シルクハットをかぶった近世ヨーロッパ貴族風(山田)と、その召し使い風(相方・ひぐち君)のいでたちで行なう貴族漫才を確立した髭男爵。「ルネッサ~ンス!」というフレーズとともに、2008年頃からブームを巻き起こす シルクハットをかぶった近世ヨーロッパ貴族風(山田)と、その召し使い風(相方・ひぐち君)のいでたちで行なう貴族漫才を確立した髭男爵。「ルネッサ~ンス!」というフレーズとともに、2008年頃からブームを巻き起こす

毎年、彗星(すいせい)のごとく現れる一発屋芸人。流行語大賞にノミネートされたりコスプレ衣装が爆売れしたり、一世風靡(ふうび)したかと思えば、これまた彗星のごとく消えていくべき存在なのか......?

否! 今、世間から「一発屋」の箱に入れられた男たちが、ブレイク当時とはまた違うベクトルで光明を見いだし、平成の次の時代での再ブレイクを虎視眈々(こしたんたん)と狙っているのだ! 新時代を迎える2019年に再ブレイクの兆しがビンビンする男たちに迫った!

■プロも認めた引き込ませる文章

トップバッターは、昨年5月にノンフィクション作品『一発屋芸人列伝』を上梓(じょうし)し、「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」受賞という、芸人初の快挙を成し遂げた、髭男爵の山田ルイ53世さんです。

──失礼ながら世間では、そんな文才があったのか!?と驚いている人も多いように思いますが、文筆業を始めたきっかけは?

山田 僕、中2からの6年間、引きこもっていたんですよ。で、そのときのことを書いてみませんかというご提案を受けて、『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)という本を2015年に出したのが最初ですね。

その後に『一発屋芸人列伝』の話をいただいたんですけど、生意気にも初めは乗り気じゃなかったんですよ。だって一発屋が一発屋をインタビューするって、傷をペロペロ舐(な)め合う感じにならへんかなって懸念してたので。

──ですが、波田陽区さんのパートなどは特に、容赦ない辛辣(しんらつ)な言葉が並んでいましたよね。それでいて深い心情理解もあり、舌を巻きました。

山田 この本のテーマである"一発屋"に、僕は言うたら10年ぐらい潜入取材していたようなもの(笑)。だから、そこはどんなに文章がうまい本職の物書きの人よりも、深く深く掘って書けるアドバンテージがあったってことですね。

あと、「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」もろうたりしましたけど、これは僕の文才がどうこうではなくて、取材させていただいた芸人たちの芸と人生が、ノンフィクションにも堪える肉厚なものだったってことなんですよ。

──書評家の吉田豪さんも、その文才を絶賛するほど、"引き込ませる文章"でした。

山田 これは勝手にお名前を出していいのでしょうか(笑)。僕がツイッターでエゴサーチをしていたら、吉田豪さんがなんか褒めてくれてて。これはうれしかったです。とりあえず書く仕事を受けてもいいのかな、資格はあるのかなと実はひそかに僕のモチベーションになっています。

■レベルが低いネタというのは見当違い

──ストレートにお聞きしますが、芸人界において一発屋とはどういう存在ですか?

山田 仮に芸人の力を五角形のグラフで表したとして、テレビで売れっ子になれる人は、その5つの力が満遍なく高いんやと思う。それに対して一発屋はグラフがいびつで、やはり足りなかった部分があるんだろうと。

それは認めます。でもね、誰かから「おもしろくない」って言われたら、僕は「いや、おもしろいわ! おもしろいから売れたねん!」と反論しますよ。

──「力が足りない部分がある」ことと「おもしろくない」ことは、イコールではないと。

山田 ブレイクした当時のパフォーマンスは絶対におもしろかったし、それを創り出す才能があるんだってことを、まず言いたい。でも、やっぱり一発屋は軽んじられる、舐められる存在なんですよ。

──その理由は?

山田 ブームになると、ハロウィンとか忘年会向けに、すぐコスプレ衣装が大量に売り出されるじゃないですか。それを着れば、技術や魂がなくても見よう見まねで笑いも取れる。ここで勘違いされちゃってると思うんですけど、「誰でも簡単にまねできる」ことは「レベルが低いネタ」ってことではない。「非常に高度にパッケージ化されたネタ」ってことなんです。

いうてみればレトルト食品みたいなもの。ご家庭で誰でも簡単に本格的な味が再現できるめっちゃすごい発明なのに、軽んじられてしまうじゃないですか。レトルト食品のように、本当はすごいけど舐められてしまうもの......それが一発屋の芸だと僕は思ってます。

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説得力ありすぎ! そんな考察力の高さが今また評価を高めている理由に違いない!

総勢11人(組)の一発屋芸人たちに、自身も一発屋である山田ルイ53世が追跡取材を敢行した話題作『一発屋芸人列伝』(新潮社) 総勢11人(組)の一発屋芸人たちに、自身も一発屋である山田ルイ53世が追跡取材を敢行した話題作『一発屋芸人列伝』(新潮社)

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