世界最大のアイドルフェス、東京アイドルフェスティバル2017(以下、TIF)! 8月3日(金)、4日(土)、5日(日)の3日間、今年も東京・お台場でアツすぎる祭りが行なわれた!
前編・中編に引き続き、後編では8月5日(日)の様子をお届けっ!
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■エレクトリックリボン[FUJIYOKO STAGE]
"エリボン"ことエレクトリックリボンを2012年から支え続けたerica(通称・ぇっか)が、今年9月に卒業することを発表。最後のTIFを迎える彼女を見るべく、この日は朝から大勢のファンがフジヨコステージを埋めつくしていた。
ライブは夏らしい爽やかな『アイライン』からスタート。メンバーyuのきゅっと目を細めて歌う姿がとてもまぶしい。ファンの「ハイ、せーのっ」というコールはまさにザ・アイドルライブ。そのまま疾走感を保ちつつ『steal me』に突入するも、ここでもファンのコールは止まない。その一体感は、すべてぇっかを送りだすためのようにも思えた。
3曲目に歌った『波音チューニング』のラストでは、ぇっかが2013年から毎年TIFに持ってきている"2万円の寿司桶"を取りだしキメポーズ! 桶の裏側を見せると、そこには「♯ぇっかちゃん最後のTIF」の文字が書かれていた。ある意味、TIF名物のこの桶、そして、ぇっかがいるTIFは今日が最後......と思うと、胸がぎゅっと締め付けられる。
ちなみに数時間後のフェスティバルステージでは、ファンが彼女に向けた横断幕を掲げるサプライズもあったそう。ファンはもちろん、TIFにも愛され続けたぇっか。5年間、ありがとう!!
■SKE48[HOT STAGE]
今年10周年を迎えるSKE48は、AKB48選抜総選挙で松井珠理奈、須田亜香里がワンツーフィニッシュ。またこの夏は毎日のように各地のイベントに引っ張りだこと、今一番勢いのある48グループだ。今回のメンバーは須田亜香里をセンターに次世代エース小畑優奈、総選挙8位の大場美奈。ミスターSKE高柳明音。フレッシュメンバーとしてはパフォーマンスに定評のある末永桜花が抜擢されるなど、盤石の体制。
そんなSKE48の層の厚さを見せつけたのがセンターに立ったメンバー。現在、絶対的エース松井珠理奈が休養中ということで、曲ごとに小畑、大場、高柳とセンターが入れ替わる。そのセンターに合わせて周りのメンバーも動きを変えていく。圧巻だったのは『チキンLINE』でセンターに立った古畑奈和。他の曲ではアイドルらしい動きを見せるも、センター曲ではスイッチが切り替わったかのような周りを圧倒するパフォーマンス。思わず最後まで彼女を見続けてしまった。
曲間のMCでは大場が「つまらない自己紹介はしないので」と、かつての反省点をギャグに。佐藤佳穂は「グラビアのオフショットをスタンプで隠して男性の好奇心をあおってます」とアピールし、ファンは大歓声。また菅原茉椰は小畑優奈を「アピールしなくても、笑ってるだけでカワイイ」をイジった。
ラストの最新シングル『いきなりパンチライン』で松井珠理奈ポジに入ったのは須田亜香里。今や48グループで指原莉乃に続く売れっ子だ。そんな忙しさにもかかわらずパフォーマンスはキレッキレ。鉄人・須田亜香里の姿を会場のファンの目に焼き付けた。
■NGT48[HOT STAGE]
3年連続の登場となるNGT48、今回は先輩のいない1期生だけのステージ。中心となったのはAKB48選抜総選挙で2年連続で神7入りし、今やNGTの顔である荻野由佳。1曲目は彼女がセンターをつとめる『世界はどこまで青空なのか』。そして「夏の主役は、NGT48だー」と叫んで2曲目の『みどりと森の運動公園』へ。
MCではタイで行なわれたTIFに参加したことに触れ、奈良未遥は「めちゃめちゃ盛り上がってたからすごいなーと思いました」とフワフワなコメント。加藤美南は「タイの盛り上がりっぷりに負けず、まだまだできますかー?」とファンを煽り、高倉萌香センターの『友達でいましょう』など4曲続けて披露。
ラストは本間日陽が先日の総選挙で14人がランクインしたこと、そして9月26日に4枚目のシングルをリリースすることをあらためて報告。「勢いはこのままでこれからも頑張っていきたいので応援よろしくお願いします!」とアピールし、ラストはNGT48の代表曲『Maxとき315号』で締めくくった。
48グループで今、一番熱いファンを抱えているのがNGT48。普段のコンサートとは違うフェスならではの盛り上がりで会場をヒートアップさせた。この勢いで進めば、9月15日に日本武道館で行なわれる4thシングルのリリースイベントも大成功間違いない。
■ラストアイドルファミリー[HOT STAGE]
テレビ朝日発のラストアイドルファミリーがフジテレビのTIFに初見参! 参加したのはLaLuce、Good Tears、シュークリームロケッツ、Someday Somewhere、Love Cocchiの5組22名。
1曲目はLaLuceによるラストアイドル名義のデビューシングル表題曲『バンドワゴン』を歌う。そう、これぞラストアイドル!
