乃木坂46の“作曲家Wセンター”ともいわれる杉山勝彦&Akira Sunset(アキラ・サンセット)の対談が実現! 楽曲の作り方や、聴きどころについてたっぷり語ってもらった!
■コンペ形式で楽曲は選ばれます
―まず、乃木坂46の楽曲ができるまでの流れを教えてください!
アキラ 多くの場合、実は作曲家個人に発注が来るわけではなくて、大勢の作曲家たちから楽曲を募るコンペ形式をとっているんですよ。タイアップやリリースの時期に合わせた「テーマ」をもらって作るのが基本ですが、そのテーマに沿ったからといって簡単に採用されるわけではないので……そこが難しいところです(笑)。
杉山 でも、コンペ形式を取っているからこそ、作曲家のネームバリューではなく「そのときのそのアーティストに合った楽曲」が採用されるんですよ。ある意味、誰にでもチャンスがありますね。
―杉山さんやアキラさんだからといって、すんなり採用されるわけではないんですね。
アキラ 曲が選ばれたら、そのまま歌入れなどに進んでいくんですが、もちろん、必要に応じて曲を部分的に修正する場合もあります。例えば『気づいたら片想い』のAメロは、もともとメロディがわかりやすいラップ調の曲だったんですよ。でも、何度か修正が入って……もっとメロディをなくしたラップにしてみたり、ごく普通のAメロにしてみたりと、何度か試行錯誤をした覚えがあります。その結果、今の昭和歌謡的なAメロが出来上がりました。
―今の曲調になるまでに、そんな苦労があったなんて!
■乃木坂46の歌声は合唱のポップス版
―おふたりが乃木坂に楽曲提供するときは、どんなことを意識しているんですか?
杉山 僕は彼女たちが持つ「音色の清純さ」が一番の特徴だと思っていて、その“乃木坂らしさ”は常に意識するようにしていますね。
―「清純さ」は今や、乃木坂46の代名詞ですもんね。
杉山 数年前のアイドル楽曲といえば、AKB48の『ヘビーローテション』や『フライングゲット』のように、アッパーで分厚いサウンドが主流でした。でも、分厚い音にAKB48の歌声がハマるのは、彼女たちの声がノリノリで元気な印象だからで、乃木坂46の清楚な声にはなかなかハマらないんですよ。それに気がついて、できるだけ楽器編成を減らしたシンプルな構成で作ったのが『君の名は希望』でしたね。
「合唱のポップス版」みたいな表現
―「楽器編成の少なさ」が“乃木坂らしさ”にもつながった、と。
杉山 そうです。彼女たちの歌声は、誰かひとりだけが主張することなく、全員で束になって優しい印象を与えてくれる……「合唱のポップス版」みたいな表現がわかりやすいですかね。このフラットで素直な雰囲気が、秋元康さんが書く「ストーリー仕立ての歌詞」にすごく向いていると思います。
アキラ それを確立したのが『君の名は希望』で、そういう意味では“乃木坂らしさ”をつくったのは、杉山さん楽曲なんですよね。
―その“乃木坂らしさ”をアキラさんも意識しているんですか?
アキラ もちろん僕も意識しています。ただ、正直「乃木坂らしい楽曲を作っても、杉山さんやほかの作曲家には勝てない」と思っていて(笑)。「それなら僕は、その“乃木坂らしさ”からあえて外れたところで戦おう」と思って作ったのが『ダンケシェーン』や『そんなバカな…』でした。リリースされたばかりの頃は、全然ファンにも受け入れられなかったですけど(笑)。
杉山 でも、今ではライブに欠かせない曲になってるじゃないですか。“乃木坂らしさ”という固定概念にとらわれすぎず、盛り上がる曲を作っているアキラさんのこと、尊敬しています。
★後編⇒乃木坂46最新表題曲&屈指の名曲の作曲家が好きな楽曲を選び合う 「リリースされた後に“育つ”ことが多いんです」
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(取材・文/内田静穂[Short cut] 撮影/武田敏将)
●杉山勝彦(すぎやま・かつひこ) 1982年1月19日生まれ、埼玉県出身。作詞・作曲・編曲家として嵐、AKB48、欅坂46、私立恵比寿中学、家入レオらにも楽曲を提供。ユニット「TANEBI」では自らもアーティスト活動を行なっている 【作曲】*=共作曲 2012年『制服のマネキン』 2013年『君の名は希望』『サイコキネシスの可能性』(*)『私のために 誰かのために』 2015年『僕がいる場所』『ひとりよがり』『羽根の記憶』 2016年『きっかけ』『サヨナラの意味』 2017年『硬い殻のように抱きしめたい』
●Akira Sunset(アキラ・サンセット) 1月19日生まれ。ユニット「Safarii」でデビューの後、「波乗り作詞作曲家」として活動。NMB48や欅坂46、郷ひろみらに楽曲提供を行なう。現在は「HighsidE」「THE SIGNALIGHTS」としてもアーティスト活動をしている 【作曲】 2012年『狼に口笛を』『海流の島よ』 2013年『そんなバカな…』 2014年『気づいたら片想い』『ダンケシェーン』(*)『私、起きる。』(*) 2015年『君は僕と会わない方がよかったのかな』(*)『無表情』『別れ際、もっと好きになる』(*)『今、話したい誰かがいる』(*)『ポピパッパパー』(*)『隙間』(*) 2016年『ハルジオンが咲く頃』(*)『オフショアガール』(*)『2度目のキスから』(*) 2017年『いつかできるから今日できる』(*)