女性はもちろん、今は男性も子供の預け先に悩んでいます。

今年10月スタート予定のNHK連続テレビ小説『まんぷく』のヒロインに、昨年第1子を出産したばかりの女優・安藤サクラが起用される。NHKは育児をしながらの出演を「全面サポート」するよう現場に要請。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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「朝ドラは憧れだったけど子供も産んでおばちゃんだし、もう考えてなかった」

今年10月スタート予定のNHK連続テレビ小説『まんぷく』のヒロインに決まった安藤サクラさんの言葉です。まだ31歳なのに、そんなこと思わなくちゃならないなんて!

確かに朝ドラといえば、若くて頑張り屋さんでおっちょこちょいな美少女の成長物語というイメージ。でも、もっといろんな主人公がいていいですよね。

安藤さんは昨年出産したばかり。これまで、赤ちゃんを育てながら朝ドラのヒロインを演じた役者さんはいないというのですから、今回のオファーは画期的だったんですね。初めは育児との両立は無理だと諦めていた安藤さんは、家族の後押しを受けて出演を決意したそうです。

まだ31歳の女性が年齢を負い目に感じなくちゃならないなんておかしいし、同じ役者という仕事を選んでも、男性なら子供を理由に役を諦めなくてもいいのに女性はこんなに悩まなくちゃならない。きっと多くの女性が涙をのんできたことでしょう。

ドラマを制作するNHK大阪放送局では、安藤さんのために託児所の手配や局内にキッズコーナーの設置を計画しているとのこと。安藤さんも、スタッフが「みんなで育てましょう」と言ってくれたから決断できたと語っています。

そんな折、今年4月にTBSテレビと博報堂、博報堂DYメディアパートナーズの3社が合同で事業所内保育所を設立するという画期的なニュースが! もちろん民放キー局では初めてのことで、地域住民にも開放された施設にするそうです。

声を大にして言いたいです。

どうか、すべての放送局に常設の託児所をつくってください。放送局では、社員や関連会社スタッフや出演者など何千人もの人が働いています。その中には子育て中の人もたくさんいます。出産を機に泣く泣く辞めたヘアメイクさんを何人も見てきました。

女性はもちろん、今は男性も子供の預け先に悩んでいます。早朝や深夜の放送もあるし、ドラマのロケでは長期の出張や休日出勤もあるのが放送局の仕事。子育てとキャリアを両立しやすい制度が整っている正社員はごく少数で、現場の大部分の人は関連会社の社員やフリーランスや非正規雇用の人たちです。放送に携わる人たちみんなが、安藤さんのように「子供を産んでも仕事が続けられる」と思えるようにしてほしいです。番組観覧に来る人だって、託児サービスがあれば助かりますし。

最近は放送業界に優秀な人材が集まらないと嘆く声も聞きますが、安心して働ける環境づくりが急務でしょう。放送局社員だけでなく、放送業界で働くいろいろな立場の人が仕事と家庭を両立できるように、制度や慣行が変わっていきますように!

小島慶子(こじま・けいこ) タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など。