続くセカンドユニットは、セカンドシングルの曲を歌っていく。Good Tearsが『スリル』を、シュークリームロケッツは『君のAchoo!』。Someday Somewhereが『この恋はトランジット』、Love Cocchiは『青春シンフォニー』を次々と披露。セカンドステージの思い出がオーバーラップしてくる。
この夏、イベントを数多く行なっている彼女たち。各グループのパフォーマンススキルもなかなかのものだ。ユニットが終わると、3rdシングル間島和奏センターによる『好きで好きでしょうがない』。安田愛里が「曲中に『好きだ』が80回出てきます」と紹介していたが、これはすごい! 悲しげな曲だが、全メンバーがそれぞれ「好きだ」と本気のアピール! 見ていて思わずニヤけてしまう。メンバーが寝転がる振り付けも効果的だ。
ラストはおなじみの『ラスアイ、よろしく』。テレビ番組内でドキュメンタリーな戦いで話題を集めているラストアイドルだが、それぞれがちゃんとアイドルをしている。目の前で見るとさらに応援したくなる。"圧倒的なスター感"のあるステージだった。
■大阪☆春夏秋冬[HOT STAGE]
2015年に「TIFで見つかったグループ」と言われた大阪☆春夏秋冬も今やメインステージに欠かせないアイドルに。メインボーカルMAINAの「大阪☆春夏秋冬、こんなもんじゃないからね」「ダイバーシティかかってこい!」の宣言とともにライブスタート。
今回披露したのは『SSFW』、『Evolution』、『DAWN OF MY LIFETIME』、『世界には僕らだけ』、『C'mon!』、『See you again』、『Let you fly』の7曲。
とにかくMAINAの圧倒的なボーカル力にド肝を抜かれる。それはアイドルのライブという枠組みを超えてしまっているのかもしれない。また周りのメンバーたちの鍛え上がられたパフォーマンスも目を惹かれる。他のアイドル目当てで来ていたファンも「すげえ!」と感嘆の声をあげずにはいられないグループ。まだ見てないアイドルファンがいるならば、それは不幸だ。今すぐ目撃者になるべきだ!
