自身初の単行本刊行した「とんねるず」の木梨氏

自身初の単行本『木梨憲武って!?』を上梓した"ノリさん"を直撃!

あふれる"サッカー愛"、そして"男の教科書"のような著書に込められた思いを語ってもらったぞ!!

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■"ペレのサイン"はこうして生まれた!

―今回、自身初の単行本となるフォトエッセイを発売されましたが、けっこうギリギリまで作り込んでいたそうですね。

木梨 発売の直前まで粘って編集してましたね。今月13日から始まった大阪の展覧会(「木梨憲武展 Timing―瞬間の光り―」。2020年までに全国14ヵ所を巡る予定)もギリギリのスケジュールで準備していたし。そんななか、W杯真っ盛りだったでしょ? もうね、めちゃくちゃ忙しいの(笑)。

―木梨さんといえば、「芸能界きってのサッカー通」として真っ先に名前が挙がる存在ですが、W杯期間はどのようにお過ごしだったんですか?

木梨 俺はね、もう完全に一日のスケジュールがW杯合わせになりましたね。17時半に飯食って、がぶがぶお酒を飲んだら腹いっぱいになるから、18時半には寝ちゃうわけ。それで22時半に起きて23時からの試合をゆっくり見るの。人は酔いがさめるときに1回起きるから。その後3時からの試合を見てるとだんだん眠くなってきて、そこでひと眠り。で、朝になったら子供の送りで起きるから、体調はいい感じ(笑)。

―もうW杯を見るためのタイムスケジュールですね。

木梨 そうそう。実はね、このW杯を見ながら、夏にやる『スポーツ王は俺だ!!』のPK対決のキャスティングを考えてるんですよ(笑)。

―W杯で品定めを(笑)。

木梨 本当にそうですよ。対戦相手をどうするか考えているから、番組の撮影がぼんやりと先延ばしになってるんです(笑)。日本代表選手にお付き合いしてもらうのか、それかW杯後のオフのタイミングで世界選抜級の選手に会いに行くか。テレビ朝日のスタッフたちはぼんやりキョロキョロしてんじゃないですか。

―木梨さんはメッシやクリスティアーノ・ロナウドにもすでに会ってますもんね。

木梨 メッシは「メッシと飯を食いに行く」って企画で会ったし、ロナウドは『みなさんのおかげでした』の「食わず嫌い王決定戦」に出てもらったしね。ロナウドは収録のときに俺の靴を気に入って、彼が履いてるナイキのスパイクと交換するって話になったんだけど、全然送ってこないの。1年後、番組で会ったときに怒ったら、自分のブランドのとんがった靴を持ってきてさ。「俺はロナウドが履いてるのが欲しいんだ」っつってんのに......。

その後、もう1回会ったときにはだしで行って、「俺は約束どおり、まだ靴をもらってないんだ。あれから俺はずっとはだしでいるんだ」って通訳してもらったら、向こうのスタッフが大ウケしてた(笑)。

「ペレとニューヨークでPK対決をしたんだけど、こっちに向かって歩いてくる姿がハナ肇さんにしか見えなかった」と語る木梨さん。「もともと俺が勝ってたのに、俺がキーパーのときに『蹴る前に動いた』と言われて、結局ペレの勝ちになったんだよ」

―(笑)。木梨さんはこれまで何十回とPK対決されてきましたが、印象に残っているのは誰ですか?

木梨 その昔、『生でダラダラいかせて!!』で高木琢也とPK対決したんだけど、現場が始まる前にむちゃぶりで「負けたら坊主」っつったら、高木が負けてさ。本当に坊主にして、その後の日本代表戦に出たんだから(笑)。そんなこともあったな~。何年PKを蹴ってるんだって話だけど(笑)。過去にはペレ、ジーコ、デルピエロ、ジダンをはじめ、世界中のスーパースターたちと対戦して、全員にユニフォームとサインをもらってるしね。

―そういえば、木梨さんは"ペレのサイン"を書かれますが、あれはどんな経緯で?

木梨 そんなにちゃんとした理由はないですけど、まあ、"三ツ星"みたいなものですね。『みなさんのおかげでした』の「きたなトラン」で星をつけてお店を格づけしてたんだけど、途中からめんどくさくなって。ブラジルのユニフォームにはW杯で5回優勝した証として星が5つついてるの。それでブラジルのキングといえばペレなんで、ペレのサインを書き始めたんですよ。

―そこから、いろんなところでペレのサインを書いているんですね。

木梨 ペレに会ったときにサインもらったんだけど、俺のペレのサインとはずいぶん違ってるんだよ。世間の人は俺のほうが本物だと思ってる(笑)。

―えぇ!?

