片っ端からこき下ろして説教して叩いて回るのは、単なるいじめのエンタメ化。

"キョンキョン"こと小泉今日子が俳優の豊原功補との不倫関係を公表。「キョンキョンらしい」と好意的にとらえるコメンテーターが多数いるなか、「不倫は不倫」と、そうした見方に疑問を呈する声も散見される。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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不倫と整形は、どっちに転んでも叩かれるもの。

往年のアイドルが人並みに年を重ねれば「劣化した」とこき下ろされ、リフトアップを公言すれば「痛い!」と叩かれ、実に理不尽です。不倫も暴かれれば人でなしと罵(ののし)られ、自ら明かせば恥知らずと総スカンで、どっちも地獄。

そもそも不倫なんかするな!とお怒りの方々も多いようですが、そういう皆さまは瀬戸内寂聴さんの「恋は雷に打たれるようなもの。避けることはできない宿命です」というお言葉をどう聞くのでしょうか。山尾志桜里さんの一件のときにも寂聴さん、そう仰っていましたね。ちなみに寂聴さんは夫の教え子と恋に落ちて、子供を捨てて家を出ています。

同じやじ馬でも、他人の恋愛模様やもめ事を眺めて人間の割り切れなさを面白がるのならわかります。あー、浅ましいねえ、情けないねえ、ままならないねえとか言いながら。でも、片っ端からこき下ろして説教して叩いて回るのは、単なるいじめのエンタメ化。自分の恋人や家族でもないのに、何をいきり立っているのかな。

小泉今日子さんが大手芸能事務所から独立して、既婚者である俳優の豊原功補さんと恋愛関係にあることを発表しました。豊原さんとは小泉さんの個人事務所「明後日」で一緒に舞台を手がけたりと、ビジネスのパートナーでもあるようですね。

これからのエンターテインメント業界のあり方についてなど、仕事の面でも志を同じくするというふたり。どうにものっぴきならない関係が、いずれ明るみに出るのなら、のっぴきならないままに公にしようという判断だったようです。当人たちにとってはそうするしか方法がなかったのでしょう。

ノーカット版の豊原さんの会見を見ました。30分間、家族の代弁も小泉さんの代弁もせず、勝手な臆測を最小限に止めようとする様子が窺(うかが)えました。歯切れが悪いという批判もあるようですが、実際、妻子と恋人との間でにっちもさっちもいかないのでしょうから、率直だったともいえます。

あの記者会見で、小泉さんとはもう会いません!と言っても、妻と別れます!と宣言しても、どのみち批判されただろうし、だったらあるがままの身勝手で煮え切らない男を晒(さら)すしかなかったのでは。家族との間にはいろいろあるでしょうけれど他人には窺い知れないし、世間に謝ることでもありません。

小泉さんは52歳の大人の女性。役者としてこの先どう生きるかを考えた末での独立と交際宣言だったようです。夫の愛人だったら許せないけど、友達だったら肩を抱くかも。説教エンタメに飽きてきたら、ロールプレイで楽しむといいかもしれませんね。怒ってばかりでは体に悪いですから。

小島慶子(こじま・けいこ) タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など。