■恥じらいレスキューJPN[FESTIVAL STAGE]
昨年の「ナツ☆イチッ!オーディション」ファイナリスト・里々佳が率いる、"恥じレス"こと、恥じらいレスキューJPN。実はメンバーの中に"男の娘"が在籍する、性別を超越したアイドルグループなのだ。
小刻みなギター音が鳴り響き、まずは女子メンバー4人による『アイドル症候群(シンドローム)』がスタート。どこか懐かしさを感じさせるメロディーが印象的なこの曲を、彼女たちは一切笑うことなく、シリアスに歌い踊る。そのまま、新曲『嘘吐き少女の恋慕情』へ。メンバーがマリオネット役とそれを操る傀儡師(くぐつし)役に分かれて踊るこの曲。シュールかつ特徴的なその振付を、ファンは声を上げることなく、じっと見守る。
笑顔ナシの2曲が続いたあと、ラストはアゲ曲『恥じレスなめんなよ!』。メンバーはやっと弾けるような笑顔を浮かべ、「大きな声を聴かせてー!」と、ファンに向かって叫ぶ。ここで"男の娘"メンバー・一条あおいも大きな旗を持って登場! 一条が旗をブンブン振り回し、ファンは「うぉい!」と吠え続ければ、会場のテンションはみるみると上がっていく。最後はメンバー5人とファン全員で飛び跳ね「うぉおーおーおーおーおおー!!」と大合唱! 女のコだけがアイドルじゃない――そう感じさせる盛り上がりを見せてくれた。
■ベッド・イン[HOT STAGE]
その瞬間、ホットステージは、バブル時代のジュリアナになっていた。もちろん実際にジュリアナにはなってはいないのだが、バブル時代の香りをバンバンッと振りまいてベッド・インの益子寺かおり、中尊寺まいが登場すると、ホットステージは異様なムードに。ボディコンにジュリ扇を振り乱しながら「あ、それそれ~! みなさ~んこにゃにゃちは~!」「ベッドインでぇ~す! シクヨロ~!」と叫ぶ。『♂×♀×ポーカーゲーム』からスタートだ。
はじめて彼女たちを見た若い観客も少なくなかったろう。しかし、ギターをかきならす中尊寺まいと、パワフルなシャウトを見せる益子寺かおりの姿に「イロモノだけど、イロモノじゃない!」と、1曲で思い知ったはずだ。
「いや~! TIFのみんな、アッツいね~!」「本当にアツいよね~。やまだかつてない熱帯夜なんじゃない~?」「まだこんなに明るい時間なのに、こんなにたくさんの生徒諸君にスケベな目でいっぱい視姦してもらえて、かおりの下半身のポケベルも鳴りっぱなしなわけなんだけど~、今日のみんな、ちょっと......イカ臭くない??」「たしかに~」「ほら、お客さんこっちから、チェリーボーイ、チェリーボーイ、チェリーボーイ、ひとり飛ばして、Jボーイ!」「あ~ん。ハマショ~~♡(浜田省吾)」「六本木から持って来たバブルジョークで~す!」「ガラスの十代のみんなは、おくちぽっか~んだと思うの~。そういう人たちは、パソコン通信で調べてちょんまげ~」
と、いつも通り、バカエロなバブリー時代の死語(←これ自体も死語)で、ベッド・イン色に染めまくる。
続く『劇場の恋』、『男はアイツだけじゃない』でさらに盛り上がったところで、ふたたびMCに。
「あ~、サンクスモニカ~」「みんな見えてるよ~。すごいおっ勃ってるね~♡」「ベッド・インは、バブル文化をリスペクトして、2012年に結成したんですけど、最初はどこに行ってもアイドルとして扱ってもらえなくて」「でも、このTIFには3年連続出場ということで、お枕大成功~!」「でも私たち、楽屋がすごく隔離されてるの。病原菌かのように! だけど呼んでいただけてマンモスうれPで~す!」「では今から私たち、ホットステージをクンピ色(ピンク色)に染めたいと思うんだけど、みんな下半身の準備はケーオツかな?? アレ持って来て~!」
その声を合図に舞台袖から現れたのは、往年の大人気番組『スーパージョッキー』の生着替えカーテンボックス! 観客のテンションはハネ上がり、大歓声をあげる。
そのままカーテンの中に入り、ボディコンを脱ぎ捨てる! 「3、2、1!」の掛け声でカーテンが落下すると、そこには蛍光ピンクと蛍光イエローのレオタード姿のふたりが。
「アッついから脱いじゃった~」「ラスト一曲いけますか~! 本気汁ぶっかけてくれますか~!」とアオりまくり『C調び~なす!』へ!
