お店の常連たちや芸能人の似顔絵を描き、個展を開いた坂本ちゃん

2000年から『進ぬ!電波少年』の企画「電波少年的東大一直線」に出演し、人気タレントとなった坂本ちゃんが、本人の誕生日である4月2日(月)から15日(日)まで東京・神楽坂で「自宅で開催! 坂本ちゃん個展 新宿ゴールデン街の出会い+α」を開催している。

現在、週に一度、新宿ゴールデン街にあるシャンソンバー「ソワレ」で働く坂本ちゃん。この1年、来客の似顔絵を230枚以上、描き続けてきた。そして、先日まで住んでいた自宅の取り壊しが決まったことを機に、そこで絵画展を開くというのだ。

絶頂期に比べれてしまえば露出が減った坂本ちゃん。インタビュー前編では厳しい言葉を投げかけられた日々や絵を描き始めたきっかけなど話してもらったが、後編では個展開催の経緯や今後の希望を聞いた。

―今回の個展開催は最初から計画していたんですか?

坂本 SNSなどで皆さんが上手いとか褒(ほ)めてくださったり、リアクションをもらって、いろんな人に見てもらいたいなと思ってはいました。それに今まで「ソワレ」に来てくださった方々に恩返ししたいなと。今でもTV番組に出させていただくと「観たよ」とか、すごく家族や友達みたいに接してくださって、ずっと助けられてきたので。

―会場が取り壊しが決まった元自宅ということですが、やはり思い入れがあってですか?

坂本 いろんな番組でロケをしていただいた思い出があるのと、ちゃんとした画廊とかを借りると高いからですね(笑)。取り壊しが決まった時は、ここなら面白そうだなと。あの家に住んだ経緯もとても不思議なんですよ。

―というと?

坂本 ちょうど「ソワレ」で働き始めた頃、元々、新聞販売店だったところに住んでいたんです。でもある日、ドアをドンドンと叩かれまして、開けたら隣の部屋のおじさんがパンツ一丁で包丁持って「おまえ、殺すぞ」って。それで「包丁おじさんから逃げなきゃ」と思って、会場になる家を知り合いの不動産屋さんに紹介されてたんですよ。ただ、元の家からものの2、3分くらいの距離なので逃げれてなかったんですけど(笑)。

―ダメじゃないですか!

坂本 しかもお風呂がございませんの。でも元の家は皆で入れるお風呂があったので、引っ越してもちょこちょこ勝手にお風呂へ入りに行ってたんです。そしたら、ある日、お風呂から出てきたら下からその包丁おじさんが上がってくるんですよ。それで怖くなって銭湯に行くようになりました。

会場となる元自宅の一軒家。周りはすでに解体され廃墟のよう

―危機感が全くない! 自分から接近してますよ!

坂本 包丁突きつけられた経験あります? わたくし、今でも覚えてるんですけど、包丁見せつけられた時に「これはドッキリロケかな」と思ったの。「マネージャーさんはどこにいらっしゃるのかしら」とか「こんな上手な演技してすごいわね~」とか。事が終わってから怖さが滲(にじ)み出てきて。危なかったですよね。

―まるで他人事…。

坂本 もっと壮絶な人生を送っている人、いっぱいいるので。職業柄、こういう不幸も全部仕事にできる可能性を秘めてるじゃないですか。そういった意味では発散できるし。あっ、でもフェイスブックとかで見ず知らずの方に会場を公開する前から「坂本ちゃん、はじめまして! 今、坂本ちゃんが個展やる家の前にいます」とかメッセージがきて、ちょっと怖かったです。誰かしら?みたいな。

―自宅バレしてたんですか。それは怖いですよね。

坂本 そうなのよ。わたくしも昔は尾行とか人のお家を探すのが大好きだったんですけど、いざ自分がされてみると怖いし気持ち悪いですね。それがやっとわかりました。一応迷惑かけないっていう気持ちはあるんですけど、ちょっと怖かったです、不意にいらっしゃれると。

引っ越した当初から壊れていた蛍光灯。危ないとは思いつつも、このまま使っていたそう

きっと人間、手に入れても…

会場の2階へ続く階段もカラフル。家中、原色に囲まれて生活していたのだ。イチローのポスターが時代を感じさせる

―今だったら完全に不審者で捕まってますよ…。ただ、自宅特定するほど熱烈なファンの方だったんでしょうね。

坂本 最近はよく「電波少年、観てました」「お母さんお父さんが好きでした」って言う方がほとんど。若い人には存在を知られていないので、今回の個展がニュースになったりして、そういった方々に自分の存在を知ってもらえるチャンスがあると思うと楽しいし、知ってもらいたいなって思いますね。

―今回の個展でまた注目も集まると思いますが、芸術家としての活動というのも視野に入れているんですか?

坂本 冷静に考えても、ただ趣味に描いてる絵ですし、その延長の発表会みたいな感じなので、そんなに考えてはいないですね。もちろん、それで商売ができたら万々歳かもしれないけど。やっぱりタレントさんでいきたいですね。

―ではタレントとしてはどうなりたいとか、どんな目標がありますか?

坂本 あんまり言葉で言うのはイヤなんですけど、「一世風靡した」って言ってくださって、「再ブレイク」という言葉を実現させたいのがあります。「電波少年」の出演は事務所に入ってすぐだったんですよ。大体、売れてくる人っていうのは最近仕事が増えてきたなとか、街ゆく人に声をかけられたりとか、そういう経験とかするんでしょうけど、ありがたいことなのか、私はそれがないままきてしまいまして。

ちょっとそういう経験してみたいっていうのと、突然でひとつひとつ緊張してワケのわからないまま仕事をしていたので、達成感的なものもなく…だからタレントとして手応えのあるお仕事をしたいですね。

―それこそ「ソワレ」で様々な人と出会い、いろいろな経験をしたからこそ、別の魅力が出せるかもしれないですよね。

坂本 いまだにメジャー思考なのかもしれないですね。きっと人間、手に入れても…なんでしょうね。私も子供の頃からタレントに憧れて実際になっても次々にいろんな夢が出てきたり、欲深い人間なので。

わたくしの神様である槇原敬之さんにお会いした時も、次はもっと近づきたいとか思ってしまって。欲望があるからきっと生きていけるんではないでしょうか。今回の個展もすごい願望があって達成できたけど、また次にどんな欲望が生まれるのかと楽しみです。

あと、綺麗事になりますが友達にお礼をしたいですね。生活面でも色々助けてもらって踏ん張ってきたので。おごってくれたり服をくれたり、その方々に何かお礼できることといったら、「最近、よく出てるね」って言ってもらえるようになるのが一番じゃないかなという気持ちがございます。

―では、最後に個展のPRをお願いします!

坂本 クラウドファンディングも達成させていただいたり、SNSでたくさんの人に拡散いただいて、結構すごい数の人が見てくだすって、すごく嬉しいです。わたくしのワガママに付き合ってくださって本当にありがとうございますです。

―PRじゃないですけど、今日はありがとうございました!

取り壊し会場の2階には、そのままになった廃棄する家具などが。この家で過ごした生活感が残り、哀愁を感じさせる

(取材・文/鯨井隆正 撮影/五十嵐和博)

■『坂本ちゃん個展 新宿ゴールデン街で出会った人達+α』日時:4月2(月)~15日(日) ※開催期間中は本人も在廊予定 月~金14~19時 土・日11~18時 場所:新宿区山吹町15 入場料:無料 詳しくは特設HP【https://www.makuake.com/project/sakamotochan/】、公式Twitter【@sakamotochan】にて