バラエティプロデューサー角田陽一郎氏(左)が、『麻雀放浪記2020』監督の「日本映画界の風雲児」白石和彌氏を直撃!

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の新連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

今回は、4月公開の『麻雀放浪記2020』で監督を務める"日本映画界の風雲児"白石和彌(しらいし・かずや)氏を直撃しました!

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──「人生を動かした映画」と聞いて、パッと思い浮かぶ作品は?

白石 邦画史上初めてヘアヌードを撮った、高橋伴明(ばんめい)監督の『愛の新世界』(1994年公開)は衝撃でしたね。

原作はアラーキー(荒木経惟[のぶよし])の写真集なんで、ストーリーは映画に合わせて作られたものなんですけど、松尾スズキさんや宮藤官九郎さんなど、今をときめく「大人計画」の皆さんも出演されてるんです。

──当時の大人計画はよりエロ・グロ・ナンセンスが強かったですもんね。

白石 当時は20歳くらいだったので共感するところがかなりあって、「こういう映画もあるなら、スタッフとしてこの世界に入るのも悪くないかな」と思って。

──なるほど。そんな白石監督の一番古い映画の記憶は?

白石 小学生の頃に母親と一緒に見た『わんわん物語』(55年公開)。まさかのディズニー映画です。

──キャラに合わない(笑)。

白石 犬のくせに、パスタを食うシーンがあって。端っこから2匹が食べてって最後にキスするんだけど、母親と見るとすげえ気まずかった。

──わははは。では、中高生の頃に見て、記憶に残っている映画は?

白石 中学生のとき、町のビデオ屋さんで借りた日活ロマンポルノシリーズの『桃尻娘』(78年公開)ですかね。背伸びしたかったのと、中学生ですから性欲を抑えきれずに(笑)。

ヌくために借りたのに、実際に見てみると青春映画としてけっこうよくできてて感動しちゃった。そのときに初めて、作り手の存在を認識しました。

──もともとの目的と違うところに映画の素晴らしさを感じたと。

白石 エロいものを見るつもりが、すごいものを見てしまったんです。

──ちなみにそれ何歳ですか?

白石 15歳ですかね。

──当時は制服じゃなければ借りられるお店もありましたよね?(笑)

白石 それでも、今思うと明らかに中学生でしたけど(笑)。

──洋画はどうですか?

白石 『許されざる者』(92年公開)などを作り始めてからの(クリント・)イーストウッド作品には、「映画ってすごいことができるんだな」っていうのをまざまざと見せつけられましたね。主人公の薄汚れたおっさんがやめてたはずの酒を飲み始めて、人殺しになるという衝撃的ストーリー。

しかも、脚本は相当前からできていたのに、イーストウッドは自分があの役を演じられる年齢になるまで待ったって話をパンフレットで読んで、「物語の奥に物語があるんだな」って教わりましたね。

──深い。

白石 ひとりの監督の映画を何作か見ると、劇中とは違う、別の大河ドラマが見えてくる。それでますます映画監督に憧れましたね。

★後編⇒角田陽一郎×『麻雀放浪記2020』監督・白石和彌「蓋を開けたらバカ映画なんで結局叱られますね、映画ファンに」

●映画監督 白石和彌(しらいし・かずや)
1974年生まれ、北海道出身。若松孝二監督に師事し、演出として行定勲、犬童一心監督などの作品に参加。主な監督作は『凶悪』『日本で一番悪い奴ら』『彼女がその名を知らない鳥たち』『孤狼の血』『止められるか、俺たちを』

■『麻雀放浪記2020』
4月5日(金)より全国ロードショー
945年の「戦後」から2020年の「戦後」へタイムスリップした若き天才ギャンブラーが見た世界とは? 平成最後の最も危険なセンセーショナル・コメディ! 主演・斎藤工

【★『角田陽一郎のMoving Movies』は毎週水曜日配信!★】