最高のおギグ(ベッド・インのいうところのライブの意)を突っ走ったベッド・イン。周辺にいた、バブルを知らない若い男子たちが「ヤバいんですけど~!」「なんだよアレ! 最高かよ!」と盛り上がっていた。そうなのだ。やまだかつてない最高っぷりなのだ。
■サマソニ×TIF 大森靖子[SMILE GARDEN]
今年のTIFでは、ロックフェス「サマソニ」とのコラボが実現。この日のコラボステージには、自他ともに認めるアイドルファン・大森靖子が登場した。2013年以来、5年ぶりのTIF出演だ。
ライブは「すべてのアイドルに敬意を込めて!」という彼女の言葉のもと『IDOL SONG』からスタート。市川美織(元NMB48)の「フレッシュレモンになりたいの」や、有安杏果(元ももいろクローバーZ)の「ちょっぴりおバカな小さな巨人」など、アイドルの自己紹介フレーズが散りばめられたこの歌は、アイドルに詳しければ詳しいほど楽しめる。
その後は「女の子って最高」という歌詞が印象的な『GIRL'S GIRL』や、道重さゆみ(元モーニング娘。)への想いを歌にした『ミッドナイト清純異性交遊』を熱唱。続く4曲目の『絶対彼女』では、途中で「お前が一番カワイイよ!」「私が一番カワイイよ!」という独特なコール&レスポンスを展開し、観客を盛り上げる。そのほか「当てはまる人は歌って!」と促しつつ、「女子!」「おっさん!」「DD(誰でも大好きの意)!」「ピンチケ(若く"元気"すぎるアイドルファンの意)!」と叫び、笑いを誘う場面もあった。
最後に『マジックミラー』『死神』を大迫力の大声で歌い上げ、ステージを締めくくった彼女。アイドルファンの彼女は、アイドルファンが喜ぶライブの仕方を知っていた。
■Maison book girl[SMILE GARDEN]
初日、夜景をバックにスカイステージのトリを務めた"ブクガ"ことMaison book girl。最近は布面積が多いレインコート風の衣装をまとっていたが、この日は少し夏らしい、新たな純白衣装で登場(まだ暑そうだが......)。斜めで強い日差しが反射してまぶしい。ちなみに、腕につけた写真のような何かは、調べてみると布製のようだ。
ブクガといえば変拍子の楽曲だ。七拍子の細かいクラップで静かにファンを煽る『bath room』から、十拍子の新曲『レインコートと首のない鳥』、再び七拍子の『croudy irony』とステージは続く。酷暑のなかでも、いつもどおりシリアスな無表情で歌い踊る彼女たち。
しかし4曲目、五拍子の『snow irony』だけは彼女たちも表情を変える。「おい! おいおい!」と、カワイイ声でファンを煽る黒髪ショートの矢川葵。アイドル然とした一瞬の彼女に悶えた人も多いだろう。最後は三拍子で踊る『karma』。サビで片脚を高く上げるたび、真っ白な彼女たちにドキッとさせられる。ダークで特徴的な楽曲だけじゃない、彼女たち自身の魅力を感じた夏の午後だった。
■SUPER☆GiRLS[FESTIVAL STAGE]
SUPER☆GiRLS史上、最小人数9人でTIFに挑む彼女たち。まずは、懐かしの自己紹介ソング『恋してYES~これが私のアイドル道!~』で、9人の新生スパガを紹介していく。観客も「イエー!」「オレモー!」「フゥ~~!」と声を上げる。とくに阿部夢梨(ゆめり)の「ツインテールがトレードマーク阿部夢梨です! イェイ♪」の「イェイ♪」の部分に「うおふぅ!」と超反応するファンの姿が! その反応も納得だ。阿部夢梨が可愛すぎる。それはまるで、昨年、超絶カラーピンクを彼女が引き継いだ、永遠のセンター・前島亜美を見るようだった。
続いて『プリプリ♥SUMMERキッス』。スパガお得意の夏水着曲だ。その盛り上りと夏感に、彼女たちのコスチュームが水着に見えてくる。フェスティバルステージがビーチに見えてくる。ガンダムの頭部がギラギラの太陽に見えてくる。
