ついに開幕したプロ麻雀リーグ「Mリーグ」。約2000人のプロ雀士から選ばれた21人の初代Mリーガーの中で、最も注目を集めるのが、俳優でもある萩原聖人(まさと)だ。
プロ資格を取得し、「Mリーグ」で満を持してプロの舞台へと挑む萩原聖人が語った「麻雀との出会い」とは?
■おまえが考える麻雀道を進め
―麻雀との出会いはいつですか?
萩原 小さい頃に両親が離婚して、僕は父親と暮らしていたんです。小学生の頃、たまにしかおふくろに会えなくて。数ヵ月に1度、おふくろの家に行くと、僕が寝る時間になると隣の部屋でジャラジャラと音がして、おふくろとおばあちゃんが麻雀を始める。ボンヤリと「もっと遊んでほしいのに......」と、麻雀のことが嫌いでしたね。
―それが、自身も麻雀を打つようになったのは?
萩原 中学のときにクラスメイトに誘われたのが最初です。普段はよくトランプで遊んでいたんですけど、その日に限って「麻雀してみない?」と。カエルの子はカエルなのか、あっという間にハマりました。僕が「麻雀、覚えたんだ」って言ったときのおふくろとおばあちゃんの、めちゃくちゃ喜んだ顔、今でも覚えてます。「一緒に打てる」って。打ち筋は、おばあちゃんのほうが近かったですね。おふくろは、迷って迷って切るタイプだったんで。
―麻雀を始めたのは中学時代だったんですね。
萩原 人生って本当に不思議で。だから面白いんでしょうね。その同級生が麻雀を知らなかったら、僕が気乗りせず「トランプでいいよ」と言っていたら、僕は麻雀をやっていない。当然、Mリーガーにもなっていない。何げないあの一日が、人生のターニングポイントになっていました。
―今では『THE われめDE ポン』の歴代最多優勝13回を誇るまでになりました。
萩原 そうですね。最初に麻雀を打つテレビ番組から出演オファーが来たときは、事務所のほとんどのスタッフ、特に女性スタッフは「爽やか路線なんだから」と全員が反対で。
ただ、社長とは卓を何度か囲んだことがあって。毎回、あまりにも僕が真剣に打つんで、社長が僕の麻雀に何か感じてくれたのか、「道を行け」と出演を許可してくれたんです。麻雀が単なるギャンブルではなく、魅力ある競技だと信じるなら、その魅力が視聴者にも伝わる打ち方をしろ。おまえが考える麻雀道を進むなら番組に出てもいいぞと。その日から30年近く、その言葉を背負って、僕は麻雀を打ってきました。
―なるほど。
萩原 僕は配牌を見て夢を見るんです。視聴者にも同じように夢を見せたい。「この配牌が、最後はどんな手になるんだ」と。もちろん、勝ちたいです。負けていいと思って打ったことなど一度もないです。ただ、勝ち方が自分の勝ち方でなければ納得できない。逆に自分の麻雀を打って、それでも負けたのなら納得がいきます。
―事務所スタッフが心配したように、麻雀打ちというイメージがマイナスに働くこともありませんでしたか?
萩原 もちろん僕が麻雀にどんな思いを込めようと、麻雀が強いということが悪いレッテルになったこともあります。"麻雀=ギャンブル"で、徹夜だったり不健康というイメージもやはりついて回ったので。ネガティブなイメージにつながったこともある。
それでも僕は麻雀の魅力を信じて打ち続けたし、その魅力を信じてもらうには、麻雀で魅せ続けるしか説得力を持たなかったんで。そういった日々を積み重ねた結果、運命に導かれたのか、天啓かMリーグという舞台に立てることになったんだと思います。
―Mリーグ開幕が、麻雀界にとって新時代の幕開けとなりそうですね。
萩原 ついに、こんな時代が来たんですね。いつも旅のお供である『週刊プレイボーイ』で、麻雀について語る日が来るなんて夢のようです(笑)。ただ、新時代を迎える準備はできています。「ここでしょ。この日のために打ってきたんでしょ」とさえ思える。僕はプロになって数ヵ月しかたっていません。
ただ、見ていて面白い麻雀、魅せる麻雀を打ち続けてきた時間は、多くのプロにも負けない自負がある。だから、具体的な順位を口にするのは品がないかもしれませんが、僕のチームが優勝しなければ意味がない。同時に新規ファン獲得のために魅せなければ価値がないと思っています。ビッグマウスだと叩かれること、叶(かな)わなかったときのカッコ悪さを含め、全部を背負う覚悟です。
―優勝賞金は5000万円。ゲスな質問ですが、優勝したら何に使いますか?
萩原 もちろん賞金はもらえたらうれしいですが、優勝したら、それ以上の価値がある。それこそ誰かが死ぬ直前、妻や息子、友人に「大好きだった。幸せになってくれ」と伝えるようなタイミングで、「あの映画が好きだった」「あの歌手が好きだった」と人生を振り返る瞬間、もしも「萩原のあの一局、面白かったな」と思ってもらえたのなら最高ですよね。それは、間違いなく5000万以上の価値がある。そのためにも、魅せる、いい麻雀を打ち続けたいです。
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10月1日発売の『週刊プレイボーイ42号』では、この他にも「Mリーグ」への参加を決めた理由や、今年5月に逝去された伝説の雀士・小島武夫への思いなどを熱く語っている。
(写真提供/M.LEAGUE 衣装協力/AKM)
●萩原聖人 HAGIWARA MASATO
俳優。1971年生まれ、神奈川県出身。87年に『あぶない刑事』でテレビドラマデビュー以降、『若者のすべて』『白鳥麗子でございます! 』など、数々のヒット作に出演。近年は、映画・ドラマ・舞台のほか、ナレーションや声優といった声を使った仕事など、多方面で活躍している