低予算で製作され、この夏最大の話題作となった「カメラを止めるな!」

超低予算、出演者は全員新人、上映館わずか2館からスタートした映画がSNSや口コミで瞬く間に拡散され、この夏一番の話題作に!!

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■衝撃的な"体験"を観客は共有していた

約300万円という低予算で、新人監督&新人俳優たちによって製作され、たった2館で公開開始(6月23日)した映画『カメラを止めるな!』。

ゾンビ映画の撮影中に本物のゾンビが現れ......という"37分ワンカットのゾンビ映画を撮った人々の姿を描く"本作は、物語の構成上ネタバレ厳禁。そのため多くの著名人、一般人がツイッターなどで「とにかく見て!」とオススメしたこともあって話題が話題を呼び、累計上映館数180館以上(8月15日時点)へと一気に拡大!

この夏最大の話題作となることを誰が予想していただろうか。

――市橋浩治プロデューサー、本作のヒットの秘密は?

市橋 予算が潤沢なメジャー映画と違い、宣伝予算はほぼゼロ。ですから宣伝はチラシを置かせてもらったり、監督や俳優陣のSNSがメインでした。ただ、俳優の皆さんが、事務所に所属している方が少なかったこともあり、連日舞台挨拶に駆けつけてくれたり、ツイッターなどでバンバンつぶやいてくれたり、フットワーク軽く精力的にアピールしてくれたんですよね。

それに、上映後のイキナリ舞台挨拶や即席サイン会を連日やっていて、そこでお客さんが俳優と一緒に撮った写真や動画は、どんどん遠慮なくSNSに上げてください! というスタンスで盛り上げていったんです。

指原莉乃さんがツイッターで、「(前略)観に行って欲しい?! 内容とか調べずに。本当に面白いから~~!!!」と興奮気味につぶやいていたのをはじめ、同業である映画監督や俳優、ミュージシャン、マンガ家など、各界の著名人がSNSやブログでこぞって絶賛!

――今までにない衝撃的な映画を見て、直後に俳優たちと会えるというところまでひっくるめての"体験"は、ツイッターでつぶやきたくなる要素満載ですね。

市橋 それでいて、ネタバレしちゃいけない内容なので、皆さん意味深なツイートになる。結果論ですがSNS時代にハマった映画でもあったと思いますね。

それと、まだ2館でしか上映してないときに地上波テレビでも取り上げてくれて、「行列になっています!」と。そりゃ2館しかやってないんだから行列もできるわという話なんですが(笑)、ありがたかったですね。

監督&俳優養成スクール「ENBUゼミナール」の代表も務める市橋浩治プロデューサー。1964年生まれ

■ドキュメンタリーとフィクションの中間

――続いて上田慎一郎監督。SNSを使った宣伝がハマるというのは、当初からある程度計算していたんですか?

上田 まったくしていません(笑)。ネットでバズるだろうとかは二の次で、シンプルに「面白いものを作ろう」という気持ちでしたからね。

――冒頭の37分長回しは、計6テイクもチャレンジし、実際に採用したのはラストテイクとのことですが、最後の最後でノーミスでできたと?

上田 いえいえ、その6テイク目もミスとトラブルだらけですよ(笑)。ゾンビメイクが間に合わなくて30秒ぐらい俳優たちがアドリブでつないだり、カメラのレンズに血しぶきがついちゃったのをやむなく拭き取ったり。秋山ゆずきちゃん演じるヒロインに、ゾンビのゲロがかかるシーンがあるんですが、あそこはもっとドバッとかかったほうがよかったし(笑)。

元から脚本上にあった"演出のトラブル"もあれば、"ガチのトラブル"もあって、そこは当初からあえて、あいまいにしようと思ってたんです。

――ガチトラブルも想定内?

上田 はい。脚本は綿密に練り込んであって、リハーサルを何度も重ねています。ただ、俳優陣が段取りどおりに落ち着いて演じちゃうと、愛嬌(あいきょう)のないただの"よくできた映画"になっちゃうだろうなって。だから多少のアクシデントを組み込むことも想定して、虚実ない交ぜになった二度と撮れないライブ感みたいなものを映像に収めたいなと考えていたんですよね。

なので俳優たちも演技じゃなくて素でしゃべってるところもあって、フィクションでありドキュメンタリーでもありっていう作品になったんですよ。

――イタリアの「ウディネ・ファーイースト映画祭」で観客賞2位を獲得するなど、すでに海外各国での評価もうなぎ上り! 今の心境は?

上田 僕らにとって映画は子供のようなものなんですけど、この映画はどこかの段階からひとり歩きし始めて、もう自分らの手を離れて飛び立っていった感覚なんです。

公開当初はエゴサーチしまくって、どう話題になっているかチェックしてましたが、今やエゴサーチがまったく追いつかない(笑)。アメリカやブラジルの映画祭でも賞をいただけてますし、すでに僕らの想像を何度も超えていっている"子"なので、ここから世界でさらに暴れてくれたらいいなと思ってます。

――全世界への感染拡大、期待が高まりますね!

脚本も担当した上田慎一郎監督。今まで8本の映画を監督しているが本作が長編商業デビュー作。1984年生まれ