そしてラストは『華麗なるV!CTORY』。裏ピースのように右手でVを作り、頭上に上げる。同じように観客がそれをマネする。彼女たちのパフォーマンスを見に来ていた某博多のアイドルグループメンバーも同じくVを作る。
ステージ上、9人が作る「V!」。「夏よ終わるな!」「この時間よ、永遠に続け!」「スパガよ永遠に!」誰もがそう思ったことだろう。
■tipToe. [FESTIVAL STAGE]
今年、あらたに立ち上がった企画『アザーレコメンドライブ』。アイドル業界に造詣の深い7人の「アザーレコメンダー」たちが選んだ10組が行なったTIF出場権争奪バトルだ。このバトルで優勝したのが彼女たち、tipToe.だ。
ゆっくりとしたピアノの旋律に乗って現れた6人の少女たちは、紺のワンピース制服に身を包んでいる。その涼しげな表情。集まった観客が大きな拍手で迎え入れる。
1曲目は『ハートビート』、そして『クリームソーダのゆううつ』へとつなぐ。両方とも彼女たちを体現するようなキラーソングだ。
なぜ、彼女たちを見ていると目頭がアツくなるのだろう。スクールカーストでいえば、絶対に上位ではない少女たち。そんな、隣の席に座っている彼女たちが静かな決心の炎を燃やしている。そんな姿に、単純に胸を打たれてしまうのだ。
彼女たちが自らの手でつかんだTIF2018。最後のうたは『夢日和』。
「私、幸せだっていいかもね?」「私、夢を見たっていいかもね?」
そう歌う少女たち。夕暮れ前の優しい西日がやわらかく輝く。
彼女たちは地味かもしれない。でも、それは等身大で"ほんとう"なのだ。等身大の地味さが生み出す、清純という名の奇跡。その奇跡に、フェスティバルステージは包まれた。
両手の人さし指を空に向けて交互に指差す笑顔の少女たちと笑顔のアイドルファン。かけがえのないピースフルな空間が、そこにあった。
■スペシャルコラボライブ 大阪のダンス(大阪☆春夏秋冬×フィロソフィーのダンス)[SMILE GARDEN]
アイドル界トップクラスの歌唱力を持つMAINA率いる"しゅかしゅん"と、ディーバ的な実力を誇る日向ハル率いる"フィロのス"。「この企画が決まるまで面識がなかった」と話す彼女たちの初コラボは、フィロのスのキラー曲『ダンス・ファウンダー』からスタート! 全員が高い実力を遺憾なく発揮し、初コラボを感じさせないパフォーマンスで観客を圧倒する。
間髪入れず、フィロのスによるしゅかしゅんのカバー『New Me』で会場が沸いたあと、ハルが「アツくなったと思うんですけど、しっとりした曲を歌いたいと思います」と曲フリ。ハル&MAINAによるフィロのスの名バラード『ジャスト・メモリーズ』だ。
ハルが青空を突き抜くような歌声を響かせれば、MAINAは得意のアレンジを効かせて応戦! 向かい合って笑顔を浮かべつつ、誰も真似できない声量で歌う"東西のパワフル・デュオ"は、歌い終えたあと、固く抱擁を交わす。パフォーマンスに圧倒されたからか、はたまた、その美しい光景を目の当たりにしたからか......。なんだか、鼻の奥がツーンとする。
その後、しゅかしゅんが先ほどの"お返し"に、フィロのスの『アイドル・フィロソフィー』をカバー。そしてラストは再び10人が集結し、しゅかしゅんの『C'mon!』で熱いステージを締めくくった。初コラボにして最高の相性を見せた"大阪のダンス"。メンバーは去り際に「ツーマンがしたい」と語っていたが、再戦を熱望する者を大量に生んだに違いない。
■マジカル・パンチライン[SKY STAGE]
「魔法の言葉」を意味するグループ名を持つ、マジカル・パンチライン。結成当初のリーダー・佐藤麗奈が4月に卒業し、現在4人で活動している彼女たちは、この日の朝、初お披露目となった真っ白な衣装をまとって登場。
まずは定番の『マジカル・ジャーニー・ツアー』でライブをスタートさせる。心地よい風が吹く。夕方の柔らかいオレンジ色の光の中、まるで天使が舞っているよう......。続く『手のひらがえし』では、清水ひまわりの「回せー!!」という掛け声でタオルが一斉に掲げられ、くるくると宙を舞う。「ふわふわしていてただ可愛らしいイメージだったのに、アオりが上手くなって......」と、なぜか親のような気持ちに。この気持ちはいったい......。
