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「キン肉マン酒場」(2018年12月4日~2109年1月29日)の営業最終日、ゆでたまご・嶋田隆司先生、アニソン歌手の重鎮・串田アキラさん、そして声優界のカリスマ・神谷 明さんの3人が、なんとまったくのプライベートで同じ空間で鉢合わせた!

こんな偶然、記事にしないのはあまりにももったいない!......ということで急遽、連載40周年を迎えた『キン肉マン』を振り返ってもらった!

* * *

■キン肉マンに声優として育ててもらった(神谷)

――この3人が集まってお話しされるというのは、どれくらいぶりなんですか?

神谷 何年ぶりかな。覚えてないくらい久しぶりですよ。

串田 それこそ『キン肉マン』のアニメが始まった1983年以来じゃないのかな?

嶋田 別々にお会いするのはありましたけど、こうして3人でお話しさせてもらう機会はなかなかなかったと思います。だから本当に今日は奇跡ですよね。週プレの仕込みかと疑いましたもん!(笑)

神谷 "縁"って、まさにこういうものなんですよねぇ。

――今年は『キン肉マン』のマンガ連載40周年イヤーです。せっかくの機会ですのでここにお集まりのお三方と『キン肉マン』の、そんな"縁"についての思いを今日はお聞かせいただきたいのですが?

神谷 僕にとって『キン肉マン』というのは大きな転機になった作品で、この役で僕は初めて本格的な三枚目を演じさせてもらったんです。

嶋田 そうですよね。それまで僕も神谷さんは『バビル2世』や『ドカベン』の里中 智(さとる)といった二枚目キャラの役者さんだと思ってました。

1月29日の「キン肉マン酒場」営業最終日は、この3人が登場とあってまさに神会となった

神谷 でも僕はこの役がどうしてもやりたくて。そもそも僕がこの業界に入った動機は、こういう三枚目の役を演じたかったからなんです。でもそれまでのお仕事でそうではないイメージができてしまっていて。そこで本来希望していたところに立ち返りたかったんですよね。だからオーディションに受かったときは、本当にうれしかったんだよなぁ......。

嶋田 キン肉マンの声を初めて聞いたときのことは今でもよく覚えてるんです。僕はそれまでキン肉マンって、『スーパーマン』の大平透さんみたいな声かな~とぼんやり思いながら原作を書いてたんですよ。

ところが神谷さんが演じてくれたキン肉マンは、僕が想像してたキン肉マン以上にキン肉マンだった。「そう、これや!」って僕の中でもピッタリはまりました。それを思うと、どれほど原作を読み込んで、キン肉マンというキャラクターを理解して演じてくれたんだろうって。

神谷 念願の役どころでしたからね。好き勝手に飛ばしすぎたことも多いですけど(笑)、それもゆでたまご先生をはじめ当時のアニメスタッフがみんな許容してくれて。ものすごく遊び心がありました。だから収録も毎週、本当に楽しくてね。

嶋田 神谷さんってけっこうアドリブ入れるんですよ。「へ、へ、屁が出る5秒前!」って、あれは完全に神谷さんのオリジナル。僕が書いたセリフじゃないですもん!(笑)

神谷 そうでしたね(笑)。

嶋田 でも良かったので原作に逆輸入して使わせてもらったりね。昔も今もそう。原作でキン肉マンのセリフを考えるときは、僕は言葉のリズムを気にするので頭の中で音読するんですけど全部、神谷さんの声で考えます。違和感あったら、神谷さんならこういう言い方しないな~って直したり、逆に神谷さんの声でこんなこと言ったらカッコいいやろな~と思ってそういうセリフにしてみたり。

神谷 それはうれしいですね。でも、そのキン肉マンに声優として育ててもらったのは間違いなくて、そう思うと不思議な関係ですよね。例えば今『シティーハンター』の新作映画が公開されてますが、その主人公の冴羽 獠(さえば・りょう)は、まずキン肉マン、次に『北斗の拳』のケンシロウ、このふたりを先にやってたからこそ演じられた役で、キン肉マンがなければきっと僕が冴羽 獠をやることはなかったはずです。

■"マッスル"ではなく、マッソーだ!(串田)

――串田さんは『キン肉マン』との"縁"というところで何かお感じになりますか?

串田 僕も神谷さんと同じで、歌い手としての幅が広がったというのはありますね。それまでも特撮系などヒーローものの主題歌は歌ってましたけど『キン肉マン』はギャグの要素も入ってて、今までの自分にはない世界の楽曲だったので最初は正直、戸惑いました。

でも作曲家が昔からの友達だったのもあって「こうやればいいんじゃない?」って、僕だけじゃなくてみんなで相談しながら作り上げていったんです。そんな調子だから常に「本当にこれでいいのか?」って半信半疑で。ところがこれが大ヒット。その勢いでどんどんお仕事もいただけるようになって。

今では名刺代わりですよ。"『キン肉マン』を歌ってる串田さん"って、僕の名前より先に『キン肉マン』という単語が来ちゃうくらい。でもそういう楽曲に巡り合えることってなかなかないですから......そこはやはり強い縁を感じますね。

嶋田 "歌"って強くて、どんな場でも串田さんが出てきてくれたらそれで絶対に盛り上がる。これは心強いですよ。

串田 でもそれだけに、楽しみにしてくれてるお客さんをガッカリさせちゃいけないじゃないですか。間違っても『キン肉マン』の主題歌を弱々しい感じでは歌えない(笑)。だから今も筋トレで体を鍛え続けてます。僕がこの年齢になっても元気に歌手を続けられているのは、その縁も大きいかもしれませんね。

キン肉スグルの声であいさつをした神谷さん。ある意味、本人登場

神谷 クッシーって歌い方、フレーズのひとつひとつにものすごいこだわりを持ってて、前にも「"マッスル"じゃない"マッソー"だ!」って熱弁してたよね?

