがすごく大きい。「もう、おしまいだ」って心が折れることもあると思います。誰かとの勝ち負けを意識して日々生活をすることって、非常にリスキーなことなんだなと、菅さんと喋ってると気づかされますね。
―ちなみに、著書の中でロザンはお給料が折半制という話が何度も出てきました。せっかくおふたりにお越しいただいているので、なぜそうしているのかも伺えますか?
菅 家でTVを観ているだけで、宇治原さんが稼いだクイズの賞金で生きていけるからです…っていうのも少しはあるんですが、本当はもうちょっと考えてて。今は老体なんで、宇治原さんもクイズ番組であまり優勝しないですけど、昔はたくさん優勝しちゃって。そしたら「芸人のくせにクイズか」って少なからず反感を買うと思ったんです。それだといつかクイズ番組に出にくくなる。
でも賞金を折半しているってなったら、世間的には僕のほうが悪いやつになるんでやりやすいと思うし、ロザンというコンビにとってもそっちのほうが長期的に見たらいいかなと。他にそういうことをしているコンビもいなかったから、面白いかなと思ったのもありますけど。
逆に僕が本を出す時も宇治原さんに原稿のチェックをしてもらったんですけど、折半制だからそういうことも頼みやすい。他のコンビだったら、相方に自分の作ったものに直しを入れられたら多少は「なんやねん」ってなる人が多いでしょうけど、折半にしてるから何か言われても「あえてここで変なこと言わんやろな」って素直に聞ける。直すほうもやりやすいと思いますし。
宇治原 僕も心おきなくクイズ番組に出れてるんですよね、菅が折半制にしてくれたおかげで。性格的にひとりでクイズ番組にたくさん出ていたら、僕が気まずく感じるだろうなってわかってたんだと思います。
菅 僕が書いた本の取材をされる時も、折半制だと宇治原のこと誘いやすいですしね。「宇治原さんも僕の本から給料もらってるんやから」って。ふたりでインタビューを受けたほうが面白い話も出てくるだろうし、そっちのほうがロザンにとってはいいことがあるかなと。
―いいものを作るためには効率的なんですね。
菅 それに折半制だって「身の丈にあった生き方」から生まれてるんですよ。実はクイズ番組で先に優勝したのって、宇治原さんじゃなくて僕なんです。そこで莫大な賞金を手にした一瞬、舞い上がりはしたんですけど、「身の丈を知れ!」って自分に言い聞かせて踏みとどまったんです。それで折半制の話を持ちかけて。
だって、向こうのほうが頭いいから、長期的に見たらクイズ番組とかでお金を稼ぐのは宇治原さんだし(笑)。そこで、自分の実力を測り違えて「勝負する」って思わなくてよかった。その結果、今、他人がクイズで稼いだ金でご飯を食べられてますから。
(撮影/五十嵐和博)
●菅広文(すが・ひろふみ) 1976年10月29日生まれ、大阪府高石市出身。大阪府立大学経済学部中退。96年8月、高校時代の友人である宇治原と「ロザン」を結成。著書に、宇治原の勉強法やふたりが芸人になるまでを描いた小説『京大芸人』(幻冬舎よしもと文庫)、『京大少年』(講談社)のほか、現代までの日本史を笑いながら学べる『京大芸人式日本史』(幻冬舎)などがあり、累計約30万部を売り上げている
●宇治原史規(うじはら・ひろふみ) 1976年04月20日生まれ、大阪府四条畷市出身。京都大学法学部卒業。「ロザン」のツッコミ担当。幅広い分野の知識、雑学に精通しており、“高性能勉強ロボ”と呼ばれる。数々のクイズ番組に出演し、活躍。相方である菅広文の著書で、現代までの日本史を笑いながら学べる『京大芸人式日本史』(幻冬舎)や、『身の丈にあった勉強法』(幻冬舎)などは、いずれも宇治原の勉強法を参考にして執筆したもの
■『身の丈にあった勉強法』(幻冬舎 1300円+税) クイズ番組で数々のタイトルをモノにし、“京大芸人”としてお茶の間にその名をとどろかせてきたお笑いコンビ「ロザン」の宇治原史規。そしてロザンの相方として宇治原を高校時代から観察し続けてきた男・菅広文。そんな菅が宇治原に聞いた“京大式勉強法”の中から優秀な人でなくともすぐに理解&実践できる「やさしい勉強法」を独自の目線で抜粋。学生はもちろん、社会人にも役立つ発想法とは!?