"さとれな"の卒業を聞いたときは「4人体制でこれからどうなるんだ?」と思ったが、人数がコンパクトになった分、以前よりもひとりひとりの個性が発揮されたパフォーマンスに見える。ラストに歌った『Never Ending Punchline』には「まだまだ旅の途中」という歌詞がある。その一節のとおり、彼女たちの"冒険"はまだまだ続いていくのだろう。
■ベイビーレイズJAPAN [SMILE GARDEN]
9月に解散を発表しているベイビーレイズJAPAN。彼女たちが登場する前から、スマイルガーデンは多くのファンで埋めつくされていた。観客を見ると、10代、20代前半の女性ファンたちの姿が多い。中には、もう泣きそうになっている少女たちもいる。ベイビーレイズJAPANにとって、最後のTIFだ。
「ベイビーレイズJAPAN! しっかり眼に焼き付けてね!」という林愛夏(まなつ)の声で、ベビレTIF最後の30分がスタートした。
1曲目は『ベイビーアンビシャス』。高見奈央が帽子を投げる。林愛夏の優しく強い声が突き刺さる。
続く『チャリンコアイドル』『シンデレラじゃいられない』でボルテージはどんどん上がっていく。「オ~オ~オ~~!」と観客が声を揃える。スマイルガーデンが揺れる。客席の少女たちは思いきり握ったコブシを振り上げながら涙を目にいっぱいためていた。
4曲目『ベイビーレイズ』、そして5曲目は『僕らはここにいる』。
鳴り響くピアノの音。どんどんベビレのTIFが終わりに近づいている。西日が光る。オレンジ色が彼女たちを照らす。落ちていく太陽よ、待ってくれ。何も知らない奴らが「エモい」なんて言葉ひとつで軽々しく表現しないでくれ。終わってほしくない。誰もがそう思っていたのではないだろうか。メンバーの目にも涙が光る。
しかし、その瞬間は来てしまった。ベビレのTIFラストナンバー。
それは、様々な問題から一時、封印していたこともある名曲『夜明け Brand New Days』。
会場がさらにさらにヒートアップする。観客の少女たちは号泣している。目の前の大好きな彼女たちに手を伸ばす。ちぎれるまで思いきり手を前に伸ばせば、それに届きそうで。泣きながら手を伸ばす。ここにいつもいたかったから。
この曲のために何度ケチャをしただろう。この曲のために何度コブシをふりあげただろう。この曲のために何度2本の指を開いただろう。
歌い終わっても、いつまでもいつまでも拍手が鳴り止まない。
メンバーの傳谷英里香が言う。「今日も最高の景色を見せて下さって本当にありがとうございました! この最高の続きを、9月24日。山中湖、チームベイビーレイズJAPAN一同、お待ちしております!」
そう言って、ベビレはTIFのステージを終えた。この悲しさと、感謝と、感動の感情。これも「青春」って、後になって呼ぶのだろうか。
■BILLIE IDLE[DOLL FACTORY]
今年5月、元BiSのファーストサマーウイカやヒラノノゾミが率いるBILLIE IDLEに、3月までBiSに所属していたプー・ルイが電撃加入。"旧BiS"として2014年まで苦楽をともにしていた3人が、別ユニットで再びパフォーマンスすることに、衝撃を受けた人も多いだろう。
そんな新しい5人体制をひと目見ようとファンが押し寄せたDOLL FACTORYで、彼女たちは『MY WAY』からライブをスタートさせる。ウイカがイントロから「ワンツースリーフォー!!」とシャウトしたり、全員で拳を突き上げたりと、あの手この手で盛り上げていくメンバー。会場のテンションはいきなりハイに!
そして疾走感あふれる『be―bop tu―tu』を経て、3曲目は往年の名曲、レベッカの『フレンズ』をカバー。"ネオ80's"をテーマに掲げる、彼女たちらしいこの選曲。モモセモモとプー・ルイのハイトーンボイスが光る!
