テレビのバラエティ番組や、M-1などの賞レースで活躍しているわけではないが、SNSでのネタ投稿は次々とバズってフォロワー数はうなぎ上り。そんな新世代の"SNSブレイク芸人"3組を直撃!
おほしんたろう、ガーリィレコードに続く3組目は、沖縄の海から思いを叫ぶ、せやろがいおじさんだ。彼が目指す、他の芸人とは全く違う今の時代だからこその売れ方とは?
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真っ赤なふんどしをはいて沖縄の海に向かって物申す動画で話題の、せやろがいおじさん。無償で五輪ボランティアを募集することに対して物申す動画が今年の夏にツイッターで拡散され反響を呼んだ。彼の正体は沖縄県で活躍するお笑いコンビ、リップサービスのツッコミ担当・榎森耕助(31歳)だ。
――YouTubeチャンネルに動画を上げていますが、もともとYouTube発? それともツイッター発?
榎森 YouTubeですね。沖縄で芸人をやっていても限界が見えてしまうんです。海を隔ててる分、簡単に本土に行けないし、逆に本土から見に来てもらうのは難しい。そこで、ネットなら海を簡単に越えられると思い、収入を得ることを目標にYouTubeチャンネルを開設しました。
最初はドッキリ企画やネタ動画を投稿していましたが全然注目されず、去年1年の広告収入は5万円程度。そこで、認知してもらうためにツイッターも始めました。せやろがいおじさんの動画がツイッターで拡散されてから状況が一変して、直近の月でYouTubeの収益が月に20万円になりました。もちろん、そのすべてが僕の手元に入るわけではないですが、やっと光が見えてきた感じですね。
――バズるために行なった工夫は?
榎森 インパクトを意識しました。タイムラインを見るとき、人ってすごい勢いでスワイプしていくじゃないですか。そこで一瞬手を止めてもらうには強烈なインパクトが必要。だからこそ、赤い衣装にふんどし、そして巨大なテロップを使いました。
――ただの風刺にとどまらない、建設的な意見も言う動画が多いですが、社会に何かしらの影響を与えたいですか?
榎森 動画を上げるといっぱい批判的なコメントが来るんですけど、僕の中で3つに分かれてて、ひとつ目は「こいつの顔生理的にムリ」みたいにただ文句を言いたいだけ。キツイですけど、これはスルーでOK。ふたつ目はちゃんとした指摘で、これは僕が問題点に気づけて勉強になります。3つ目が一番やっかいなんですが、いい指摘なんだけど言葉が汚いケース。この場合、それを見て周囲の人もその話題に対して萎縮してしまいます。
でも面白かったのは、こういった人に真剣に対応をしてみると、意外にも言葉の角がとれて丁寧に話してくれるようになるんですよね。
相手の意見を認めながら前向きな着地点を探り合う人が増えて、ネットが少しでも穏便で建設的になったら、ずうずうしいかもしれませんが、自分が動画を上げている意味があるのかなと思います。
――コメント欄で対話が生まれて、前向きな結論が出るのが理想だと。
榎森 そうですね。今ちょっと考えてるのはオンラインサロン。僕のこの考え方に同調してくれる人が集まって時事問題を語り合う場をつくりたいと思っています。
――東京や大阪に出て、下積みを経てテレビに出て......という形で売れようとは思わなかったんですか?
榎森 自分は関西出身ですし、もちろんその選択肢もありました。でも都会に出てみると芸人だらけで、かつ芸人の仕事も少なくなってきています。経験を積む場所を得るだけでも大変という状況のなか、すでに沖縄で仕事を持たせてもらっていたので、こっちで経験を積みながらネット上で活動して、賞レースで勝つのとはまた違う売れ方を目指すのもアリかなと思ったんです。
――従来の芸人さんとは売れ方もお金の稼ぎ方も違っていますね。
榎森 もしお金持ちのファンがいたら、今の時代ならそれだけでも生活できるなって思います。実際自分はM-1の1回戦の帰りの旅費をクラウドファンディングサービスのpolcaで調達しました。
沖縄のお笑い芸人って、ホントにギャラが安いんですよ。何時間も拘束されて何百円みたいな世界で。そんななかで芸人を続けられる仕組みをITの方々がつくってくれてるので、僕もそれをしっかり利用させてもらってます。いい時代に芸人をやらせてもらえてると思いますね。
●せやろがいおじさん
真っ赤なTシャツにふんどし姿で、沖縄の海をバックにして時事に物申したり、日々の雑感を叫ぶ動画を投稿して今夏バズった芸人。正体は沖縄県で活動するお笑いコンビ、リップサービスのツッコミ・榎森耕助。ツイッター【@emorikousuke】は約8万2000人のフォロワーを抱える