芸能人はファンの奴隷じゃありません 芸能人はファンの奴隷じゃありません

モーニング娘。'19の佐藤優樹がラジオ『ヤングタウン土曜日』で、「(水着になることを)軽々しく考えている脳みそをどうにかしたほうがいい」などと発言し、話題に。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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アイドルが水着を拒否しちゃダメなんでしょうか。モーニング娘。'19の佐藤優樹(まさき)さんが「水着になるのがいやだ」と発言したことに注目が集まっていますね。プロなんだからわがまま言うなとか、ファンの期待に応えるべきとかいろいろ意見があるようで。でも、いやなものはいやなんだからNOと言っていいと思います。アイドルの体は事務所のものでもファンのものでもないのだし。

自分の体をどうするか、水着を着るか着ないか、見せるか見せないか、アイドルだろうが普通の人だろうが、みんな自分で決めていいんです。人に見られる仕事なんだから当たり前、なんておかしい。芸能人はファンの奴隷じゃありません。「プロとしての覚悟を」なんて説教するあなたはいったい何目線?

佐藤さん以外にも、Juice=Juiceの金澤朋子さん、元AKB48の島崎遥香さんなど、水着になりたくないと拒否したアイドルはいます。本当に彼女たちのことを応援している人なら「ファンが望んでいるのだから水着になれ」なんて言わないはずですよね。

人気商売の芸能人も、ファンと同じ人間です。したくないことはしたくないと言っていいし、NOと言う権利があります。芸能界のお約束に従えと言うのではなくて、芸能界のお約束はおかしいと指摘するのが心あるファンではないかと思います。

アイドルだけではありません。女性芸人は容姿をいじられるのが当たり前になっていますが、アジアンの隅田(すみだ)美保さんはそれを拒否してテレビに出なかった時期があります。にゃんこスターのアンゴラ村長さんも「顔や生まれなど変えられないものをいじる笑いは古い」と発言。

男性でも、ほんこんさんは「ブサイクいじりをやめろ」と発言しています。最近は容姿や性別などのいじりに対して視聴者から批判の声が上がることも少なくありません。

あなたも「こんな服着たら、イケメンでもないのに勘違いしてるんじゃねえよと笑われるかな」と気にしたり、プールで見かけた女性を「ブスのビキニとかありえない」「ババアの水着は見たくねえわ」と笑ったことがあるかも。けど、人は誰かの鑑賞物ではないですからね、自分が着たいものを着ていいんですよ。

あなたは周囲の人を納得させるために服を選ぶ必要はないし、プールで泳ぐ女性はあなたを喜ばせようとして水着を着ているわけじゃない。単に、着たいから着ているだけ。それがあなたの好みと合わないからといって、迷惑とか見苦しいとか、女性を叩くのは勘違いも甚だしい。

人権って言葉は堅苦しく感じるかもしれないけど、これってまさにそういう話。自分の体は自分のもの。アイドルも芸人もあなたも、自分のことは自分で決めていい。誰の所有物でもないんですから。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が2月26日(火)に発売中

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