香港のイベントにゆでたまご・嶋田先生が登場!

去る12月14~16日の3日間、香港にて開催されたトイフェスティバル「亜州玩具展 TOY SOUL 2018」に『キン肉マン』の作者・ゆでたまご嶋田隆司先生が招待され、ステージ上でのトークショーイベント、及び現地ファンに向けてのサイン会に登場した。

「亜州玩具展 TOY SOUL 2018」はフィギュアを中心にアジア各国の様々な最新ホビーがずらりと並ぶ大規模展示イベントで、日本からもバンダイや海洋堂といった有名メーカーがブースを出展。

その中で『キン肉マン』関連のフィギュアでは日本でもおなじみのファイブスター・トイ、CCP、Spice Seedなどの各メーカーが、現地法人である工匠堂の呼びかけの下に集まり『キン肉マン』専門ブースとして共同出展。日本未発売のものも含む各社の最新商品が多数展示、販売された。

その会場内に設営されたステージイベントのひとつとして、今回、専門ブースが設置された『キン肉マン』の作者として招かれたゆでたまご嶋田先生。

ゆでたまご約40年のキャリアの中でも香港でのイベントは今回が初めてということで、長年待ち望んでいたという多数の現地ファンが詰めかけ、開始前からステージ前はファンの熱気で大盛況だ。

近年のSNSの影響もあり、『キン肉マン』は世界に伝わっていた!

そして現地時間の12月15日13時、いよいよ待望のトークショーがスタート。

司会のコールを受けて嶋田先生が「你好(ネイ・ホウ)」と広東語で挨拶しながら登壇すると、会場からも同じく「你好(ネイ・ホウ)」の大合唱と盛大な拍手が沸きあがる。

続いて拳を振り上げ『キン肉マン』の現地読みである『筋肉人(ガン・ヨン・ヤン)』と発音しようとした嶋田先生だったが、この日のために覚えてきたという発音をここでまさかの失念!? 最初の『筋(ガン)......』で止まってしまうが、観客たちはすぐにその意図を察して大爆笑。直後に通訳の方から耳打ちされ、照れ笑いを浮かべながら『筋肉人(ガン・ヨン・ヤン)!』と言いきったところで、会場は改めて拍手喝采に包まれた。

その後、嶋田先生と会場の間で『筋肉人(ガン・ヨン・ヤン)!』のコール&レスポンスが3回繰り返されるという、ハプニング冥利(?)に尽きた温かい雰囲気でトークショーがスタート。

香港の印象を聞かれた嶋田先生は、「子供の頃からブルース・リーが大好きだし食べ物も美味しいしで、個人旅行では何度も来ている大好きな街」。さらに会場のファンに向けて「僕はSNSをやっているんだけど、海外でも特に香港のファンはSNS上で熱心に『キン肉マン』オフ会の様子や自慢のコレクション写真などを上げてくれている人が多く、実際にどれだけ盛り上がっているのか自分の目や耳でずっと確かめてみたかった。今日のこの盛り上がりを見て、それをようやく確認できたのがとてもうれしい。香港のファンの熱気はすごい!」とファンの熱量に対しての感謝の気持ちを呼びかけた。

また「作中で好きな超人は?」との問いには「『キン肉マン』にはテリーマンやらウォーズマンやらたくさんの超人がいて、僕の中でも色々と移り変わりがあるんだけど、年を重ねた今になって思うのは、やはり主人公のキン肉マンが一番好き」と回答。

そして来年2019年にいよいよ迫った『キン肉マン』連載開始40周年イヤーに向けては「日本で、まだここでは言えない様々なイベントも企画されているが、ひと足早く12月の頭から、東京の新宿で『キン肉マン酒場』というお店が開店していて、連日予約が取れないほどの超満員で盛り上がっている。1月下旬までの期間限定だけど、もし日本に観光に来られることがあれば、香港の皆さんにも自信をもって紹介できるお店なのでぜひ訪れてほしい!」と、香港の熱気に負けない日本の盛り上がりもアピールした。

『キン肉マン』の現地での人気ぶりがうかがえる

その後、この日のステージイベントに先駆け香港のファンに向けて開催されていた募集企画「超人カラーリングコンテスト」の上位入賞者が同ステージ上にて発表。

これは用意された既定の様々な超人の線画に各々自由に色を塗ってもらい、そのセンスを競うというコンテストで、ファン投票賞、及びゆでたまご嶋田先生が選ぶ作者賞の二部門で選出。応募総数100通以上の中から選ばれた上位4名のファンに、嶋田先生から表彰状と記念品の授与式が執り行なわれ、この日のステージは終了。

さらにトークショー後は詰めかけた大勢のファンに向けてのサイン会も数回に分けて開催され、この日のイベントは終始、ファンとのふれあいに満ちた大盛況のうちに幕を閉じた。

実際、現在の香港で『キン肉マン』という作品はどのように捉えられているのか。

この日のイベントに訪れた多くのファンの中から、香港で『キン肉マン』私設ファンクラブを立ちあげ運営しているというKINNIKU Zさん(以下、Z)と、その会員で先の「超人カラーリングコンテスト」の入賞者でもあるDALLA LEEさん(以下、D)のおふたりに話を伺うことができた。

――香港人であるおふたりが最初に『キン肉マン』を知ったのは、どういうきっかけだったんですか?