あっという間に15分が経過し、ラストは代表曲『be my boy』。歌詞に合わせてファンも一緒に「ビー・マイ・ボーイ!」と叫ぶ、叫ぶ! 終盤の間奏部分では、モモセアキラ、モモ、ヒラノ、ウイカに続いてプー・ルイもファンにお礼を言う。「プー・ルイでした! ありがとうございました!」。想像していた以上に、新天地にフィットした彼女がいた。
■Task have Fun[SMILE GARDEN]
昨年のTIFの話題をさらった3人組の女子中学生がいた。Task have Fun。今年は熊澤風花(ふうか)と白岡今日花(きょうか)のふたりが高校1年生、16歳となった。去年よりもちょっとオトナっぽい黄色いワンピースで登場だ。
1曲目は『キミなんだから』。黄色いスカートが異常なほどひるがえる。これもTaskの特徴だ。その中でも熊澤風花のひるがえりっぷりはすごい。アイドル界1位かもしれない。続いては『「キメ」はRock You!』。『キミなんだから』とともに今年リリースした新曲2曲で勝負だ。昨年のTIFのガムシャラ感とは違い、観客が見えている。時おり、大人っぽい表情も見せてくれる。
しかし、MCになると、「今年のTIF3日間どうでした?」「もうTIF大好きです!」「楽しかった!」「私も、こんなにたくさんの人たちの前でライブができて楽しかったです!」と、まるで子供の絵日記のような感想が。このギャップもたまらない。
そして『部屋の中の天使』から、最後はもちろんTask最強のキラーソング『3WD』だ。抜いたー! 伝家の宝刀を、抜いたー!!!
三位一体で突き進む彼女たちとともに、スマイルガーデン全体が揺れる! 頭の上で両手を「パンッ!」と合わせ、そこからアイスラッガー(ウルトラマンセブンの必殺技)を跳ばすように何度も何度も身体全体を振る。この剣道の素振りにも似たサビの振りこそ、「2017年、もっとも振りをマネしたいアイドルソング」と呼ばれた動きだ。
「最後まで、後ろも前もアゲていこうぜー!!!」熊澤風花が叫ぶ。
最後まで彼女たちも、ファンも、1ミリとして手を抜かない。素晴らしいステージだった。最後はフラフラになりながら「それでは、ウゥ~~~Task、帰ります」とスマイルガーデンを後にした。今年も彼女たちの快進撃は続く。
■sora tob sakana[SMILE GARDEN]
昨年のTIFでは初のメインステージを経験し、今年5月にはメジャーデビューを果たした超成長中のsora tob sakana。今年はスマイルガーデンの"トリ前"という大役を務めた。
夕暮れにぴったりの切なげなインスト・ナンバー『海に纏わる言葉』が流れるなか、4人がスタンバイ。左右にステップを踏むダンスがカワイイ『夜空を全部』から、息つく暇もなく『New Stranger』へ。軽やかな電子音が、ステージをテンポよく進ませる。神崎風花(かんざきふうか)の弾ける笑顔が眩しく、なぜだか切なささえ感じてしまった。
MCでは、メンバーひとりひとりがTIFへの想いについて語る。特に印象的だったのが、最年少の山崎愛(まな)の、初めてTIFの現場に来た3年前のエピソード。「(当時は)かき氷の販売のお手伝いをしていて、ステージには立たせてもらえなかった。正直、すごく悔しかったけど、今はいろいろなステージに立たせていただいて......。すごく成長したなと思います」。この3年間の想いがぎゅっと詰まった言葉に、この3日間で最も心をえぐられた。
そして、清々しい笑顔を浮かべる風間玲マライカの「ワン・ツー・スリー・フォー!」の掛け声で、『Lighthouse』、そして『ribbon』へ。難解なリズムに惑わされず歌い踊り、少しずつ大人になっていく彼女たち。「将来、彼女たちはアイドルという海を飛びだし、世界へ羽ばたいていくのかもしれない」――そんな可能性と、ほんの少しの切なさを感じさせるパフォーマンスだった。
■Negicco[SKY STAGE]
