「ポスト千鳥」の呼び声も高い、かまいたちの山内健司(左)と濱家隆一 「ポスト千鳥」の呼び声も高い、かまいたちの山内健司(左)と濱家隆一

2017年に『キングオブコント』(TBS系)で優勝し、昨年4月に満を持して東京進出を果たしたかまいたち

ネタ、トーク、ロケと、すべてにおいて能力が高いことから"ポスト千鳥"の呼び声も高い彼らを、改元直後に直撃!

■仲間に消費者金融を広めた若手時代

──今年で結成15年になりますが、そのうち14年間は大阪でがんばってきたおふたり。バイトをしないでやっていけるようになったのはいつ頃ですか?

山内健司(以下、山内 2007年に「ABCお笑い新人グランプリ」で最優秀新人賞を獲(と)るまでは、吉本の給料が月に7000円ぐらいだったんです。でも優勝した次の月に1万5000円、その次の月に3万円と倍倍で増えていったから、「これはバイトを辞めてもいいわ」と思って辞めたんです。けど5万円で止まりました。

──伸びなかったですね......。

山内 そこからは消費者金融でお金を借りて、なんとか生活してました。

濱家隆一(以下、濱家 僕も同じ時期にバイトを辞めて、消費者金融4社からお金を借りていたので、首がパンパンになって回らなくなりました。

──その頃、周りの芸人も借金をしてたんですか?

濱家 はい。みんなしていましたね。でも元凶は山内なんですよ。藤崎マーケットのトキに「消費者金融って簡単にお金借りれるぞ」って山内が紹介したのが始まりで、そのときに「紹介者キャッシュバックキャンペーン」で1万円を山内がもらったんです(笑)。

そしたら、またトキが違う芸人を紹介して1万円をもらって。そこからキャッシュバックの取り合いで一気に若手芸人に広がりました。

──どうやって借金を返したんですか?

山内 「ABCお笑い新人グランプリ」を獲ってから2年くらいたって、やっと15万円くらい給料がもらえるようになったんです。それで借金しなくてもよくなったので債務整理しました。

濱家 僕は笑い飯の哲夫さんから、「消費者金融の利息を払うぐらいなら俺が全部立て替えたるから」って言われて、100万円ちょっとあった借金を全部払ってもらいました。

■大阪時代にロケで鍛えた鉄板の"着替えボケ"

──かまいたちといえば、ロケのおもしろさを競う番組『ロケ最強芸人決定戦 外王』(フジテレビ系)で2連覇したように、ロケに定評があります。ロケ中に山内さんの衣装が変化していくボケは大阪で培った技なんですか?

山内 あれの始まりは大阪の番組でしたね。あるロケで僕が人としゃべってる最中にジャケットを脱いだんですよ。別にボケじゃなくて普通に暑かったんで。VTRを見たら、編集で話の内容を前後入れ替えたりしてたので、僕がジャケットを着てたり着てなかったりする映像に仕上がっていたんです。

それをスタジオで見ていた千鳥さんが「おもろいな」ってツッコんでくれて。その次からはわざと衣装を変えるようになりました。

でも、マジメな情報番組で料理人に料理のコツを聞いてるとき、僕がどんどん服を脱いで、最後は海パン一丁で話を聞くっていうボケをやったら、視聴者から「失礼でしょ」とものすっごいクレームが来ました。

──ボケが気になって情報が入ってこないです(笑)。『外王』の2連覇は大阪のロケで鍛えられたたまものだったんですね。

山内 そうですね。17分ぐらいのロケVTRを撮るのに、大阪時代は16時間ぐらいかけてましたから。

濱家 夏場のロケなんかは日焼けするから、オープニングとエンディングで肌の色が全然違いました(笑)。

山内 大阪で月曜日から金曜日まで、毎日5分間のロケコーナーをやらせてもらってたんですよ。沖縄ロケのときは2週間分を1日で撮りました。

──え! 1日で10本撮り!?

山内 はい。1日で30軒くらいお店を回ったんですけど、今、何軒目なのかわからない状態でした。

濱家 ディレクターさんが「撮り忘れないかな?」ってADさんに聞いても、「いや、ホンマにわかりません」ってなってました。

山内 そういうロケを大阪でやってきたから、東京だとロケが長くても3、4時間なんで、逆に「短かっ!」て思ってしまいます。

──かまいたちのおふたりは7、8年前にも『爆笑!大日本アカン警察』(フジテレビ系)で東京に来てましたよね。

山内 何回か呼んでいただいたんですが、そこで大空回りをしてしまいました......。ゲストで来ていた佐々木希さんに対して、「僕はかわいいとは思わないですけどね」と、「おまえが言うな!」という毒を吐くボケをしたんです。そしたら、僕はドカーンとウケると思ったのに現場がピリッとして。

濱家 それも軽く言えばいいのに、ここで結果を残さなあかんという気持ちがすごすぎて、目が血走って、本気で文句を言ってるみたいになってしまったんです(笑)。

■千鳥・ノブの教えどおりに大振りしたら......

