宮下かな子は本広克行監督が発掘し、成長を見守ってきた女優のひとりだ

日本を代表する映画監督のひとり、本広克行。『踊る大捜査線』シリーズなど数々のヒット作で知られるが、ムロツヨシをはじめとする名優たちをいち早く見いだした“発掘師”の一面も持つ。

実は、『週刊プレイボーイ』14号(3月19日発売)のグラビアに登場した宮下かな子も本広氏が発掘し、その成長を見守ってきたひとり。今回、週プレ誌上でふたりの特別対談が実現! 迷える新人女優・宮下かな子は、大監督からいかなるアドバイスを授かるのか?

■グラビアをやって芝居が楽しくなった

本広 (『週刊プレイボーイ』14号の宮下のグラビアを見ながら)お、いいねぇ。3年前に初めて会ったときとは顔つきが全然違うね。

宮下 初めて本広さんとご一緒した『転校生』(2015年に上演された本広演出の舞台)のときは、パンフレットの写真が「おかめ納豆」のイラストにそっくりで、みんなに笑われました(笑)。

本広 ほんとにそっくりだったな(笑)。舞台が終わってからも、キャストのことはみんな気にかけてたんだけど、かな子はこうやってグラビアにも挑戦したり、頑張って活動してるからホッとしてる。

宮下 グラビアは週プレさんで初めてやらせていただいたんですけど、グラビアをやってからお芝居も楽しくなったんです。それまでは「私、女優に向いてないのかな」って思ってたから。

本広 そうなの? グラビアで何が変わった?

宮下 グラビアって、私ひとりのためにスタッフさんが一生懸命に動いてくれるじゃないですか。そのなかで自分に何ができるんだろうって考えるようになって。そしたら仕事に対する責任感がすごく強くなったんです。

本広 へぇー。

宮下 あと、撮影中に気持ちがグッと変わる瞬間があって…“レンズの先が見える”っていうか。

本広 お、どういうこと?

宮下 うまく言えないんですけど、周りのものが見えなくなって、気持ちがフワッとなる瞬間があるんです。

本広 “ゾーン”に入ってるんだね。ものすごく集中してるんだ。

宮下 はい。でも、まだお芝居ではその状態に入れたことがないから、今までやってきた仕事に申し訳ないって思います(苦笑)。

本広 じゃあ、その感覚を忘れないうちにグラビアも芝居もやらなきゃね(笑)。

まずはキャストの胸や脚から見る

■まずはキャストの胸や脚から見る

宮下 私は『転校生』で初めて本格的にお芝居をさせてもらったんですけど、オーディションのときの私のことって覚えてますか?

本広 覚えてる、覚えてる。まず気になったのが、書類に書いてあるスリーサイズより、実物のかな子の胸がずいぶん小さく見えたこと。「あれ? サイズを盛ってるのかな?」って(笑)。

宮下 あの頃、ずっとさらしを巻いてたんですよ。胸が大きいのがイヤだったし、そのときの事務所からも「胸を強調するな」って言われてたので。

本広 後でそれを聞いて納得した。

宮下 でも、そんなところを見てたんですか?

本広 そりゃ見るよ。『転校生』は21人も女のコのキャストがいたから、巨乳と貧乳のバランスを取らなきゃいけない。観客も、男の人って意外と「おっぱい大きいなぁ」「脚がきれいだな」っていうところをまずは見るから。それが本質。

宮下 本広さんの稽古で印象的だったのは「かな子はとりあえず大きい声を出して。それだけでいいから」ってひたすら言われたこと。キャスト仲間にも手伝ってもらって、発声の特訓をしたんですよね。

