7月20日に阪神甲子園球場で行なわれた阪神vsヤクルト戦。試合前の始球式にゆでたまご・中井義則先生が登板!

漫画家を目指す前は少年野球でピッチャーをやってて、甲子園のマウンドに立つのが夢だったんです

そう語るのは『キン肉マン』の作者、ゆでたまごの作画担当・中井義則先生。それはもう45年以上も昔の話。日々の忙しさの中ですっかり忘れかけ記憶の底に眠り続けていた夢。しかしこの夏、目を覚まし、そして叶った。

7月20日、子供たちにとっては夏休み初日となる土曜日の阪神甲子園球場の阪神タイガースvsヤクルトスワローズ戦。今年、連載40周年記念を迎える同作にちなみ「キン肉マンDay」と銘打たれた。

伝統の甲子園球場に飾られた「キン肉マンDay」の看板

そのため、阪神タイガース主力選手たちとのコラボグッズ販売や入場者への特製うちわ配布、またアニメでキン肉マン役を務める神谷明氏による場内アナウンスなど、様々な"肉"三昧の趣向が凝らされた一戦となった。そのハイライトとして開催されたのが、ゆでたまご先生による試合前の始球式だ。

ゆでたまご先生といえば原作担当・嶋田隆司先生と作画担当・中井義則先生によるふたり組のコンビ作家。始球式はふたり同時に投げるわけにはいかないので、どちらが投げるのかという話も当然、事前に持ちあがりそうだが、そこは嶋田先生が即座に、中井先生に役目を譲られたという。

中井君は子供の頃、本当に野球がうまくて、地元の少年野球チームの主力として活躍してたくらいでしたから。ウチの親父も中井君の練習につき合って、よくキャッチボールやってました。親父は草野球の審判やってたくらいの野球好きだったんで。それに対して、僕は球技が苦手で一切してこなかった。だからこの話はもう、中井君に任せるしかないなと」(嶋田先生)

迎えた18時試合開始直前、タイガースのスターティングメンバーがひとりずつコールされ、その全員が守備位置についたところで、背番号029「NAKAI」の名前入り特製ユニホームを着た中井先生がベンチ脇の通路から登場。

特製のユニフォームにご満悦のおふたり

この日のタイガース先発、偶然にも同じ背番号29の高橋遥人(はると)投手からマウンドを譲られ、一礼して念願のその聖地へ登る中井先生。直前まで室内練習場にて投球練習も万全に行ない、肩の調子はバッチリだ。

そしていよいよ審判の合図を受けて投じたその一球は、見事ノーバウンドのストライクで今のタイガース正捕手・梅野隆太郎選手のミットへ!

試合前、入念なアップをする中井先生

その球が収まった瞬間、客席を埋め尽くす超満員約4万8000人の大観衆からどよめきと拍手喝采が沸きあがる。周囲に一礼してマウンドを後にした中井先生。その右手には、再び梅野捕手から手渡された記念の球がしっかりと握られていた。

控室に引き上げられていく通路の途上、まさに始球式を終えられたばかりのタイミングで、念願のマウンドの感想を中井先生に聞いてみた。

中井義則投手と嶋田隆司ピッチングコーチ

中井 最初は緊張でもっと足がガクガク震えるかと思ってたんですけど、甲子園の土って柔らかくて踏み心地がものすごくいいんですよ。不思議なことに、その感触のよさで震えがピタッと止まりました。 (事前に練習していた)近所の公園とはわけが違う(笑)。あそこで野球できることがいかに幸せかという感覚に包まれて......わずか一球ですけど、ものすごく楽しかったですね。

――見事なノーバウンド投球で観客席からはどよめきも起こりました。4万8000人の大観衆の中で投げるというのはいかがでした?

中井 あまりに特別な場所すぎて、それすら気になりませんでした。投げ終わった今でも気持ちがフワフワしてて、現実感がなくて......。こういうのをまさに夢見心地っていうんでしょうね。今もただ、楽しさの感覚だけが残ってるような感じです。

――じゃあ、マウンドから降りるのは名残惜しかった?

中井 はい、もっとどんどん投げたいって、そう思わせてくれる場所でした。もしかして3人くらいならいけるんじゃないか!?......って怒られるし、もちろん抑えられないですから絶対ダメですけど(笑)。

――今後の漫画執筆の参考になるような収穫はおありでしたか?

中井 来ないとわからないことはたくさんあるもので、たとえばこの甲子園の独特の土と芝の香りは、来て初めて実感できました。今日務めさせていただいた貴重な経験の感想も含めて、視覚だけではないそういう感覚まで読者に伝えられるような漫画を、これからも描いていきたいですね。

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なおこの日の試合は、先ほど触れたタイガース先発・高橋遥人投手だけでなく、対戦相手のスワローズ先発・小川泰弘投手も共に背番号「29」という奇蹟の「肉」先発対決が実現!!

さらに試合展開も手に汗握る漫画さながら、タイガースが劇的な9回裏サヨナラ勝ちを決め、見事ペナントレース後半戦初勝利を飾るという徹頭徹尾の「キン肉マンDay」っぷりで幕を閉じた。

現在進行中『キン肉マン』連載40周年記念の一環のひとつとして開催されたこのイベント。夏を迎え、その周年企画もいよいよ後半戦に差し掛かりつつあるが、この日の試合展開の盛り上がりを見るにつけてもまだまだこの先、『キン肉マン』と作品を取り巻く環境のアツさと勢いは衰えそうにない。

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