面白い番組をお茶の間に届けたいという熱意ゆえの過ちなのだろうと思います 面白い番組をお茶の間に届けたいという熱意ゆえの過ちなのだろうと思います

『世界の果てまでイッテQ!』内の、宮川大輔が「お祭り男」に扮し世界の祭りを訪ねる人気企画でヤラセ疑惑が浮上。報道を受けて日本テレビは謝罪する事態に。そして、当該コーナーも休止になった。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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テレビはびっくり箱だから、うんと珍しいものやとびきり面白いものを見せなくちゃ。番組を制作している人たちはかなりまじめに懸命に、そう思って仕事をしているのだと思います。20年以上前にテレビ局に入社した私は、自分もそういうものを作る側の仲間になりたいと思っていました。 

当時はまだ、テレビはキラキラした憧れの詰まった世界で、うんとお金のかかった特別なものを見せてくれる娯楽の王様でした。テレビ番組制作者はもしかしたら、いまだにその頃の「テレビらしさ」で自縄自縛になっているのではないかと思うことがあります。

日本テレビの『世界の果てまでイッテQ!』で、実際には存在しない祭りを番組がお金を出して開催して、あたかもその土地のお祭りであるかのように紹介した件についても、初めから嘘をついてやろうとしたのではなく、面白い番組をお茶の間に届けたいという熱意ゆえの過ちなのだろうと思います。人気コーナーなのにネタが切れてしまってはもったいないと、禁じ手を使ってしまったのでしょう。

でもいくら面白くても視聴者は嘘をつかれたと思うだろうし、ありもしない祭りをその国の文化のように紹介するのも問題がありますよね。 

いっそネタ切れしたらしたで、そうそう珍しい祭りなんてないので逆に新しい祭りを世界で開催するコーナーにしまーす、と言ってしまったらどうだったのかな。視聴者も見ながらうすうす「これ本当かな」と感じていたかもしれないし。

私が幼い頃には川口浩探検隊シリーズなど、子供心にも「いやここで唐突に蛇が降ってくるのはおかしいよね」などといくばくかのうさんくささを感じつつも、それ込みで楽しんでいた番組がありました。お笑い番組も今思えばずいぶんムチャな企画がたくさんあったように思います。でもそれを「昔はよかった。今は窮屈になった。これじゃ面白いものは作れない」って言ってもしょうがない。

インターネットテレビでは放送法に縛られないから「とんがったことやろうぜ」とスタッフも盛り上がるようですが、安易な先祖返りを新しい表現と勘違いしてしまうと落とし穴に落ちちゃう。なかには、ムチャすることがカッコいいという妙な強迫意識にとらわれた人もいます。

あと、テレビらしさを裏切らなきゃ、とか。テレビが憧れでも権威でもなくなった今となっては、テレビらしさを裏切る作り自体が古くさく見えてしまうことも。

昔はアリだった表現が今は炎上してしまう。テレビ全盛期のおきて破りの派手な面白さよりも、地味でも正直なほうが今はむしろ好感度が高いのかもしれません。とか言ってると、おまえちっともテレビをわかってないなあ、って業界の人に怒られちゃうのかな。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日本とオーストラリアを往復する出稼ぎ生活を送る。近著に『幸せな結婚』(新潮社)、『絶対☆女子』(講談社)など

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