本広 うん。普通だったら、あれだけ声が小さいとオーディションの段階で落とされてると思うよ(笑)。

宮下 でも、本広さんはすごく優しくて、私が演技のことで悩んでると「あなたはムードがあるんだから、大きな声で堂々とセリフを言いなさい」っておっしゃってくれました。

本広 だって、そこで怒ったら新人は潰れちゃうじゃん。俺は嫌われたくないから、いいところをなんとか見つけて褒(ほ)めて伸ばしてるの(笑)。

宮下 あ、褒められて伸びるタイプです、私(笑)。

本広 あの作品では、少し稽古をやった後に配役を決めたんだけど、面白かったのはかな子が自分で主役に立候補したこと。

宮下 違うんです! いくつかセリフを読んだとき、主役のところで本広さんが立ち上がって、私の近くに来てくれたことがすごくうれしかったから…。

本広 声が小さいから近くに寄ったんだよ(笑)。

宮下 ですよね(笑)。でも、私のことを気にかけてくれてるんだと思っちゃって、思い切って立候補したんです。

本広 誰よりもド新人だったのにな(笑)。でも、かな子には独特の品があるから、頑張れば鈴木京香さんみたいな女優になれるかもしれない。

宮下 えっ、うれしい。

本広 学級委員や生徒会をやるような優等生の雰囲気がある。実際に優等生だったみたいだし。そういうコって、ちゃんとした会社に入って幸せな家庭を築くから、芝居の世界なんかには入ってこないんだよ。この業界では珍しいタイプ。俺の中では、その代表格が鈴木京香さんなの。

宮下 なるほど。

本広 そういうコも業界にいるうちにだんだん染まっていっちゃうんだけど、かな子はホント変わらないねぇ。そこがいいところだと思う。

バラエティ力だけだったムロツヨシ

■バラエティ力だけだったムロツヨシ

宮下 映像で本格的な演技をするのも、今回の『曇天に笑う』が初めてでした。本広さんの演出って、あんまり口出しせずに役者に任せてくれますよね。

本広 うん。最近は特にフリーな感じで役者さんに演技してもらうほうが面白い。そこでうまい役者は10パターンくらい出せるけど、かな子はまだ2、3パターンだな。

宮下 はい。次はもっとパターンを作っていけるように頑張ります。

本広 あら、殊勝なこと言ってどうしたの(笑)。でも、そこは経験値だから、だんだんうまくなっていくと思うよ。ちなみに今回の現場はどうだった?

宮下 死ぬほど緊張しました(苦笑)。汗も止まらなくて。たくさんのスタッフさんが動くなか、そうそうたるキャストの方に囲まれ…その環境に圧倒されてしまったんです。

本広 そうか。映画の出来はどうだった?

宮下 やっぱりアクションが面白かったです。あと、主人公たちの兄弟愛がいいなって思って…感動しました。

本広 相変わらずまっとうなことしか言わないなぁ(笑)。こういうときに面白いことを言えるようにならないと、オーディションも通んないよ?

宮下 なんか、言葉が出てこないんです。ボキャブラリーがないなって思います。

本広 かな子は本もよく読んでるし、語彙(ごい)力がないわけじゃないと思う。訓練すればだんだん言葉を紡げるようになるよ。俺は、これからの時代の役者に必要なのはバラエティ力だと思ってるから。

宮下 バラエティ力?

本広 うん。いい芝居ができるのは当たり前。その上で使ってもらえて、かつ舞台挨拶でスポーツ紙の見出しになることを言うためにはバラエティ力が絶対に必要。こないだ、綾瀬はるかさんがコカ・コーラのPRイベントでスケートをやって、壁にぶつかってたじゃない。

宮下 はい(笑)。

本広 ああいうことがあれば、メディアが喜々として取り上げてくれるんだよ。まあ、ムロツヨシなんかは最初の頃、バラエティ力ばっかりで演技力が全然追いついてなかったけどね(笑)。

宮下 どうすればバラエティ力が身につきますか?

本広 その優等生の堅さを崩せる“緩み”を持つことだと思う。緩みっていうのは余裕がないと持てないから、やっぱり経験値が必要なんじゃないかな。

宮下 はい、これからいろんな経験を経て変わっていきたいなって思います。

本広 優等生だなぁ(笑)。

『週刊プレイボーイ』14号(3月19日発売)では、宮下かな子の水着グラビア8Pを掲載!

(取材・文/西中賢治 撮影/佐藤裕之)

宮下かな子(MIYASHITA KANAKO)1995年7月14日生まれ。2015年、倍率70倍のオーディションを突破し、舞台『転校生』に出演。3月21日公開予定の映画『曇天に笑う』に出演。目指す女優は原節子

本広克行(MOTOHIRO KATSUYUKI)1965年7月13日生まれ。映画専門学校を卒業後、テレビの世界へ。『踊る大捜査線』シリーズを空前のヒットに導く。故郷・香川県で「さぬき映画祭」ディレクターを務める

■映画『曇天に笑う』宮下かな子が出演する映画『曇天に笑う』。監督・本広克行×主演・福士蒼汰×主題歌・サカナクション! 泣いて、笑って、胸熱くなる! 男たちがぶつかり合う、今世紀最大のド派手アクションスーパーエンターテインメント! 3月21日(水・祝)全国公開予定