『週プレNEWS』連載中(毎週月曜更新)の漫画『キン肉マン』(ゆでたまご作)のジャンプコミックス(以下、JC)各巻の中から、ゆでたまご先生ご自身にお気に入りの原画を選んでご紹介いただくシリーズ企画"ゆで原画"第15回。
スーパー・フェニックスらかつてキン肉マンとキン肉星の王位を争った"運命の王子"連合軍と、新たなる刺客"オメガ・ケンタウリの六鎗客(ろくそうかく)"との全面抗争が続く現在連載中シリーズ、その最新JC67巻がまもなく5月2日(木)発売に!
その最新刊を読む前に......おさらいを兼ねて今回もその前巻となるJC66巻から、作者・ゆでたまごの両先生に思い入れの深い漫画原稿一枚をそれぞれ理由も添えて選んでもらった。
まずは原作シナリオ担当・嶋田隆司先生に選んでいただいたのがこの一枚(JC66巻/73ページより)。
かつてキン肉マンを散々苦しめた超人界随一の技巧派・キン肉マン ゼブラが相対するのは、こちらも多彩な技を次々と見せてカレクックを破ったテントウムシ超人・マリキータマン。八角形の幾何学(きかがく)模様で構成されたイタリア南部のデルモンテ城でゼブラの猛攻を受けたマリキータマンは、サナギの姿となりその殻をヨロイとし、ボクシングの心得もあるゼブラのパンチラッシュを退けた!
――嶋田隆司先生(ゆでたまご・原作担当)コメント
「これまで長いこと『キン肉マン』やってますけど、実は昆虫の超人を本格的に闘わせるのはこのマリキータマンが初めてなんです。
トビラページで発表しただけの超人なら他にもたくさんいますけど、リングで闘わせていなかった。だからいつか昆虫の超人を闘わせることがあればこんなことをやってみたいっていうアイデアのストックが僕の中に40年分溜ってて、それをこのマリキータマンに惜しみなく注ぎ込んでいったようなところがありますね。そんな数々のアイデアのひとつとして、いつかぜひ試してみたいと思ってたのが、このサナギになっての防御でした。
それには元ネタということでもないんですけど、昔、イナズマンという石森章太郎先生の同じく昆虫モチーフの特撮ヒーローがいて、サナギマンから羽化してイナズマンになるという二段変身能力を持ってたんです。でもこれが僕はあまり好きじゃなかった。イナズマンに比べるとサナギマンが圧倒的にカッコ悪くて...もっとカッコよくでけへんのかって、ずっと子供ながらに不満を抱えつつ見てました(笑)。
それで『あのサナギ状態をカッコよくできたら、僕の子供時代の不満が解消されるんやけど、どうやろう?』って中井君に相談したら、考えてみようかって言ってくれまして。ふたりでお互いに絵を描きあって、ああじゃない、こうじゃないって相談していくうちにだんだん納得のいく形に近づいてきました。
最終的に、中井君がなかなかいい案を出してくれたんですよね。それでできたのがこのページです。カッコよくなったと思いましたね。中井君に相談してよかった! 思い入れの深いページになりました」
そしてもう一枚、作画担当・中井義則先生に選んでいただいたシーンがこちら(JC66巻/106ページより)。
精神的な表と裏、邪悪な黒のゼブラと善良な白のゼブラの融合を心の中で果たし、数年ぶりにようやく本来の自分を取り戻したキン肉マン ゼブラ。だがそれでもマリキータマンの強力な技を食らってダウン。しかしこのままじゃ終われない。マットに這いつくばるゼブラの指だけは、まだ戦闘続行の意思を示すかの如くわずかに動いて...。
――中井義則先生(ゆでたまご・作画担当)コメント
「相棒(嶋田先生)の原作を最初に読んだ時から、ここまでの流れがとてもいいと思ったんですよ。気力を振り絞って向かっていきながらも大技を受けて無様にダウンしてしまって、もうダメかと思わせたところで、それでもまだオレはやれるぞ!って意思を見せる。
その心のあり方も含めた様子をどうやって絵で見せるかというのは、いろんな描き方があって、そこは僕の裁量ひとつで大きく印象が変わっちゃうんですよね。これは試されるシーンだなと思いました。それで色々考えて選んだのが、この描き方です。
最も気にしたのはこの指先の"ピク..."っていうのが、ほんのわずかな動きで、でもほぼ無音で静まり返った中で小さく音が聞こえるかのような表現がちゃんとできるかということ。彼のやる気がほんのりと、でもしっかりと伝わるように。それにはコマをたくさん割って状況を細かく伝えるよりも、ただこの大きな一枚全面で、余白もたくさん作って余計なものは一切入れない。その中でたった1ヵ所、目指してるその表現ができればということで、こういう絵にしました。
だから僕にとってはものすごく贅沢に使わせてもらった一枚ですね。その分、コマを割ればもっと話も進められるだろって言う人もいるかもしれませんけど、それよりこの一瞬のインパクトを優先させたいと思えたので。それくらい僕はここ、大好きなシーンですね」
キン肉マン ゼブラとマリキータマンの劇的な死闘に終止符が打たれ、次はいよいよ久々に我らが主人公・キン肉マンの闘いへ! その相手は驚異の超人強度8000万パワーを誇るパイレートマン! 果たして"火事場のクソ力"は圧倒的な超人強度の壁を超えることができるのか!?
今回ゆでたまご先生におさらいしてもらったJC66巻の続き、最新JC『キン肉マン』67巻はまもなく5月2日(木)発売! 乞うご期待!
詳細はこちらまで(https://www.s-manga.net/items/contents.html?isbn=978-4-08-881855-9)
次回"ゆで原画"第16回はJC『キン肉マン』68巻(2019年6月17日発売予定)の発売直前、6月上旬頃にお届けいたします。お楽しみに!