映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』のクライマックスは感涙もの

クイーンのフレディ・マーキュリーを演じた俳優のラミ・マレックがアカデミー賞主演男優賞を受賞。エジプトからアメリカに移り住んだ両親の元に生まれたラミの人生は、フレディに通ずる部分も。

タレントでエッセイストの小島慶子が、世間の気になる話題に思うあんなこと、こんなこと。

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クイーンにはまったくなじみのなかった私ですが、飛行機の中で見た『ボヘミアン・ラプソディ』にダダ泣き。ゾロアスター教を信仰するインド人の両親の元に生まれ、アフリカのザンジバルで育ってイギリスに移住したフレディ・マーキュリーの生い立ちを映画で知ってからは、なんとなく耳にしていたクイーンの曲が特別なものに聴こえるようになりました。

というのも、私の一家も今はいわば移民だからです。息子たちは、日本人の両親の元に生まれ、小学生のときにオーストラリアに移り住みました。豪州社会ではマイノリティの日本人として、この先アイデンティティに悩むこともあるでしょう。

『ボヘミアン・ラプソディ』の演技で今年のアカデミー賞主演男優賞を受賞したラミ・マレックはエジプトからアメリカに移住した両親の元に生まれ、4歳まではアラビア語をしゃべって育ったそうです。授賞式では「こんな日が来ることを幼い頃の自分に教えたら、巻き毛頭がぶっ飛ぶほど驚くだろう」とスピーチし、会場にいる母親に感謝の言葉を述べました。

徹底した役作りでオスカーを手にしたラミはテレビドラマでも主演を張るほどの実力派ですが、中東系の俳優として積んできたキャリアは決して平坦(へいたん)ではなかったでしょう。インド系移民としてイギリスに暮らしたフレディにも重なるラミの受賞は多くの移民の子供たちを勇気づけたはず。

機内で見たもう一本の映画は、アカデミー賞には無縁だけど話題を呼んだインド映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』。個人的にはこちらのほうが涙の総量は多かったかも。娘を持つ男性と愛妻家には刺さること請け合いです。

モデルは、インドに安価で衛生的な生理用品を広め、女性の雇用創出と経済的自立を支援した実在の人物。妻のことが大好きすぎて、生理用ナプキンの制作にのめり込んでいく男です。

妻が生理中に隔離され、生乾きの不衛生な布を当てて過ごすことにショックを受けた彼は妻のために生理用ナプキンを購入。でも、うんと高価でとても日常使いなんてできません。なんとか安価で衛生的な生理用品を作れないものかと常軌を逸した執念で試行錯誤を重ねる彼は、男尊女卑のインド社会で異常者扱いされ、最愛の妻とも絶縁状態に。それでも諦めずに努力を重ね、ついに安価なナプキン製造機を開発!

何が感動するって、彼が妻だけではなく、すべての女性のことを考えていること。貧困と無学が生み出す差別や偏見に、知恵を絞って立ち向かう姿は真のヒーローです。

クライマックスの演説シーンは感涙もの。日本は先進国では最も男女の格差が大きい国ですが、こんな真情あふれる政治家がいてくれたらいいのに!と心底思いました。生理と聞いて引いているあなたにこそ見てほしい。DVDでぜひ。

●小島慶子(こじま・けいこ) 
タレント、エッセイスト。テレビ・ラジオ出演や執筆、講演とマルチに活動中。現在、日豪往復生活を送る。対談集『さよなら!ハラスメント』(晶文社)が好評発売中

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