7月に結成16年目へ突入したNegicco。TIFに出演した200組近いグループのなかで最もアイドル歴の長い彼女たちが、今年のSKY STAGEのトリを務めた。
華やかな入場曲が流れ、お台場の夜景に白と緑色に光るサイリウム"ネギライト"の光が加わるなか、3人がステージに登場。1曲目に披露したのは『Tell me why?』。キラキラとしたシンセ音が心地よいこの曲を、3人は丈の長いスカートを揺らしながら踊る。"どんな風が吹くの? どんな朝に出会うの?"。2曲目は、そんな歌詞が夜風吹くこのロケーションにマッチする『そして物語は行く』。さらに、"愛しい笑顔に見送られて 続いていく"という一節がある3曲目『ノスタルジア』が続く。
数々のグループが"終わり"を迎えてしまう今年、16年目に突入した彼女たちが「自身の未来」をにこやかに歌った。MCでは、リーダー・Nao☆が「この景色は私たちと皆さんだけのもの。最後はNegiccoらしく、のんびり終われたらいいなと思うので......」と、ファンに座るよう提案。全ステージオールスタンディングのTIFで、観客全員を座らせたグループは彼女たちだけだろう。
その提案からは、しっとりと歌い聴かせて締めくくる自信が伝わってくる。こうして迎えたSKY STAGE最後の曲は、スローバラード『雫の輪』。座って見上げると、視界には真っ黒な空とフジテレビ本社の窓明かり、そして、凛と立つNegiccoの3人の姿だけが映る。誰よりも長く、誰もできないことをやり続けてくれる――そんな希望を持たせてくれた彼女たちは、手を振りながらステージを降りていった。
■HKT48[HOT STAGE]
TIFメインステージ3日間の大トリをつとめるのは、TIFのチェアマン指原莉乃率いるHKT48! アイドルとファン両方を知り尽くした現役最強アイドルである彼女は、毎年驚きのステージで会場を盛り上げている。
オープニングは田中美久、田島芽瑠(める)センターによる『桜みんなで食べた』。田中は『しぇからしか』、『12秒』など計4曲でセンターを務め、今年の総選挙で10位となった勢いを見せつけた。
MCでは今年1月のAKBドラフトで指原が1位に指名した13歳の渡部愛加里(あかり)を紹介。フルでステージに出るのはこの日が初めてということだが、「皆さん『あかり』コールお願いします!」と堂々としたMC。そしてかつての子供枠エース矢吹奈子の代表曲である『ウインクは3回』をセンターポジションで披露。小さいながらも体全体を使った元気いっぱいのパフォーマンスでファンを沸かせた。
そこからはHKTのライブ鉄板曲『大人列車』、『ロックだよ、人生は』、『12秒』『最高かよ』と爆上げチューンの4連発で幕を閉めたかと思いきや、ラストということでアンコール発動! 最新シングルの『早送りカレンダー』でフィニッシュ。
今回のステージは宮脇咲良や矢吹奈子、兒玉遥、朝長美桜に森保まどかといった、HKT48を代表するメンバーを欠いた布陣。そんな中で任された大トリ。指原は「裏でメンバーは泣いちゃうぐらい緊張してたんですけど、皆さんのおかげで最高のステージになりました」と振り返った。HKT48のステージはいつ見ても楽しい。それはどのメンバーであっても変わらない。今回はいつもと違うメンバーではあったが、HKT48イズムが全員に浸透しているということを教えてくれた。
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こうして「東京アイドルフェスティバル2018」は終了した。来場者数は8万人を超えた。平成最後の夏。最高だったのではないだろうか。
来年も、きっとここに戻ってくる。
アイドル業界、解散や卒業、マイナスなこともいろいろあるが、目の前で汗をかいて歌って踊るアイドルを見れば、そこに答えがあるはずだ。
何があったって大丈夫。ボクらの目の前でアイドルが歌ってくれている。
TIFで青春のきらめきを見せてくれるのだから。
また来年、お台場で会いましょう。約束のあの地で!