このTシャツの向かって右側の女のコがダリアです

『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は、彼女が期待しているアニメのスピンオフ作品について語ってくれた。

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最近、リメイクやリブート、スピンオフなど、いろんな形で過去のタイトルが作り直されていますよね。正直、「やる必要ある?」と感じるものも多いんですが、個人的にちょっと期待している作品があります。

日本でも一部で人気のあるMTVの看板アニメ『ビーバス・アンド・バットヘッド』。そのスピンオフの『ダリア』という作品が私は大好きなんですが、その『ダリア』に登場するジョディーというキャラクターを主人公にしたスピンオフ作品の製作が発表されました。

そもそもこの『ダリア』は日本語版がないため、日本での知名度はほぼゼロです。ただ、1990年代にアメリカで思春期を過ごした"ミレニアルズ"と呼ばれている世代には、すごく人気があるアニメなんです。

ストーリーはひと言で言うと学園もの。おバカなチアリーダーとか"脳筋"のフットボーラーなど、典型的なコメディドラマ的キャラクターたちに対して、主人公のダリアという女子高生は常に冷静にツッコミを入れて、心の中でクスッと笑ってるんです。

今の若いコたちが言う"コミュ障"とか"陰キャ"な部分もあるんですが、とても頭がよくてぶれないので、ダリアと同じようにクラスの中ではしゃいだりするのが苦手な人たちに支持されていました。

この作品について語っている日本語のブログやサイトはないかと思って調べてみると、いくつかあるにはあったんですが、どれも解釈が自分の印象と違いすぎてびっくりしました。「とにかく主人公がいやなやつ」「いやみを言って相手に精神的苦痛を与えるやつ」など、とてもマイナスな受け取られ方をしていて。

ダリアを支持していた私たちにとっては、芯がしっかりしていてカッコいい女のコの代名詞だったので、「文化が違うとこうもとらえ方が違うのか」と感慨深くなりました。

英語で言うとダリアの態度は"Sarcastic"。日本語では「皮肉」と訳されたりする言葉なんですけど、実際には「周りには通じないけど、自分の中で面白がっている」というような意味で、日本語にはなかなか翻訳しづらい感覚なんですよね。

そもそも設定からして翻訳が難しいという部分もあります。第1話でダリアが"Self-esteem"のテストを受けるんですが、これは「自尊心」を測る心理テストのようなもので、この評価が低いとカウンセリングを受けさせられます。

これはアメリカの一部の学校では実際に行なわれているものなんですが、「アメリカではプライドが低いと特別教室に送られるらしい」「謙虚さをよしとする日本と逆だね」といった見方がされているようです。

じゃあ、ダリアが大好きな私もいやみなやつだって思われてるのかと少し心配になりますが(笑)、最近あらためて見返してみて、自分がこのアニメからどれだけ大きな影響を受けていたのかに気づきました。ライダースにコンバットブーツ姿というダリアのファッションも大好きです。

そんな『ダリア』のスピンオフはもちろん楽しみなんですが、近年のMTVは安易な"反トランプ色"が強いので、そういったベタな政治的メッセージに利用されないか、ちょっと心配です。

●市川紗椰(いちかわ・さや)
1987年2月14日生まれ。アメリカ人と日本人のハーフで、4歳から14歳までアメリカで育つ。現在、モデルとして活動するほか、J-WAVE『TRUME TIME AND TIDE』(毎週土曜21時~)などにレギュラー出演中。ダリアからの影響に気づくまでは、「誰に影響を受けましたか?」という質問に「ブロンディのデビー・ハリー」と答えていた

『市川紗椰のライクの森』は毎週金曜日更新!

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