串田 そう、そこは譲れない。マッスルで止めちゃうと勢いが出ない(笑)。

神谷 感心したのは、ステージに出てファンの皆さんが合いの手を叫んでくれるじゃないですか。でもそのファンの発音もしっかり教育されてて、みんな自然とクッシー調の"マッソー"なんですよ。

嶋田 わかります。僕もそうなります(笑)。

串田 しかも最初の主題歌『キン肉マン Go Fight!』冒頭のその部分って、実はもともと歌詞なかったんですよ。

神谷 え、そうなの!?

串田 そう。でもなんとなく頭に勢いが欲しいと思って。それでさっきも話したようにみんなで相談しながら完成させていくなか、アドリブで後からつけたんですよね。

神谷 すごい話だなぁ。僕も今初めて聞いた(笑)。

嶋田 最初からあったかのように違和感ないですもんね。

神谷 でも『キン肉マン』って本当にそういう作品だと思うんですよ。クッシーのそのシャウトもそんな楽しさを自由に追い求めていくなかから自然と生まれて、それが心地よいし、楽しい。そのエピソードは『キン肉マン』という作品全体の雰囲気を象徴してるように思いますね。

嶋田 そのお話が聞けただけでも、今日はここに来てよかったと思います!

■ふたりの背中を見てたらやめられない(嶋田)

――では最後になりますが、『キン肉マン』の40周年にそれぞれ、お祝いのお言葉をいただけますでしょうか?

神谷 40周年というこの数字は、ただただ、ゆでたまご嶋田・中井両先生の熱意の表れだと感じてます。それもウェブ連載という画期的な試みに臆せず挑戦されて、38巻から始まった今の連載がすでに66巻。信じられない偉業ですよ。作品ってどんなに昔ヒットしたものでも、いつの間にか消えてしまうものが多いんです。でもゆでたまご両先生のその気持ちがキン肉マンをいまだに生き続けさせてくれている。

キン肉マンはまだめちゃくちゃ元気に生きてます。その事実が僕にとってはこの上ない喜びです。これからもさらにその先を目指していただければと思いますが、ひとまずは40周年、おめでとうございます!

――では串田さんからも!

串田 僕自身『キン肉マン』という作品におめでとうという気持ちはものすごく大きい半面、名刺代わりの作品ですから一体化しすぎて「肉」の文字が世の中に躍るのを見るたびに「何か自分に関わりのあることかな?」って、無意識に考えちゃうんですよね(笑)。それくらいずっと愛着のある作品です。

これからもゆでたまご先生には末永く続けていただいて、そうするとその間、僕も筋トレを続けざるをえないので今以上にどんどん健康体になっていくはずです(笑)。その体力で新しいアニメの主題歌を歌えるような日が来ればいいな、とも本気で期待しています。ぜひそんな日が来るよう連載頑張ってください。40周年、本当におめでとうございます!

嶋田 ありがとうございます。40周年と聞くと正直「そろそろ、もうええやろ」って思うこともあるんです。でもこのおふたりは僕らよりもっと先輩で、今も第一線で頑張ってらっしゃる。そんな人たちにそう言われたら......やめられませんよ(笑)。

だから心折れそうになったら先輩ふたりの背中を見て頑張れって、今日はそういう会だったと思ってこれからも頑張ります。それに僕らが頑張り続けたら、もっとムキムキになった串田さんが見られるんですよね?

串田 たぶんひと回りくらい大きくなってると思いますね。

嶋田 本当ですか。じゃあ頑張りますわ!(笑)

●嶋田隆司 
1960年生まれ、大阪府出身。『キン肉マン』原作担当で、作画は中井義則が務めている。今年、連載40周年を迎える。『キン肉マン』最新話は、ウェブサイト『週プレNEWS』で毎週月曜日に配信中

●串田アキラ 
1946年生まれ、神奈川県出身。『キン肉マン Go Fight!』など数々の『キン肉マン』アニメソングを担当した。「富士サファリパーク」のCMソングでも有名。愛称は「クッシー」。今年、レコードデビュー50周年を迎える

●神谷 明 
1946年生まれ、神奈川県出身。『キン肉マン』のキン肉スグルをはじめ、多くの『週刊少年ジャンプ』作品のアニメ声優を務めた

(左から)キン肉スグル役・声優の神谷 明さん、『キン肉マン Go Fight!』歌手の串田アキラさん、『キン肉マン』原作担当の嶋田隆司先生

●5月は特盛「キン肉マン祭り」!!!!
5月2日『キン肉マン』67巻&5月20日『週刊プレイボーイ』22号「キン肉マン大特集」刊行!!!!

●『キン肉マン』40周年イベントの最新情報を網羅!!