『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回はガンダム好きの彼女が、オススメの"ガンダム漫画"について語ってくれた。
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少し前に、NHK BSプレミアムで『発表! 全ガンダム大投票』という番組が放送されていましたね。私は再放送にちらっと関わっただけですが、勝手ながらランキングにいろいろ言いたくなっちゃいました。
例えば、モビルスーツの人気投票ではザクⅡやジムなどの量産型が上位に入っていないんです。今は当たり前の存在ですが、ロボットアニメで量産機を広めたのがガンダムシリーズ。あのリアルな世界観を象徴する没個性的な兵器であり、"お味噌汁"のように存在している彼ら量産型をもっと大事にしてほしいです。
キャラクター投票の上位に女性が少ないのも気になります。ララァをはじめとする"魔女枠"こそ、ガンダムが打ち立てた新たなヒロイン像ではないでしょうか?
と、どの目線で言ってるんだという感じですが(笑)、次にやるならぜひテーマにして欲しいのが"ガンダム漫画"です。『月刊ガンダムエース』という専門誌があるくらい、ガンダム漫画って数え切れないほどあるんですよ。
なかでも私のイチ押しは『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム デイアフタートゥモロー ――カイ・シデンのレポート』、通称"カイレポ"です。『Z』の時代をカイの視点から描いた漫画で、アニメ版や映画版ではよくわからなかった曖昧な部分や矛盾点をキレイに埋めてくれます。
例えば、アニメ版でクワトロ・バジーナがシンタとクムという孤児を引き取る場面。「クワトロってこんないい人だっけ?」と疑問に思った視聴者は多いと思うんですが、このカイレポを読むと、実はカイが連邦軍に誤認逮捕されたことと関係があったことがわかるんです。ものすごくスッキリ!
次にオススメしたいのが『機動戦士ガンダム エコール・デュ・シエル 天空の学校』。ガンダム関連の作品の中では珍しく、主人公が女のコなんです。物語は、彼女がモビルスーツのパイロット養成所に入学するところから始まるんですが、その訓練の日々とニュータイプをめぐる陰謀が同時に進んでいって、とてもよくできたお話です。
何より、作者があの美樹本(みきもと)晴彦さんなので、女のコのかわいらしさと線の美しさは折り紙付きです! Zガンダム直前の話で、『Z』のメインキャラクターは登場しませんが、面白いです。
最後にご紹介するのが、ガンダムシリーズ初のオリジナル漫画である『MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝』。1984年に連載が始まった作品です。作者の近藤和久さんは、ミリタリー漫画の巨匠である小林源文(もとふみ)さんの影響を受けているそうで、メカニックな描写にものすごくこだわりを感じます。
この漫画の主人公は、ジオンの平凡な一兵士。彼らから見たガンダムは悪魔のように恐ろしい存在だったりと、視点が違えばなるほどそう見えるんだと納得させられます。また、「黒い三連星」のパイロットたちが出てくるんですが、彼らがすごくいい先輩だったりするところも感慨深いです。
3作ともガンダム愛にあふれている上に、宇宙世紀を舞台にしているので、1stや『Z』しか知らないという方にもきっと楽しんでいただけると思います。
●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21:00~)、MBSラジオ『市川紗椰のKYOTO NOTE』(毎週日曜17:10~)などにレギュラー出演中。"カイレポ"の続編は、「サイド3の一年戦争記念館で行なわれるイベントにアドバイザーとして招かれたカイが、一年戦争を知らない世代に戦争の真実を語る」という設定が秀逸