木梨 なんかニュアンスで覚えてたの。「PUMA KING」ってスパイクにペレのサインが入ってるんだけど、なんとなく覚えてたそのサインを書いてるだけで。世間の人には「ペレください」としか言われないから、今はもう自分のサインは書いてない。「ノリさんのほうで」って言われても、「いやいや、最近これしか書いてないんで」って断ってる。

―ペレのサインのほうが簡単に書けるんですか?

木梨 大して変わんないんですよ、俺のサインと。俺は平仮名で「のりたけ」って書いてるだけなんですけど、なんか似てるでしょ?(笑)。

■自分で帯に推薦文! 渾身の"男の教科書"

―今回、フォトエッセイを上梓(じょうし)されましたが、これまで単行本を出されたことがなかったというのは意外でした。このタイミングで発売されたのはなぜでしょう?

木梨 6月にロンドンの個展(「木梨憲武展―moment―」)が終わって、今月から大阪で展覧会が始まったんですけど、その展覧会の会場でアート作品の図録を販売するので、それに合わせてフォトエッセイも出そうと思ったんですよ。展覧会の会場と本屋さんに両方並ぶとおもしろいと思ってね。

―もともと、『Mens' JOKER』で連載していたものがベースになっているんですよね?

木梨 連載で書いた文章は後ろのほうで少ししか使ってないんですよ。4分の3くらいは書き下ろしと撮り下ろし。これを作っているときは、ほぼ毎日アトリエに来て写真を撮ってましたね。この本作りの作業ってのが、自分の作品を作って展覧会の会場で飾りつけるって作業と似ていて。本のタイトルも自分で決めました。というか、サイズも俺が決めたんですよ。

―本の判型もですか!?

木梨 だって黙ってたら、モデルさんのハワイ特集本みたいなB5サイズの本になりかけましたから。危うく、だまされるところだった(笑)。

―(笑)。

木梨 「本の帯はどうしましょう?」って言われたから、「俺が自分で書く」っつって。「木梨サイクルの長男が、まさか本を!」って自分で推薦したんです(笑)。担当編集も、「こういうのはないです」って笑ってましたよ。

―自分で推薦文を!(笑)。ちなみに、内容もものすごく多岐にわたっていますよね。「勇気<平気」「余白」「ノッてる感」「自由演技」など、小見出しのひとつひとつから"ノリさんらしさ"が感じられて、読み応えがありました。

木梨 56年間生きてきたなかで、なんとなく自分の中にある言葉なんかを中心に書きましたね。

―個人的には、「男子50歳からの新提案」という項目が印象的でした。

木梨 最近、「いかにジジイを楽しむか?」っていうことをずっと考えているんですよ。

―『週刊プレイボーイ』の読者はもう少し若いんですが、その世代の人には、この本をどのように読んでもらえたらとお考えですか?

木梨 ホントは本の中で、自分が思ってることを強めに言いたかったんですけど、強めに言う自信がないからぼんやり言ってます(笑)。「じゃないかな~」ぐらいのニュアンスで。みんな育った環境も、置かれてる立場も、何もかも違うので、読んでもらった方にうまく変換してもらえたらと思います。

―人生の先輩であり、憧れの木梨さんの言葉ですから、みんなしっかり読むと思いますよ。僕も熟読しました!

木梨 まあ、『週刊プレイボーイ』の読者よりちょっとだけ年上の男が言ってることだと思って、ふわっと受け取ってもらえたらそれでいいんですよ。56歳で初めて本を出しました! ちらっとのぞいてみて!!

●木梨憲武(きなし・のりたけ)
1962年3月9日生まれ、東京都出身。帝京高校の同級生・石橋貴明ととんねるずを結成。若者のカリスマ的な存在となり、今も絶大な影響を与え続ける。2018年6月に「木梨憲武展―moment―」をロンドンで、そして今月より約2年間かけて日本全国14ヵ所を巡る「木梨憲武展 Timing―瞬間の光り―」が開催中

■『木梨憲武って!?』(KKベストセラーズ 1600円+税)
お笑い、アート、スポーツ、友人、夫婦、子供......。56年間、毎日を笑って過ごしてきた木梨憲武さんが、人生で学んできたすべてのことを教える"楽しい生き方の教科書"。読んだ後は心がスーッと軽くなる、笑って学べるフォトエッセイだ!