吉本実憂
主演の映画『レディ in ホワイト』が11月23日(金)より公開される。

これまで、映画『罪の余白』(2015年)では高校の同級生を追い込む残忍な美少女・木場咲役、ドラマ『クズの本懐』(17年)では優等生で可愛らしいイメージとは裏腹な影を持つ高校生・安楽岡花火役など、幾多の強烈なキャラクターを演じてきた吉本実憂だが、今作で演じる如月彩花は"クズ新人"。

就職面接には白スーツで現れた挙句に「私を採用して、損はない」と宣言、入社早々、先輩に「いぇ~い」とハイタッチを求めるなど、いわゆる"常識はずれ"だ。

この作品は、そんな新卒の彩花が、ホワイト企業だと思って入った会社で遭遇した、パワハラ上司からの嫌がらせや、毒を持った社員たちとの戦いに、より強い"猛毒"を持って挑む姿を描いた作品となっている。

あらすじだけ見ると共感できなさそうな彩花だが、吉本さん自身は、そのキャラクターに惹かれたという。撮影エピソードとともに、その真意を聞いた。

――今回演じたキャラは"クズ新人"というのも納得の破天荒ぶりでしたね。

吉本 最初台本を読んだときは、ちょっと変わった人くらいにしか思わなかったんですよ。でも大塚(祐吉)監督だから、思ってるようにはいかないんだろうなと思っていて、そしたら案の定ですよ(笑)。

吉本実憂が演じるのは、常識はずれのクズ新入社員、如月彩花

――以前、ご出演された『罪の余白』も大塚監督でしたよね。

吉本 信頼している監督さんなので、またご一緒できてうれしかったです。大塚監督は、正直に思ったことしか言わないんですよ。そんな、大塚監督に言われたんですけど、私には"闇"があるらしいです。『罪の余白』の最初のオーディションですでに見抜いていたみたいで。

――実際、ご自分には闇があると思われましたか?

吉本 はい。本当は暗いのに、いいコに見られようと自分自身を取り繕ってました。いまも多分そんな黒い部分を持ってるんですよ。でも、それはしょうがない。『罪の余白』の時に大塚監督に育てろって言われて、育てちゃったんだから。

そしたら今回「ブラックユーモアの塊のような人間をやってほしい」って言ってもらえたので、結果よかったです(笑)。

――そういう意味では、今回すごく演じやすかったんじゃないですか?

吉本 いえ、全然です! 彩花は明るくて、自由奔放だから私と真逆で。大塚監督に「こんな暗い女を明るく演じさせるのは大変だった」って言われました。

私、何か言いたいことがあっても、その場では言わず持ち帰るし、怒ることがあっても黙るんですよ。保育園のアルバムにも先生から「みゆちゃんは怒ったらすぐ黙る」って書いてあるんです。ホントに真逆。彩花がうらやましくなるくらい。

だから撮影前にリハーサルが4日あったんですけど、彩花のことは理解しているのに、最終日まで全然彩花になれてなかったんです。

――理解しているとは?

吉本 彩花は、大塚監督自身なんです。大塚監督に言われた彩花の性格とか、キャラクターのありとあらゆることを、ノートに書いていたんですよ。それを読み返していたら「これ、自分(大塚監督)じゃん!」って。だから厭味ったらしいセリフの時とか、大塚監督の表情を真似してました、鼻の上にシワをつくるんですよ。

――最終的には彩花になれたんですよね? それは何かあったんですか?

吉本 リハーサル最終日のお昼に大塚監督とご飯食べていたら、「もうなんかさ、どうでもよくない?」って言われたんです。「何を言ってるんだ、この人」と思ったけど、そのあと「彩花がうまく演じられたらお前のおかげで、うまく演じられなかったら俺のせい」って言っていただいて。それで、「ですね」って答えた後に、力が抜けて彩花がすーって入ってきたんですよ。

――すてきなアドバイスですね。映画ではゲスな上司や、従属性毒社員・高圧的毒社員・放置性毒社員といった有毒社員たちとのバトルが描かれていますが、ご自身がその場にいたら彩花のように戦いますか?

吉本 無理ですね、たぶんひとりで抱え込んじゃって誰にも言えないかな。でも完成した映画を観て、"みんなかわいそう"、なんかそう思いました。それぞれの正義というか主張は間違ってないから、社会って何が正しいのか正しくないのかわからないなって。

――世代間のギャップや立場の違いがあるから、難しいですよね。

吉本 そうなんですよね。でも演じているときは、申し訳ないですがなんとも思わなかったです。「何怒ってるの、さんぺいちゃん(上司)」とか思ってたり。

あと、改めて見ると、彩花が一番ピュアにホワイトに生きてる女のコだなって思うんです。自己中だと言われるし、黒い部分もいっぱいあるし、毒も持ってるけど、自分のルールはちゃんと守ってるんですよ。だから輝いてるんだなって。

――彩花の成長も描かれていますが、大人になって自身も成長したと思う点はありますか?

吉本 人の目を気にしなくなったことですね。笑いたいときに笑って、泣きたいときに泣いて、面白くなかったら普通にすんってしてるっていうのが、前は誰かに見られてるからと思ってできなかったけど、それがなくなりました。あと、きれいにしゃべるってこともなくなりましたね。

――きれいじゃないというと、「おい、お前!」とか言うんですか?

吉本 違う違う、そういうことではないです(笑)。「お前」って言われるのも嫌いだし、言うのも好きじゃないんですよ。よく奥さんに「お前」って言う人いるじゃないですか、あれがすごい嫌い。そうじゃなくて、前は一から順序立てて話をしていたけど、今は、思ったことをそのまま言うようになったんです。

――なるほど、思ったことを素直に伝えられるようになったということですね。ちなみに撮影中、他の演者さんと印象に残っていることはありますか?

吉本 吹越(満)さんがセクシーでした! なんか色気というか、一緒にお芝居をしていると台詞の上だけじゃなく感情すらもリンクしてくる感覚でした。すごいかっこいいしセクシーだなとキュンとしました。オフショット用の撮影をしていたら吹越さんが来て、「一緒に撮ろうよ」って言ってくれて、めちゃめちゃ大切にしてます、写真。

――吹越さんは男から見ても色気を感じますよね。ありがとうございました。では最後、読者に映画の魅力をお伝えください!

吉本 理不尽さとか失礼さにムカムカする場面もあるかもしれないですけど、スカッとして笑える内容になっているので、ぜひ見てください!

●吉本実憂(よしもと・みゆ)
1996年12月28日生まれ 福岡県出身
○2012年、第13回全日本国民的美少女コンテストでグランプリを受賞しデビュー。2013年に結成されたガールズユニット「次世代ユニットX21」では、リーダーを務めた。2014年7月に読売テレビ『獣医さん、事件ですよ』で女優デビューを果たした。主な出演作に映画『罪の余白』、ドラマ『クズの本懐』、NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』など。2019年1月18日公開の映画「めんたいぴりり」にも出演する。その他最新情報は公式Twitter【@MiyuYoshimoto】、公式Instagram【@miyu_yoshimot_official】、公式ホームページでチェック!