タレントのりゅうちぇるが妻と息子の名前をタトゥーに彫ったことをSNSで公開したところ、賛否が相次いだ。りゅうちぇるは「こんなに偏見のある社会どうなんだろう。(中略)変えていきたい」とコメント――。
タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。
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タレントのりゅうちぇるさんが両肩に妻子の名前のタトゥーを入れたことをインスタグラムで公開して批判されました。写真を見ると、アルファベットや赤いハート模様を彫ったようです。
「タトゥーを入れたら温泉やプールに入れなくなるので、巻き添えになる子供がかわいそう」という批判が多かったようなのですが、りゅうちぇるさんはそれに対して、自分たち夫婦は子供の顔を公開していないので、温泉やプールなどの人目の多い所には連れていかないと思うと反論。
温泉やプールに行くかどうかはりゅうちぇるさんファミリーが決めればいいことなんだから、他人が子供がどうとか言って口を出すことじゃないです。親戚でもないんだし。親戚でも鬱陶(うっとう)しいけど。
批判が起きた背景には、タトゥーは反社会的な人がするもので、なんだか怖いという心理があるみたい。確かにドクロや炎が全身に彫ってあるとかなりの威圧感で怖いけど、りゅうちぇるさんのは威圧感ゼロの図柄。怖いというには無理があります。
タトゥーを入れるにあたってはりゅうちぇるさんもずいぶん考えたようです。インスタグラムの文章によると、りゅうちぇるさんのお父さんも、息子の誕生に合わせて背中に龍(ドラゴンの姿)を彫ったのだとか。それを肯定的にとらえて育ってきたりゅうちぇるさんにとっては、今回の決断は自然なことだったのでしょう。
自分もお父さんと同じように家族を守る決意表明をしようと決断したわけですから、親への感謝と子供への愛情が込められたタトゥーなんですね。特別な思いがあるので、公開したのかも。
タトゥー写真への批判を受けて、りゅうちぇるさんは「こんなにも偏見されるのか」(原文ママ)とショックだったようです。タレントを一方的に好きになり、応援コメントを書き込むのも、相手の事情も考えずにダメ出しするのも、自分が見たいようにしか見ないという点では同じですね。
私が暮らしているオーストラリアではタトゥーを入れた人をよく見かけます。ファッションの一部という感覚のようです。そういえば以前、息子たちに、「ママ、僕たちがタトゥー入れたらどうする?」と尋ねられたことがありました。私は、色素を皮膚の下に入れるのは体によくないし、消したくなったときにお金と手間がかかる上にきれいには消えないからやめておけと答えました。
次男が「パパとママが死んだら、僕、ふたりの名前を腕に彫ろうかな」と言ったときは、ちょっとグッときてしまいました。
でもね、体に彫るのは健康によくないから、心に刻んでね。脳みそに刻んだものも消えないんだよと言って聞かせています。
わが家の場合は、そんな感じ。
●小島慶子(こじま・けいこ)
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。近著に『絶対☆女子』『るるらいらい 日豪往復出稼ぎ日記』(共に講談社)など