パスネット完全終了を期に、家の中に保管していたものや友人が持っているパスネットを集めたら、けっこうな枚数になりました

『週刊プレイボーイ』本誌で連載中の「ライクの森」――。

人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。

今回は、かつて関東の鉄道会社で使われていたプリペイドカード「パスネット」にまつわる思い出を語ってくれた。

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皆さんは、パスネットの存在を覚えていますか? 関東の複数の鉄道会社が発行していた共通プリペイドカードです。電車の乗降時にこのパスネットを改札機に通すと、勝手に運賃が引かれるという仕組みでした。関西でも、「スルッとKANSAI」という名称で同じようなカードが発行されていましたね。

このパスネット、実はすごく短命だったんです。2000年に運用が開始され、08年1月には販売終了。同年3月に改札機での使用が終了します。使い切れなかった分の払い戻しも、この18年1月末についに終了しました。

使えなくなってからもうずいぶんたつので、すっかり忘れてしまった方も多いと思うんですが、私にとっては思い出深い存在です。なぜなら、私が日本にやって来た01年当時は、パスネットを持っているのが当たり前になっていたからです。これ1枚あれば、どの路線に乗るときも切符を買う必要がないなんて、画期的でした!

最大手のJR東日本が加入していなかったのは残念ですが…。あんな薄っぺらい磁気カードで、あの私鉄もこの地下鉄も乗れる、まさに夢のようなアイテムだと思いました。

パスネットのすてきなところはほかにもあります。これを改札機に通すと、なんと、裏面に乗降車駅が印字される仕組みになっていたんです! 鉄道好きとしては、自分が乗ったり降りたりした駅名の記録を眺めるだけでワクワクしたものです。それに比べ、どの駅で乗ってどの駅で降りたのか見えない仕組みになっているSuicaには、闇さえ感じます…! すみません、言いすぎました(笑)。

パスネットはいろんな絵柄のものが販売されていて、オーソドックスなところでは路線図が印刷されたものがありました。名刺大の小さなパスネットに膨大な路線情報が詰まっているなんて、とても素晴らしいですよね。

この表面を眺めても楽しいし、裏面は行動記録代わりになるし、そもそもキャッシュレスで小銭を出す必要がない。まさに“最強”でした。

そんなパスネット信者の私ですが、実は恥ずかしいお話がひとつ。パスネットって、そのまま改札機に入れられるところが便利なんですが、パスネットを使い始めてしばらくの間、私は毎回パスネットを券売機に入れて切符を買ってたんです。

それって、普通に切符を買ってるのと同じですよね(苦笑)。それでも、財布から小銭を出す必要がないので、「プリペイドカードって便利だな」と思ってたんですが、私の行動を見た友人から指摘されて恥ずかしい思いをしたことを覚えています。

ちなみに、私の今の夢は、完全にキャッシュレスな生活を送ること。今、iPhoneで電子マネーやクレジットカードの決済ができる「Apple Pay」というサービスがすごく気になっているんですが…。

どうすればApple Payが使えるのか、週プレの担当編集の方に聞いたところ、「市川さんのiPhoneは古いのでApple Payに対応していません」とのこと…。いつになれば、私は夢のキャッシュレス生活を送れるんでしょうか?

●市川紗椰(いちかわ・さや)1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、毎週土曜21時からオンエア中のJ-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』でナビゲーターを務めている。「スルッとKANSAI」は、現在も辛うじて一部の鉄道会社の路線では使うことができる