会見に出席した(左から)高田明美、大河原邦男、天野喜孝、秋本治、布川ゆうじ

秋本治天野喜孝大河原邦男高田明美による展覧会『ラフ∞絵』の発表会が、12月28日に東京・神田の「3331 Arts Chiyoda」で行なわれた。

『ラフ∞絵』はマンガのネームやアニメの絵コンテなど、完成前の下書きであるラフを展示。製作過程のものであり、本来は陽の目を見ることがないもの。

今回参加した4人と同展示会のプロデューサーを務める布川ゆうじ、声優の平野文が食事会をした際に、「せっかく集まったメンバーで、一緒にやりたいね」と声が挙がり、その際に描いた「誓いの色紙」を後日見て、「ラフだ!」と決めたそう。

その扱いはさまざまで、秋本は「『こち亀』は捨てるのが面倒でとってあった」、天野は「イラストを始めた30代のものはあった」、高田は「改めて二次元オタクだと思うほど、捨てられない。『金目のラフ』と呼ぶくらいいい表情のものもある」という一方で、大河原は「ラフは何の価値もないので廃棄している」とバッサリ。しかし、「たまたま企画だけで放映に至らなかったもの、巡回展やクライアントから保存をお願いされたものはある」とより貴重なものが存在しているようだ。

平野が持参した「誓いの色紙」。『タイムボカン』のグロッキーは布川によるもの。その場にいた7人(食事会会場のシェフ含む)にそれぞれ配られた

大御所と呼ばれる4人だが、実はアニメ制作会社「タツノコプロ」の出身。40年以上前に一緒に仕事をしていた"同僚"。トークでは、それぞれタツノコ時代を思い起こした。

高校時代、アニメに憧れて同社に入社した秋本は「とにかくアニメーションは楽しい。みんなで和気あいあいと共同で作るのはマンガと全然違ってカルチャーショックだった。特に社員旅行でみんなと親しんできた」と回顧。

しかし、天野は「僕はまったく逆でして、嫌いだった」と断言。ただ「相模湖のホテルで1週間くらい缶詰になるんですけど、とにかく逃げだしたかった。でもフリーになってタツノコのよさ、いい加減な自分でいられるような安心感がすごくあった」と同社への恩を口にした。

そして「アニメや漫画に一切興味なくこの業界に入った」という大河原は、「入社してすぐガッチャマンのタイトルロゴが通り、中村光毅(みつき)さんから誘われメカ専門になったので、この仕事の楽しさはここに入って知った」と47年前を想起。その長い経験のなかでも、「『ガッチャマン』のミイラ巨人は途中で壊れて、骨格がすべて見えるんですけど、天野さんのデザインを基に中身をデザインしたのが、すごく印象に残っています」と明かした。

3人が楽しかった思い出を挙げるなかで、高野は「私がキャラクター室に入ったときは室長が天野さんで、演出の人が私を紹介する時に『キャラトレースの高田さん』と言っていて。先輩のものをクリーンアップしていたけど、自分のキャラも描いていたので、ムッとしたんですよね」と暴露。しかし「それが先輩たちと並んで展覧会に参加できるのは布川さんのお陰です。ありがとうございます」とうれしそうに語った。

「誓いの色紙」の別バージョン。構図やキャラクターも変わっている

今回の『ラフ∞絵』には、もうひとつ目玉がある。それが「チェンジ&チャレンジ」と題した、自身のキャラクター以外を描く企画だ。この日はそれぞれがその1枚を公開。

タツノコプロ時代にも描いていた『科学忍者隊ガッチャマン』の白鳥じゅんを披露した秋本は「かわいいんですよ。すごく魅力的で(当時)じゅんばっかり描いていましたね。そういう思い出も込めて描きました」と選んだ理由を説明。

天野は「生まれて初めてガンダムを描きました。油絵も(初めてで)スタッフに教えてもらいながら」とモノクロのガンダムを公開。"初めて尽くし"の理由に「なぜやったかというと、今回は4人でやるということで責任がないかなと思って、ちょっと楽しくやりたいなと。だからのんびり、こういうところで出させてもらいました」と率直に話し、周囲を笑わせた。

そして大河原は『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の両津勘吉をロボット化。「私はデザイナーなんで硬い絵しかかけないんですけど」と謙遜しつつも、ギャグ、シリアス、スーパーロボットの3種類(犬はおまけ)を描き、「アニメのメカはいろんなものをくっつけて子供の脳裏に印象を残す作業。これを描きながら自分自身も楽しんでいました」とプロとしての矜持を示した。

最後の高田は「すいません、まだ私チャレンジしていないんです」と恐縮しながら過去に描いたガッチャマンを披露。「そもそもガッチャマンのファンで大学生時代に月1回見学に行っていて、それで入社したので、そういう縁でこれを出すのがいいのかなって」と明かした。

『ラフ∞絵』は2019年4月2日(火)から16日(火)まで、東京・神田の「3331 Arts Chiyoda」で開催。

4人の巨匠がそろうだけでも豪勢な今回の企画。さらにラフ絵の公開、互いのキャラクターを描くという通常では起こりえない試みだ。「この切り口でやることはほとんどないので、そのアイディアは一回で終わらせないほうがいい。巡回したほうがいい」と大河原は語った。