バラエティプロデューサー・角田陽一郎氏(左)が俳優・松坂桃李氏の映画体験をひもとく! バラエティプロデューサー・角田陽一郎氏(左)が俳優・松坂桃李氏の映画体験をひもとく!

『さんまのスーパーからくりTV』『中居正広の金曜日のスマたちへ』など、数多くの人気番組を手がけてきたバラエティプロデューサー角田陽一郎氏が聞き手となり、著名人の映画体験をひもとく『週刊プレイボーイ』の連載『角田陽一郎のMoving Movies~その映画が人生を動かす~』。

先週に引き続き、ドラマ『梅ちゃん先生』、映画『不能犯』などで知られ、最新主演作『新聞記者』が公開中の松坂桃李(まつざか・とおり)さんが登場!

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──役者の道に進んでから見たなかでいいと思った作品はなんですか?

松坂 最近、衝撃を受けたのは『ROMA/ローマ』(2018年)というNetflixの作品です。

──『ゼロ・グラビティ』(13年)で有名なアルフォンソ・キュアロン監督の自伝的映画ですよね。

松坂 物語の終盤、主人公たちが浜辺にいて、子供たちが波に飲まれて溺れかけるシーンがあるんですが、主人公が彼らを助けに行くところから、助けて戻ってきて去るまでをすべてワンカットで撮っているんです。「このカメラワークはどうやってるんだろう」って。

──ずっと海の中で、それを逆光で横から撮ってるんですよね。

松坂 僕のなかでは最近で一番の衝撃でしたね。メイキングを見たいなって思ったんですけど、Netflixってメイキングがないんですよ。

──全編モノクロの決して派手じゃない映画ですけど、僕も衝撃でした。

松坂 あと最近見たのでいうと、『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』(16年)という、有名なバレエダンサーの人生を描いたドキュメンタリー作品。

彼は一見、きらびやかに生きている人なんですが、実は裏ではプレッシャーや苦痛を抱えていて、その流れで入れ墨をしたりする。トップを走っている人の孤独とか、ほかの人にはわかってもらえない切なさがすごく刺さって、胸が苦しくなりましたね。

──ドキュメンタリー系の作品がけっこうお好きなんですね。ちなみに、ドラマはどうですか?

松坂 自分が10代だった頃のドラマはいろいろ鮮明に覚えていて、今思い返しても本当におもしろいものばっかりだったなって。『池袋ウエストゲートパーク』(00年)とか『木更津キャッツアイ』(02年)とか『Stand Up!!』(03年)とか『オレンジデイズ』(04年)とか。

男たちがみんなでバカなことをする青春モノが大好きだったんです。「いいなあ」「こういうちゃらんぽらんな生活を送ってみたいなあ」って(笑)。

──役者になって自分で表現しようとは思わなかったんですか?

松坂 なかったですね。それがちょっと似たような形で実現できたのが『ゆとりですがなにか』(16年)という作品なんです。ゆとり世代の3人が、バカなことをやって奮闘するのがすごく楽しかったですね。

──ドラマ以外では、例えばアニメはどうでしょう?

松坂 『アラジン』(93年)は好きでしたね。山寺宏一さんのジーニー役が素晴らしくて。声帯はひとつのはずなのに、そこから枝分かれしていろんな声、いろんなニュアンスがが出てると考えたら、本当に感動です。

──『アラジン』って日本語版でも英語版でもどっちも楽しめますよね。

松坂 そうなんですよね。吹き替えがここまで有名で、かつファンがつくってすごいことですよね。

──「俺もそっちに行きたい」って思ったりも?

松坂 もっと挑戦してみたいなとは思いますね。もともと小さい頃から声当て遊びみたいなことをやっていたのもあって、声の仕事は興味があるんです。

──さて、6月28日公開の映画『新聞記者』ですが、今回演じたのは「内閣情報調査室」に所属するエリート官僚です。どうでしたか?

松坂 僕が演じた杉原という人物は、いわゆる「内調」の職員なのですが、この組織はものすごいベールに包まれているんです。監督が取材しても、誰がその一員で、どんな動きをしているかはわからなかった。

なので、台本に書かれていることを忠実にこなすことを意識しました。目の前で巻き起こっていることへの、杉原の感情を大事にしていこうと。

──映画で伝えたいところは?

松坂 今はネット社会で、いろんな情報が簡単に手に入るじゃないですか。でも、その情報が偽物のこともあるし、なおかつ、そこに対して誰でもコメントできる。

結果、ウソが真実味を帯びて、正しいものとして受け入れられてしまう。そんな時代だからこそ、自分の考えや感性を大事にすることの重要性をこの映画では描いています。

──メッセージを拾ってほしい作品なんでしょうか?

松坂 「サスペンスエンターテイメント」を標榜しているので、もちろん大前提として楽しんでほしいんです。でも、見終わった後にきっとそういう感情になるんじゃないかなって。

社会派というカテゴリーの作品が少なくなってきている今、この作品を機に増えていけば、映画界もおもしろくなると思います。

(ヘア&メイク/松田 陵[Y's C] スタイリング/丸山 晃)

●松坂桃李(まつざか・とおり)
1988年生まれ、神奈川県出身。2011年に第85回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞を受賞。以後、数多くの映画やドラマに主演

■『新聞記者』新宿ピカデリー、イオンシネマほか全国公開中
配給:スターサンズ/イオンエンターテイメント ©2019『新聞記者』フィルムパートナーズ

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