21世紀にただひとり生きる現代忍者、坂口拓 21世紀にただひとり生きる現代忍者、坂口拓

現在公開中の映画『キングダム』で圧倒的な動きを見せる男――坂口拓(さかぐち・たく)。劇中では、人斬り長・左慈(さじ)として山﨑賢人が演じる主人公・信(しん)と激しい戦いを繰り広げており、異次元の動きから繰り出される技は、まさに圧巻だ。

さらに坂口は、SNSやYouTubeで「もしもカラーコーンを持ってる時に強盗に襲われたら」など、「もしも」シリーズとして防衛術を公開し話題になっている。

プロの軍人すら凌駕するという技を持つ男・坂口拓とはいったい何者なのか。本人を直撃した。

「自分はいろんな業界の人間とやったことあるんですけど、そもそも普通の人は、人を殺そうと思っても無理なものなんですよ。なのに(山﨑)賢人はガチで『俺を殺す気かよ!』と思うほど本気で向かってきた。まぁ、その気にさせるために俺はいるので、うれしかったですね」

映画撮影を振り返りながらも、自身を「何者でもない人間」と言う坂口。しかし、2001年にデビュー後、『あずみ』(03年)や『魁(さきがけ)!! 男塾』(08年)などでアクション俳優として活躍。また、多くの作品でアクション監督も務めてきたが、13年に未完で公開された『狂武蔵(くるいむさし)』(現在、完成に向けて撮影中)を機に俳優を引退。

「77分ワンカットで戦い続けました。『目でも頭でも潰していいから本気でこい』って言ったら開始5分で指が折れて、『あと72分もあるのかよ!』って驚きました(笑)。終わって横になったらバーッと涙が流れてきたんです。でもそれって達成感からでもなく、体が泣いていたんですよね。それで辞めました」

それからはアクション俳優ではなく、戦劇者としての活動を始めた。

「役者ができない危険なものだけをやるみたいな感じです。『キングダム』も監督に『本当の強さを表現したい』と言われて、うれしくてね。だから出たんです」

真剣を持った相手に戦うことも多く、体中傷だらけ、ズボンには返り血も 真剣を持った相手に戦うことも多く、体中傷だらけ、ズボンには返り血も

アクション俳優時代の坂口は少林寺拳法、ボクシング、ムエタイなどあらゆる格闘技を経験した。演技のリアルさを出すためだ。多くの技を手にした坂口だが、"リアル"とはなにか――その違和感を覚えたという。

「例えば剣術なら日本刀で人を切る時にはやっぱり腰が入らないとダメなんですよ。でも一度に10人、20人相手にする場合、腰を入れることに意味があるのかなと思ったんです。本当に人を切ったことない人間に何を教われるんだろうと思って」

そして出会ったのが「ゼロレンジコンバット」だ。古武術を基に、肩甲骨の動きでスピードや威力を高めてゼロ距離で相手を倒す格闘術で、自衛隊や世界各国の軍隊でも取り入れられている。

「いろんな格闘家の前で技を見せたことがありますが、みんな見たことのないスピードに驚いていました。『RE:BORN』(17年公開)の時なんてスピード解禁してたので、カメラに映ってなかったんです。それで遅めに動いて撮り直したんです」

SNSやYouTubeでは防衛術を紹介。『週プレ』でも身を守れる SNSやYouTubeでは防衛術を紹介。『週プレ』でも身を守れる

まさに格闘マンガ『TOUGH』のような世界。「気づいたら死んでいる」という技を身につけた坂口は、その後もさらなる"リアル"を求めて各地を巡った。

「海外のスラム街で銃を突きつけられたり、青龍刀で追いかけ回されたり。『修行といえば、山ごもりだろ!』と思ってカッコつけて行ったら、熊と出合っちゃって。ナタで口にダメージを与えた後は、100発以上拳で殴って倒したんですけど、何してんだろとへこみました(笑)」
 
坂口は今、「21世紀を生きるたった1人の現代忍者」を名乗り、SNSやYouTubeでその技術を公開している。

「強い日本人を表現したいなって思ってて。その間口を広げるため、海外の人にも伝わるように現代忍者にこだわってます。SNSでふざけた防衛術を発信しているのも同じです。現代に広めるためには相当ふざけたほうが、ウケるしいいなと思って。見る人が見れば、その技術はわかりますから。周りからは"チャラい"って言われるけど、いいんです(笑)」

坂口拓(さかぐち・たく)
1975年3月15日生まれ、石川県出身
2001年に映画『VERSUS』で主演デビュー以来、数々の作品に出演。アクション監督としても参加。伊賀忍術と現代戦闘術を融合させたネオ忍者集団「雷風刄」をプロデュース。公式Twitter【@tak_ninnin】および公式YouTube「たくちゃんねる」ではさまざまなシチュエーションでの防衛術を披露している