──いろんな経験をしてきたおふたりですが、昨年満を持して上京してきました。何か先輩からのアドバイスはありましたか?

山内 千鳥のノブさんから、「番組で普通にこなしても、同じぐらいの芸人がいっぱいいるから印象に残らない。かなり大振りしたぐらいでちょうどいい」って言われました。

ノブさんは最初、そこそこできるやつレベルでやっていたそうですが、全然調子がよくなかったらしくて。「思いっ切り行きだしてからのほうがよかったから、ダメだったらダメで大阪に戻るぐらいの感覚でいいんちゃう」って言ってくれました。

──そのアドバイスをもらって実際にどうでしたか?

山内 僕ら大阪でボケる番組しか出てなかったんですよ。だから最初は、そういうボケを求められていない動物番組に呼んでもらったときにも、ボケ倒してしまって。

かわいい動物のVTRを見た後に、僕がエド・はるみさんのギャグで「いや、今のペット、グ~ググ~ググ~ググ~コー」ってやったら、薬丸裕英さんに「どうした? どうした?」って驚かれて全カットになったりしました(笑)。

──ノブさんの教えどおり、大振りしましたね。

山内 『笑神様は突然に...』(日本テレビ系)に僕らが初めて呼ばれたとき、千鳥さんもこの番組でブレイクした感じがあるので、「何か爪痕を残さないとな」って濱家と話しました。で、そのときのオープニングが港やったんですよ。

それでいきなり、スタッフに何も言わずにバーンって海に飛び込んだらウケて。その後に続けて濱家も飛び込んだんですけど、それにはカメラマンさんが「いや撮れねぇだろ」って怒ってました。

濱家 僕は飛び込んで失敗しましたね。僕をのぞきこんでるスタッフの顔を見たら完全に怒ってました。

山内 海から上がって体を拭いてたら、音声さんが来て、「ああいうことをするときは事前に言ってもらえますか? 音がとれないんで」って怒られました。でも抜群の編集で、放送はめっちゃおもろくなってました。

ただ濱家はものすごく怒られてるから、放送ではオープニングの後にめっちゃ落ち込んでましたね(笑)。

──大人のマジ説教を食らうとへこみますもんね(笑)。こないだ山内さんが『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)の「七変化」に出たときも大振りしてましたよね。ルームランナーでコケて顔を強打しているように見えましたが、あれは大丈夫でしたか?

山内 顔をバチーンと打った衝撃があったせいか、次のネタで声が飛んだんです。まだ3変化ぐらい残っているのに「ヤバッ」と思っていたんです。でも、その直後におっさんの足をなめるネタをやったら、急に声が出るようになったんですよ。

──いや、嘘でしょ! おっさんの足に、そんなのど飴みたいな成分が含まれてたんですか!?(笑)

■2年前の千鳥とまったく同じルートをたどっている

──ライバルは誰ですか?

山内 倒さなければいけない人で言ったら、やっぱり千鳥さんのラインだと思います。

──確かに「ポスト千鳥だ」という声も聞きますからね。

山内 僕的には千鳥さんみたいに一気に行かずに、じわじわと芸人からもおもろいと認知されながら上がっていくのがいいなと思ってるんです。千鳥さんは賞レースを1個も獲ってないのに、獲ってるふうにしてるんですけど。

──別に獲ってるふうにはしてないでしょ(笑)。

山内 こないだノブさんに、今の僕らの仕事内容を話したら、「2年前の俺らとまったく同じ仕事のルートをたどっているから、そのまま何もスキャンダルなくいけば大丈夫」と言われました。大悟さんのスキャンダル分、もっと早く売れる可能性があるって(笑)。

──では、今後は千鳥さんのルートを通っていきたいということですね。

山内 そうです。寸分たがわぬ千鳥に、そして千鳥超えをして、僕たちは"ニュー千鳥"になります!

──いや、おかしいでしょ(笑)。かまいたちですから。

濱家 いえ、僕らは千鳥って名乗りだしますんで(笑)。

山内 僕たちが真の千鳥です(笑)。

●濱家隆一(はまいえ・りゅういち)
1983年11月6日生まれ、大阪府出身。NSC大阪校26期生

●山内健司(やまうち・けんじ)
1981年1月17日生まれ、島根県出身。NSC大阪校26期生

■「コンビ結成15周年いたち in OSAKA ~素直・謙虚・感謝~」
公演日時:2019年8月22日(木)18時30分開場、19時開演
会場:なんばグランド花月