 子供の頃に見たアニメですね。最初は1986年だったと思います。とても面白い作品だと思ったんですが、香港に入ってくる情報はやはり少なくてそこに飢えていたので、じゃあ自分で人に呼びかけて情報を集めようとしたんです。そういう活動を1991年くらいから個人で始めるようになったんですが、大きな転機になったのはWEB上でファンサイトのようなものを作ったところですね。それが1999年のことです。

――それがKINNIKU Zさんの立ち上げられたファンクラブの元に?

 そうですね。「キン肉マンファンクラブ香港」と名乗るようになったのは2年前とつい最近なんですが、元はそこに集まってきた人たちから始まって、ずっと交流活動を続けています。今では1000人以上の会員がいて、毎月29日にはその中から有志が集まってオフ会を開いて情報交換をしています。

――1000人以上とは大規模ですね。毎月29日開催というのもなかなかシャレが効いてますが、そのオフ会ではどのようなことをされているんですか?

 まさに情報交換ですね。そもそも日本から香港にまで入ってくる情報やグッズも豊富なわけではないので、各々が掴んでいる情報が本当に正しいものなのか、そのすり合わせをやっているという感覚です。

 あとはコミックスも、広東語に訳されたものはもう絶版になっていて品薄ですし、38巻以降の新章に関しては広東語の翻訳版は発売すらされていません。だから週プレNEWSで連載されている最新話も含めて今の新しい話は日本語版を読むしかないんですが......。

――週プレNEWSの毎週の連載も見てくれているんですね?

 もちろんです! でも言葉がわからないので絵でしかストーリーが想像できない。だけどそこが面白くて、オフ会の際にそれぞれが想像した内容を話し合って、どんな展開になっているのか納得しあうということをしています。

――言葉の壁がかえってコミュニケーション促進の材料になっているというのは面白い現象ですね。

 でも一番はやっぱり正式に広東語のコミックスを出してもらえたら、みんなうれしいんですけどね(笑)

――わかりました、集英社に伝えておきます! ちなみに香港で人気の超人は?

 香港で人気ということだと、キン肉マングレートとウォーズマンでしょうね。

――なぜそのキャラクターなんでしょう?

 グレートは顔がカッコイイですからね。キン肉マンは主人公だけど顔はコミカルで三枚目。でもグレートは同じキン肉マンなのに二枚目で渋いのがグッと来るという意見をよく聞きます。キン肉マンの強化版という認識で捉えている人も多いようです。

 それとウォーズマンが人気なのは香港のアニメ事情が大きいと思います。『キン肉マン』のアニメは、実は香港では2回目の超人オリンピックまでで終了になってしまっていて「7人の悪魔超人編」以降は放送されなかったんです。だからウォーズマンがキン肉マンの最大の敵だと思ったまま育った人が多くて、それで今でも人気が高いというのはあると思います。

Z あとはやはり中国の超人なのでラーメンマン。でもモンゴルマンになると国が香港からかなり遠く離れてしまうので......ラーメンマンの姿の方が愛着はありますね(笑)。

――なるほど。それはまさに香港ならではの事情ですね。最後に今回、イベントに来場されたゆでたまご先生に香港のファン代表としてメッセージをいただけますか?

 『キン肉マン』を作ってくれてありがとうございます、というひと言に尽きますね。しかもただの昔懐かしい作品じゃなくて、今も新しい話がどんどん作られていて読めるというのも大きなことで、そのおかげで今でも子供の頃に戻ったような感覚で仲間と話ができる。それが僕らにとってはこの上ない幸せです。どうかこれからもずっとお元気で連載を続けてもらえますよう香港からも祈ってます。頑張ってください!

イベント終了後、控室に戻られた嶋田先生に、そんな熱気にあふれた香港ファンと直接触れ合ったご感想を改めて聞いてみた。

嶋田 不思議ですよね。まだ高校生だった僕と中井君が大阪の片隅で始めたことが、日本を飛び出て外国にまで届いて、こんなたくさんの人に喜んでもらえているというのは。僕ら、漫画家になるとき「日本一の漫画家になる!」というのは確かに目標として言ってたんです。でも世界までは考えてもいなかった。だから今日のこの様子は未だに夢うつつですよ。もちろんステージでも話したように香港の『キン肉マン』ファンがめちゃくちゃ熱いというのは前からSNSなどで伝え聞いてて、一度はどんなものか作者として見ておきたいという気持ちで来たんです。でも実際に来てみたら......想像を遥かに超えてましたね。

面白いと思ったのは、日本でサイン会をすると作者と一緒に写真を撮りたいというファンが多いんですけど、こちらのファンはキン肉マンの着ぐるみと一緒に写真を撮りたいという人が多かった(笑)。要は単に僕が来たのが珍しいということじゃなくて、それだけ作品のことを愛してくれて、そのヒーローが香港にまで来るのを待っててくれてたんですよね。それが僕としてはむしろ誇らしかった。来年の40周年に向けて、また新しい元気をもらえたという気持ちです。頑張ります!

いよいよ翌2019年は『キン肉マン』連載開始から40年という節目の年。

中国に古くから伝わる故事成語「老いてはますます壮(さか)んなるべし」を地で行くどころか、それ以前の「老い」すら感じさせないエナジーを放ち続けるこの作品の展開から、来年以降も目が離せそうにない。

(撮影/KOUSHOUDO WONG YUE HIN JOACHIM)

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